北朝鮮、南北首脳会談の裏で「特別警戒」を宣言
2018年5月3日(木)8時0分 デイリーNKジャパン
北朝鮮の国営メディアは、4月27日の南北首脳会談を大々的に報じた。それを見た北朝鮮国民は驚きと喜びに包まれているが、当局はそれに冷水を浴びせかけるように引き締め策を図っている。
咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋によると、現地では多くの人々が南北首脳会談をニュースを見て熱狂しているが、一方で当局は、突如として特別警備期間を宣言した。
期間は30日までとされたが、「それで終わるか、その後も続くか誰にもわからない」(情報筋)状態で、保安署(警察署)や国境警備隊が警戒勤務を行っている。会談の成果に浮かれている市民も、その様子を見て不安に感じているという。
情報筋は、当局は、南北対話を喜ぶ雰囲気に浮かれて脱北者が増えたり、外国から情報が流入したりすることを警戒して、このような措置を取ったと見ている。また、昨年末から当局が推し進めている「非社会主義現象」に対する取り締まりキャンペーンの一環とも言えよう。しかし、締め付け策をやりすぎると、反発する人も出てくる。
「会寧(フェリョン)に住んでいる人が、畑で使う鋤(すき)を洗おうと国境を流れる豆満江の川原に降りたところ、警戒警備中の国境警備隊の兵士に暴言を吐かれた。この人は『国内で軍隊と人民が統一されていないのに、何が(朝鮮半島の)統一だ』と怒りを露わにした」(情報筋)
また、いくら勤務中の兵士だからといって、大人に対して妄言を吐くのは教養がない、思想教育だけではなく道徳教育が必要だ、などと批判する声も上がっていると伝えた。
北朝鮮当局は、お祝いムードを利用しつつも、それが体制を揺るがしてはならないとして統制を強化しているようだが、関係改善への期待を超えて「韓流ドラマが見たい、K-POPが聞きたい」という、当局としては「期待の暴走」を抑えられるかは未知数だ。