「外国人を見てもオドオドするな」北朝鮮、国民に”観光客対応マナー”を指導

2025年4月27日(日)5時35分 デイリーNKジャパン

北朝鮮が、新型コロナウイルスの流行で中断していた外国人観光客の受け入れを、徐々に再開し始めている。今月6日に開かれた平壌国際マラソンには、約5年3カ月ぶりに数百人規模の外国人観光客が参加した。


こうした動きを受けて北朝鮮当局は、見慣れない外国人観光客を前に、住民がどう振る舞うべきかを教育する「住民指導」に乗り出していると、咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK情報筋は伝えている。


中国と国境を接し、ロシアにも近い会寧(フェリョン)市では、当局が住民に対して外国人観光客の流入を見越した大規模な教育を始めたという。


市当局は、「来月、会寧税関が再開すれば多くの外国人観光客がやってくる」としたうえで、「外国人を見てもオドオドせず、元気に手を振って笑顔を見せるように」と、具体的な行動指針を住民に伝えた。


また、「外国人の前で口もきけずにおどおどするのは国の恥だ。誰に会っても、自分たちはこの地球上に一つしかない朝鮮(北朝鮮)民族だという誇りと自信を持って堂々と接するように」と強調したという。


このような指導は、市内の工場や企業所、人民班(町内会)、学校にも共有されており、一部の学校では授業の中で「外国人対応マナー」が教えられている。


実際、会寧市内のある小学校では、教師が生徒に「外国人に会ったら、まず笑顔で“アンニョンハセヨ(こんにちは)”と挨拶し、自然に手を振って応えるように」と練習させているという。


北朝鮮の人々は、論語の「巧言令色鮮なし仁」(こうげんれいしょくすくなしじん)を地で行くタイプで、「知らない人にニコニコする」ことがあまりなく、よそ者には無愛想な印象を与えがちだ。しかし、一度打ち解ければ、満面の笑顔で迎えてくれるホスピタリティあふれる人々でもある。



ただし、国主導の「ホスピタリティ演出」には、住民の間で拒否感も広がっている。


情報筋によると、「国が税関を開けるというだけで、町全体をかき回している」と不満を漏らす市民も多く、「体制の宣伝よりも、自分たちの生活がよくなるのかのほうが気になる」というのが正直な本音だという。


当局は観光客が北朝鮮に対して持つ“イメージ”を気にしているが、住民の関心はもっぱら「もっと儲かるのか」「儲け話が増えるのか」に向けられている。


会寧は、穏城(オンソン)や新義州(シニジュ)、恵山(ヘサン)といった他の国境都市と比べて貿易があまり活発でなく、羅先(ラソン)のように経済特区にも指定されていない。そのため、外国との往来が再開されても、具体的な期待が描きにくい面はあるが、それでも「貿易が活発化すれば商売もうまくいくだろう」との期待が高まりつつある。


現在、当局は道庁所在地の清津(チョンジン)、名勝の七宝山(チルボサン)、温泉地として知られる鏡城(キョンソン)など、咸鏡北道内の主要観光地で観光インフラの整備や補修作業を進めている。


一部の地域では、史跡の案内板の新調、道路周辺の環境整備、土産物店の開業準備など、外国人観光客の受け入れに向けた準備が進んでいる。


北朝鮮は今年2月に欧州からの観光客の受け入れを再開したものの、わずか3週間で停止した。理由は明らかにされていないが、この時期に行われたツアーは「ダメ出し」的な意味合いがあった可能性もある。

デイリーNKジャパン

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