「ミー・トゥ」運動活発な韓国で「韓国の小泉進次郎」が辞職

5月3日(木)7時0分 NEWSポストセブン

アメリカに匹敵するムーブメントとなった AP/AFLO

写真を拡大

 米国で始まった女性の性的被害告発運動の「ミー・トゥ」が韓国で猖獗(しょうけつ)をきわめている。米国以外では韓国が最も盛んなのではないだろうか。芸能人、文化人、映画監督、スポーツ選手、学者・教授、経済人、政治家……あらゆる分野の著名人たちがヤリ玉に挙げられている。政治好きな国民だけに、政治情勢にも大きな影響を与えている。


 文化人では著名な詩人の高銀氏が含まれているが、彼は韓国人としてノーベル文学賞の候補に何回も名前が挙げられてきた人物。ノーベル賞を渇望してやまない韓国国民にとって“希望の星”だった(唯一の受賞で金大中大統領のノーベル平和賞はあるが)。疑惑は女性編集者相手の“露出趣味”みたいなセクハラ問題。早速、教科書から作品が削除されることになり、ノーベル賞の夢も吹っ飛んでしまった。


 ハイライトは何といっても政治家。とくに次世代の有力指導者で、日本の小泉進次郎氏のような存在だった忠清南道知事、安熙正氏の場合だ。文在寅大統領の後継者と目され左派・革新系の最有力者でモテ男だったが、公式秘書を務めていた女性から“不適切な性的関係”を暴露され、知事辞職に追い込まれた。彼女はパワハラ的に性関係を強要され続けてきたといい、安知事は合意だったと反論したが、世論はノー。彼も大統領の夢は吹っ飛んでしまった。


 安熙正事件では余波が広がった。韓国では6月に統一地方選挙があるが、安熙正の後任として忠清南道知事選に名乗りを上げていた文政権の前秘書官も、複雑な女性関係を暴露され出馬断念に追い込まれてしまった。お陰で知事選で与党の苦戦は免れず、文政権への打撃は必至だ。


 安熙正がらみでは別の飛び火もあった。さる女子大の文学部で現役の作家である教授が講義の際、秘書の女性がバツイチだったことを指摘したうえで、文学作品を素材に「離婚女性の肉体と心理」について事件を文学的(?)に解説したところ、学生たちが「安知事を擁護し被害女性にさらに被害を与えるもの!」と騒ぎ出し、これにマスコミも乗っかったため、くだんの作家は教授辞任に追い込まれてしまった。


 韓国世論はこうした「ミー・トゥ」問題で沸騰しているため「日本では静かなようだがどうなの?」とよく聞かれる。「いや、日本では週刊誌が不倫問題で日常的に騒いでいるよ」と応えているが、日本の「ミー・トゥ」問題としては元TBSワシントン支局長から被害を受けたという日本女性のインタビューや写真作家「アラーキー」の名前が韓国マスコミを飾っていた。


 それにしても韓国では「ミー・トゥ」でなぜ大騒ぎなのか。慰安婦問題もそうだが、近年、民主化の一環として女性の自己主張がえらく強くなっているのが最大の背景だ。慰安婦問題に執ようなのもそのせいだが、もう1つ、韓国社会は体質として世論にいったん流れができると、みんな一瀉千里になり、異論は許されないということがある。「バスに乗り遅れるな!」気分というか、横並び志向が強く、いってしまえばことのほか流行に弱いのだ。


 日常的には人口5000万の国でよく「観客動員1000万突破!」の映画があるのがそうだし、政治的には朴槿恵を大統領から追い出したロウソクデモや繰り返される反日キャンペーンもそうだ。


 韓国での「ミー・トゥ」キャンペーンに接し思い出したことがある。以前は街でよく目撃したケンカ風景だ。夫婦ゲンカをはじめ韓国人のケンカはしばしば公衆の面前で展開される。そして争う両者ともしきりに周囲の第三者に訴えることで自ら有利になろうとする。周りの「衆をたのむ戦術」だ。これは北朝鮮をはじめこの地の外交術としても定評のある手練手管である。


●文・黒田勝弘


【PROFILE】1941年生まれ。京都大学卒業。共同通信ソウル支局長、産経新聞ソウル支局長を経て産経新聞ソウル駐在客員論説委員。著書に『決定版どうしても“日本離れ”できない韓国』(文春新書)、『隣国への足跡』(KADOKAWA刊)など多数。


※SAPIO2018年5・6月号

NEWSポストセブン

「韓国」をもっと詳しく

「韓国」のニュース

トピックス

BIGLOBE
トップへ