米大学生の「歯がズレて拷問死」が金正恩氏を苦しめ続ける

2019年4月27日(土)6時10分 デイリーNKジャパン


米大学生のオットー・ワームビアさん(当時22)が北朝鮮で約1年半にわたり拘束され、昏睡状態で解放直後に死亡した問題が尾を引いている。米紙ワシントン・ポスト(電子版)は25日、関係者の話として、北朝鮮がワームビアさんの医療費として米政府に対し、200万ドル(2億2千万円)を請求していたと伝えた。


この一件についてワシントン・ポスト紙は「並外れた厚かましさ」だと北朝鮮を批判している。当然だろう。米ワシントンDCの連邦地方裁判所は昨年12月24日、北朝鮮に渡航後のワームビアさんの歯列が大きくズレていたことを示す写真などを根拠に、死因は拷問によるものと認定。北朝鮮に対し5億100万ドル(約552億円)の損害賠償を命じているのだ。


この問題を巡っては、トランプ氏も自国世論の批判を浴びている。


トランプ氏はハノイでの米朝首脳会談でこの問題に言及。すると金正恩党委員長が「この件を非常によく知っているが、後になって知ったのだ」と語ったと記者会見で明かし、「私はその言葉をそのまま受け入れる」と述べていた。これに、米国の世論が反発。さらにはワームビアさんの両親が非難の声を上げたのだ。


これもまた当然の反応である。日本の場合で言うなら、北朝鮮から拉致被害者の医療費を請求されるようなものだ。


この問題は、簡単には終わらない。北朝鮮が本当に拷問を加えたかどうかについては、慎重な見方もある。だが、北朝鮮政府はワームビアさんの両親が起こした損害賠償請求訴訟で、何の対応も取らなかった。そのため過去のいくつかの拷問の前例が重視され、上記のような判決が下ってしまったのだ。


また、北朝鮮当局が自国民に対して拷問を加えているのは国際的に知られた事実であり、米国の裁判所がその情報を重視しないはずもなかった。


訴訟の過程がどのようなものであっても、判決は判決である。これは、大統領とて軽んじることは許されない。核開発は、金正恩氏とトランプ氏の「ディール」で解決するかもしれないが、こちらはそうは行かない。歯列の写真という衝撃的な物証もあるだけに、なおさらだ。


ワームビアさんを死に至らしめたことは、北朝鮮の体制にとって、とてつもなく大きな過ちであり、落ち度だったかもしれない。

デイリーNKジャパン

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