違法ビジネスを育成してから捕まえる北朝鮮「拷問部隊」の実績水増し

2023年4月24日(月)6時1分 デイリーNKジャパン

北朝鮮の行政罰としては降職(降格)、解任、撤職(更迭)、無報酬労働処罰、労働教養処罰など9種類が存在する。前者3種類は幹部に対して適用されるが、いずれも無報酬労働処罰、労働教養処罰と併用という形になる。


これが北朝鮮で頻繁に執行される「追放」の法的根拠だ。


追放とは、生活環境の整った都会から追放され、生活環境の厳しい奥地の農村や炭鉱といったところに強制移住させられるという、日本で言うところの「流刑」「島流し」などと同じだ。


追放されるのは、何か間違いを犯した人だけではない。


家族の中に脱北者がいるというだけで追放の対象となった人々も少なくない。特に国境沿いの地域に住む脱北者家族は、脱北して中国や韓国に住む家族とやり取りしている可能性が高いことから、追放される可能性が高い。追放された先でも、監視の目から逃れることはできない。



咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋が伝えてきたのは、脱北者家族のAさん一家の話だ。一家はもともと、中国との国境に接した会寧(フェリョン)の市内に住んでいたが、家族のうち一人が脱北したことが判明し、当局の監視下に置かれていた。


中国製のメッセンジャーアプリのWeChatをスマートフォンにインストールして、脱北した家族とやり取りしていたことが発覚、2018年に会寧市の中でも奥地の村に追放されたのだ。村には、同じような脱北者家族が追放され住んでいるが、Aさん一家はより厳しい監視の対象となっていた。


一家はそんな中でも、送金ブローカーBさんの代理人である30代男性Cさんを通じて、海外に住む家族から送金を受け取っていた。ブローカー本人は、一家への保衛部(秘密警察)の監視が厳しいことから、自分が直接動くのはリスキーだと判断したのだった。


CさんはAさん一家に、訪ねてきた理由、そしてカネを渡す時間と場所だけ告げて帰っていった。だが、奥地の小さな村だけあり、よそ者の動きは非常に目立つ。村に住む複数の情報員(保衛部のスパイ)から、「見知らぬ者が訪ねてきた」との報告が上げられた。


保衛部は、この報告をもとにして調査を行い、カネの受け渡しをする場所に現れたAさんがCさんから現金を受け取った直後に急襲、2人を逮捕した。今のところ、Aさん一家と代理人Cさんにいかなる処罰が下されるかは伝えられていない。


保衛部は最近、脱北者家族と同時に送金ブローカーに対しても監視を強化している。彼らからワイロを受け取って庇護する一方で、情報員を使って、彼らの一挙手一投足を監視させる、ある程度の送金実績ができた時点で摘発に踏み切る。


ワイロが得られ、逮捕現場でも多額の外貨も押収でき、実績もあげられるので、保衛部にとっては非常に「オイシい話」だ。地域の人々は保衛部のこのようなやり方について、「育ててから捕まえる」と批判している。


さて、今回の件に関連した送金ブローカーのBさんだが、身の危険を感じて姿をくらましたという。


「鉄格子のある監獄より地獄のような暮らしをしている脱北者家族がどう生きているかを示している」(情報筋)


かつて脱北者家族は、送金を受け取って比較的豊かな暮らしをして、進化する北朝鮮の市場経済に資金を供給する役割を担っていた。保衛部は、彼らを庇護することでワイロを得ていた。


しかし当局は、反動思想文化排撃法を制定して、外国とのやり取りを以前以上に厳しく取り締まっているが、このやり方では、実質的に国内経済を支えていた海外からの送金は減る一方だろう。

デイリーNKジャパン

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