「刃を研いで突き刺せ」金与正、怠慢幹部に激怒し粛清
2025年4月26日(土)5時11分 デイリーNKジャパン
北朝鮮の金正恩総書記の妹、金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党副部長が最近、対韓国戦略を考案する「対敵研究院」の副委員長を粛清したと、韓国のサンドタイムズが25日付で報じている。
サンドタイムズが複数の平壌消息筋の情報として伝えたところでは、今回の措置は金与正氏が直接指示した「対敵研究院第1四半期事業成果点検」の結果によるもので、韓国大統領弾劾という「混乱した機会」を戦略的に活用できなかった点が問責理由になったという。
それによると金与正氏は対敵研究院を、「傀儡韓国で首魁が不在となる崩壊事態が数カ月続いたにもかかわらず、これを活用した戦略が全くなかった」「これは反党的な態度だ」と強く批判したという。
対敵研究院に対する今回の検閲は、同氏の特別指示で4月上旬から短期集中的に行われ、報告書は金正恩氏の批准を受けたという。
その結果、戦略企画部門を担当していた副院長が責任者として名指しされ、出党および革命化処分が下されたという。革命化とは、農村や炭鉱など僻地に送られ、重労働をしながら再教育を受けるものだ。非常に苛酷な罰ではあるが、処刑や政治犯収容所に送られるのとは異なり、復帰の可能性は残っている。
サンドタイムズによれば、副院長は内部での会議で、「今は無理に動くよりは次期韓国大統領選候補の輪郭を把握したうえで戦略を設定すべき」と発言。これが「傍観的対応」だと断じられたとしている。
金与正氏はこうした情勢判断を強力に批判し「今のように崩壊の兆しが明確な局面ではより強力な打撃によって転換局面を主導しなければならない」と主張。さらに「情勢が有利な時を待つのではなく、刃を研いで突き刺し、より完全な流れを作らなければならない」という自身の意見を報告書に加えたという。
実際、北朝鮮は韓国の尹錫悦前大統領が非常戒厳を宣布し、韓国政治が混乱状態に陥って以降、静観に近い態度を維持してきた。金正恩氏は韓国について「もはや同族でない」「統一の対象ではない」と厳命していることから、北朝鮮のこうした態度は、韓国を突き放す意思を強調するものだとも見られてきた。
ただ、サンドタイムズの報道が事実ならば、今後はより攻勢的に、韓国社会の混乱に介入していく可能性がある。