逆風のなか日系メーカーが躍進、中国自動車市場の今

5月13日(月)6時12分 JBpress

中国・上海の道路

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(花園 祐:中国在住ジャーナリスト)

 中国汽車工業協会の発表によると、2019年第1四半期の自動車販売台数は前年同期比11.3%減の637.2万台、3月単月でも2.7%減の252万台と、揃って落ち込みました。月次販売台数は2018年7月以来9カ月連続で前年割れが続いています。

 しかし市場では不安視する声は少なく、下半期は盛り返すと楽観視する見方が優勢です。

 一方、市場全体が冷え込む中、日系メーカー各社は販売台数を伸ばしシェアを大きく広げるなど躍進を遂げています。今回はこうした2019年第1四半期の中国自動車市場の状況を見ていきましょう。


市場は厳冬なれど楽観ムード

 中国自動車市場販売台数は2018年6月に前年同月比4.8%増を記録して以降、2019年3月に至るまで9カ月連続でマイナス成長が続いています(下のグラフ)。

 3月は落ち込み幅がそれまでの2桁から1桁に縮小はしたものの、各ディーラーでは在庫数が増加していると報じられており、予断を許さない状況が続いています。

 しかし、市場全体では下半期にかけ徐々に回復していくとの観測から、楽観ムードが広がっています。

 こうした見方に全く根拠がないわけではありません。第2の「汽車下郷」政策とも言われる地方都市向け自動車購入奨励策や、農村向けピックアップトラックの購入補助金政策など、中国政府は既に新たな市場刺激策を打ち出す方針が発表されているからです。これら政策が下半期にかけ具体化、実際支給されてくるに伴って、市場はまた盛り返すと予想され、自動車各社のみならず消費者も政府政策の出方を窺うような状態となっています。


SUV市場の不振が鮮明に

 同期の車形別販売台数を見ると、前年同期比2.6%増となったトラック以外のすべてのカテゴリーでマイナス成長を記録しています(下の表)。特にこれまで自動車市場の成長を牽引してきたスポーツタイプ多目的車(SUV)は14.2%減となるなど、市場のニーズが大きく低下してきたことが示されています。

 SUVの低迷について一部アナリストは、どのメーカーも売れ筋のコンパクトSUVばかり開発、販売したため、商品の差異がほとんどなくなり飽きられ始めたことが要因だと指摘しています。筆者もこの意見に同感です。流通モデル数こそ多いものの、ポルシェの「カイエン」など超高級ブランド車を除き、特別な個性を持ったSUVはあまり見なくなったように思えます。


逆風の中で日系車がシェア拡大

 続いてメーカー別販売台数を見てみましょう。下の表は、2019年1〜3月の中国乗用車メーカー上位15社の販売台数です。

 昨年(2018年)に引き続き独フォルクスワーゲン(VW)系列の上汽大衆と一汽大衆が1位、2位を独占。3位には、米中貿易摩擦の影響を受けながらも踏みとどまっている米ゼネラルモーターズ(GM)系列の上汽通用が続いています。中国民族メーカートップとなる吉利汽車も、4位の座を堅守しました。

 日系メーカーでは日産系列の東風日産が6位と最上位でした。トヨタ、ホンダの系列メーカーもすべて15位内に入っています。

 特筆すべきは、市場全体が落ち込み続ける逆風の中、日系ビッグスリーの系列メーカーがトヨタ系列の一汽豊田(前年同期比4.1%減)を除き、全てプラス成長を遂げた点です。

 この結果は日系車の中国乗用車市場全体のシェアにも大きく影響を及ぼしています。同期の日系車のシェアは中国系(40.9%)、ドイツ系(22.1%)に続く20.7%となり、2018年通年と比べると、3.8ポイントと急上昇しました(下のグラフ)。日系車のシェア急拡大については中国メディアも注目しており、今期は日系車に関する様々な分析記事を目にしました。


好調続く日系セダン

 日系車躍進の背景として、中国メディアからは、昨年以来続く日系セダン車の好調が大きいと指摘されています。実際に車種別販売台数を見ると、日系ビッグスリーの主力セダンが好調な売れ行きを示していることがわかります(下の表)。

 日産からは「シルフィ(東風日産)」が、前年に激しい年間販売台数首位争いを繰り広げた「ラヴィーダ(上汽大衆)」と、今年も3位以下を突き放すハイレベルな首位争いを展開しています。

 トヨタも「カローラ(一汽豊田)」の前年割れを埋め合わせるかのように「レビン(広汽豊田)」が前年同期比45.9%増と躍進しました。

 ホンダは「シビック(東風本田)」が同33.6%増、「アコード(広汽本田)」が同14.9%増と、看板車種の2車種で揃って好調ぶりを見せました。またホンダの場合、リコール問題で一時販売が中止されていたSUVの「CR-V(東風本田)」が2019年3月のSUV販売台数で4位につけるなど、売上に大きく貢献しています。


様変わりした動力電池市場

 最後に、中国で拡大する新エネルギー車市場と、その最重要部品である動力電池市場について触れておきましょう。

 2019年1〜3月の新エネルギー車販売台数は前年同期比109.7%増の29.9万台となり、3月単月の新エネルギー車販売台数のうち電気自動車が占める比率は76.2%に達しました。自動車市場全体が冷え込む中で2倍超の急成長を遂げており、現行の補助金政策が近く打ち切られることへの駆け込み需要が後押ししたと指摘されています。

 中国政府は新エネルギー車の補助金政策として、現行政策の打切り後、また新たな政策を打ち出す予定です。ただし市場の自立を促すため、補助金額は今後徐々に縮小していくことが既定路線となっています。

 続いては動力電池の動向です。2019年2月の新エネルギー車向け動力電池供給量は同118.9%増の2.25GWhとなり、このうち乗用車向けが84.9%と依然大半を占めています。また供給量全体のうち、動力電池サプライヤー上位10社が占める割合は前月比4.4ポイント上昇の93.5%を占め、市場の集中化が進んでいます。

 メーカー別供給量では、寧徳時代新能源科技有限公司(寧徳時代、CATL)が2位の比亜迪(BYD)グループに倍近い大差をつけ、業界首位の座を不動としています(下の表)。また供給されるリチウムイオン電池種類を見ると、かつて主流だったリン酸鉄系の割合が大きく減少して、もはや三元系が主流となり、市場がすっかり様変わりしていることがうかがえます。

 このほか注目すべき点として、メーカー別順位で5位につけている珠海銀隆新能源股份有限公司(珠海銀隆)の存在が挙げられます。同社は上位10社の中で唯一、チタン酸系リチウムイオン電池を供給しています。この電池には他のリチウムイオン電池と比べて長寿命、急速充電可能という特徴があり、筆者もかねてから注目していました。

 これはつまり、三元系、リン酸鉄系以外のリチウムイオン電池種類も、中国では開発、供給されているということです。今後の動力電池、ひいては新エネルギー車の発展を占う上で、どの種類の電池が主流となっていくかは見逃せないポイントです。今後もこうした動力電池の市場動向は注視していくべきでしょう。

筆者:花園 祐

JBpress

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