金正恩のタワマンが「崩壊の危機」 不安に震える住民たち
2025年4月25日(金)10時24分 デイリーNKジャパン
平壌市中心部に位置するタワマン街「未来科学者通り」の53階建てマンションの住民が、建物が崩壊しないか懸念していると、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じている。
未来科学者通りは金正恩総書記が最高指導者となって初めて開発された住宅地区で、2015年11月に竣工した。核・ミサイル開発に関与する科学者、技術者を中心に2584世帯が入居しているとされている。
北東部の羅先(ラソン)市のある住民は22日、「平壌の未来科学者通りで一番高い建物である53階建てのマンションの住民が不安に震えている」としたうえで、「建物が崩壊するのではないかという心配のため」とRFAに伝えた。
この住民は「平川区域未来洞にある53階建てのマンションは未来科学者通りを代表する建物だが、壁のところどころにひびが入り、外壁のタイルが剥落しており、マンションが崩れるのではないかという憂慮と不安が広がっている」と説明した。
このマンションの名称は「銀河レジデンスタワー」で、この住民の言うとおり、未来科学者通りを象徴するタワマンだ。この通りは2010年から5年ほどで開発されたが、このタワマンは1年余りのきわめて短い期間に建てられた。諸外国なら数年を要するビックプロジェクトに関わらずだ。
そんな無理をしたツケが、徐々に顕在化しているということだろう。
前出の住民は「特に自宅の近くの壁にひびが入った住民たちが不安がっている」としながら、「2014年5月に安山1洞で23階建てのマンションが崩壊した事件を口にする住民もいる」と言及した。
平壌では2014年5月13日、同じ平川区域の安山1洞で23階建てのマンションが崩壊し、数百人が死亡した事故が起きている。
その世論に及ぼした悪影響は甚大だったらしく、事故から数日後、権力中枢——まず間違いなく金正恩氏からの直接の指示で、日本の警察庁長官に相当する人民保安相(現社会安全相)、朝鮮労働党平壌市委員会責任書記らが住民と遺族に公開謝罪をするという、北朝鮮では前代未聞の展開となった。
仮に、未来科学者通りのタワマンで大規模な事故でも起きれば、金正恩氏の権威失墜は免れない。しかし、北朝鮮各地では現在も大規模な開発が続いており、予算も資材もマンパワーにも余裕がない。
果たして、金正恩氏はこうした危機の予兆に、どのように対応するつもりなのだろうか。