輸入品だけでなく思想まで縛る北朝鮮の税関法
2025年4月20日(日)5時13分 デイリーNKジャパン
デイリーNKは、北朝鮮が2022年に制定した「税関法施行規程」の全文を入手した。
この法律は、アメリカ製のタバコ、コカ・コーラ、デニム生地およびその製品を、持ち込み禁止品として明記している。これは、アメリカ資本主義の象徴ともいえる製品の流入を防ぐことで、外来文化や思想の浸透を遮断し、体制の安定を図る狙いがあるとみられる。ただし、外国人が個人で所持する場合は例外とされる。
一方、現地では「コカ・コーラ」と称する炭酸飲料が市販されていることも確認されており、当局が別ルートで輸入したか、名称を模倣した類似品を製造して流通させている可能性も指摘されている。
同規定の第3条では、持ち込み禁止品として、国家の権威を傷つける資料、望遠鏡、遠距離撮影機、軍用品、政治・経済・軍事・文化に悪影響を与える印刷物、さらにアメリカ映画・出版物や、それらを基にした製品などが列挙されている。また、敵対国や禁輸対象地域で生産された物品も対象となる。
第4条では、北朝鮮ウォンの国外持ち出しを禁止している。観光客がお土産として持ち帰る場合、違反に問われるリスクが有る。
これら一連の規定は、北朝鮮が外的情報からの遮断と、内部情報の流出防止を国家戦略の一環として位置づけていることを物語っている。税関法施行規定は、単なる貿易管理の枠を超え、思想と情報の統制を支える法的基盤として機能している。
第5条では、電子機器や無線通信装置、金・銀・プラチナなどの貴金属の輸出に関しても、専門機関や中央銀行の承認を要件としており、経済活動に対する国家の強い統制姿勢が反映されている。
さらに第2条では、税関が行使できる強制措置として「留置」「押収」「没収」の三つが定義されており、いずれも違法物品や通貨、輸送手段の差し押さえを可能とする権限である。
第43条では密輸物品の没収が規定され、第44条では非公式ルートでの物品搬入や、未申告品の移転・隠匿行為などが密輸と定義されている。