「ストレスで幻覚症状」金正恩、疲労増幅の循環構造に
2025年4月25日(金)5時2分 デイリーNKジャパン
韓国メディアのサンドタイムズが24日、北朝鮮の朝鮮労働党機関紙・労働新聞の記事を引用しながら、過度のストレスにされた金正恩総書記が「一時的な幻覚症状」を見せたようだと報じている。
労働新聞は前日付の紙面に掲載した、金正恩氏の業績を称える記事で、同氏が三池淵(サムジヨン)ジャガイモ粉工場を視察した際、「心労のためか自分にはジャガイモ粉が骨粉のように見える」と語ったエピソードを紹介した。
これに対してサンドタイムズは「北朝鮮メディアが指導者の非正常な心理状態を描写したのは異例」と指摘。つづけて「高度のストレス状態で現れる一時的な幻覚である可能性がある」とする精神科医のコメントを紹介した。
労働新聞の記事は「慈愛深き総書記同志が休むことも忘れ人民のために働いている」とする内容なので、件の表現は、そういった趣旨を強調するためのものと見るべきかもしれない。
ただ、サンドタイムズの記事は単に労働新聞をちゃかしているわけでもない。次のような指摘にはそれなりの妥当性がある。
「北朝鮮は現在、国連の長期対北朝鮮制裁と世界経済不況の中で、5カ年計画の最後の年である今年、平壌市5万世帯のマンション建設と地方工業発展20×10政策、農村文化住宅建設、国防力現代化など大型国策事業を同時多発的に繰り広げている状況だ。
金正恩は『万機親覧型(王が全ての政を自ら扱うこと)』スタイルで国政のすべての事案に介入しており、これは結果的に自己の疲労を自ら増幅させる循環構造を形成する」
健康不安説の絶えない金正恩氏だけに、過労やストレスはいずれ「大事件」を招きかねない。
しかし、それを言うなら、金正恩氏本人よりもよほど大きなストレスにさいなまれている人々は別にいるはずだ。サンドタイムズが言及した各プロジェクトの担当者たちである。
どれも、資材がじゅうぶんに供給されてこそ正常に進められる事業だが、制裁下にある北朝鮮では確保がおぼつかない。金正恩氏は号令はかけるものの、資材の手当ては下に任せきりとされる。
それでいて、事業が失敗すれば粛清、もしかしたら処刑の憂き目に遭いかねない。担当者たちの中には、先述した「大事件」の訪れを、密かに期待している人すらいるかもしれない。