300万人殺到も混乱なし、日本と大違いの韓国・ワクチン接種計画

5月17日(月)6時0分 JBpress

 日本と並んで新型コロナウイルス感染症用ワクチンの接種が遅れている韓国で、2021年5月27日から順次60歳以上を対象とした大規模接種が始まる。

 ワクチンがあっても予約が進まない日本に対して、韓国はワクチン確保という課題を残しながら予約は一気に進んでいる。

 韓国では医療関係者などに対する先行接種に続いて4月1日に75歳以上に対する接種が始まった。さらに60歳以上に対しては、5月27日以降順次接種を始める。

 接種の予約が5月6日から順次始まった。6日に70〜74歳(210万人)、10日に65〜69歳(284万人)、13日に60〜64歳(400万人)という順番で予約が始まった。


900万人を対象に予約開始

 合わせると約900万人だ。予約はネットと全国共通の4ケタの電話でできる。

 一定の条件を満たした外国人も対象で、筆者も5月13日に予約をしてみた。まず、ネット。アクセスに問題はなかったが、何と「対象ではありません」。

「?」なんだ?

 全国共通の番号に電話をかけるとすぐにつながった。事情を説明すると、多少の混乱はあったが、事務的なミスでリストから漏れていたようで、すぐに修正してくれた。

 さらに個人認証に手間取ったが、再度電話をするとすぐに予約ができた。6月7日に接種開始だが、希望する日時、医療機関で予約できた。

 オペレーターに聞いてみたら、前後の日程、時間帯のすべてが予約可能で、余裕があるという。


300万人以上が1週間で予約

 韓国メディアによると、5月6〜15日までの1週間余りで、韓国で約900万人の対象者のうち320万人以上が予約をしたという。

 筆者の周辺でも、対象者の多くが予約を済ませた。

 筆者のように「リストから漏れた」などのトラブルがあった例は周辺ではなかった。ネットにアクセスできない、電話がつながらない、という話も聞いたことがない。

 ネットでも電話でも、アクセスする際の第一歩となるのが、内外国人を問わず割り振っている13ケタの番号だ。住民登録証または外国人登録証に記載してある。

 最初の6桁は生年月日だ。

 接種の予約ができるとスマホに予約番号とともにメッセージが届く。あらかじめ接種を希望する医療機関を決めておきさえすれば、予約にかかった時間は電話でも5〜6分ほど。15分ほどでメッセージが来た。


予約システムの運用は上々だが

 さて、予約システムの運用はうまく進んでいるが、韓国にも課題がないわけではない。

 1つ目は、予約率をもっと上げたいということだ。韓国政府の目標は、60歳以上の接種率をできるだけ早く80%にすること。

 政府は「11月に集団免疫」またはそれに近い効果を出すことを目指している。

 特に、安定的な医療システムを維持するために、比較的重症化するリスクが高い高齢者などへのワクチン接種を急ぎたい。

 ワクチン接種を促進するため、政府は様々な「インセンティブ」を検討している。

 すでに韓国内でワクチン接種をしてから2週間経過した場合、出国して帰国した後にPCR検査で陰性判定が出れば「隔離措置」を免除することを決めた。

 さらに、5人の以上の会合禁止などの措置を免除することなども検討している。

「こういうインセンティブより、ワクチン接種の意義についてさらに説明して、説得することの方が重要ではないか。私はしばらく様子を見る」(大企業の社長)という意見も少なくはない。


ノーショー対策

 2つ目は「ノーショー」問題だ。ワクチン接種の予約をしても、事前に連絡がなく接種のために現れないということだ。

 メディアなどで話題になるが、関係者によると「日によっては10%以上も来ない接種会場もある」という。

 なぜこんなことが起きるのか。

 ワクチン接種後の副反応などに対する不安などから「当日に行くのをやめてしばらく様子を見る例が少なくない」(ソウルの医師)。

 特に、日米では、ファイザーやモデルナのワクチンを接種しているのに、韓国ではアストラゼネカのワクチン接種が多いことへの不安が少なくない。

 欧州などで接種後に血栓ができた例があったとの報道があったことに敏感に反応している。

 数日前も朝、KBSのラジオニュースショーを聴いていたら野党の国会議員が電話インタビューの際「アストラゼネカのワクチンは安全性に問題がある」という趣旨の話をして、「政府批判のために、そういう科学的な根拠のない話をするのは適切ではない」という司会者と言い争いになった。

 5月27日に大規模接種が始まるのを前に、韓国政府はネイバー、カカオの地図検索サービスと連動させて「ノーショー」で発生する余剰ワクチンを無駄にせず接種できる予約システムを稼働させる。


ワクチンは届き始めたが…

 3つ目は、ワクチン確保だ。

 韓国では4月まで1日30万回ほど接種をしていたが、5月に入って接種回数が激減している。ワクチン在庫がなくなったのだ。

 韓国政府は5月3日、上期(1〜6月)のワクチン調達計画を詳細に明らかにして国内の不安感払拭を図った。

 6月末までに1832万回分のワクチンを確保できるという説明だ。

 韓国政府は、「ワクチン調達には問題がない。政府を信頼して予約をしてほしい」と繰り返す。

 900万人に対して予約を取り始めたが果たしてきちんと接種が進むのか。

 十分なワクチンを確保したが、予約、接種がなかなか進まない日本と、ワクチンは後で確保するからとどんどん予約を取る韓国。対照的なワクチン接種プロセスだ。

 5月12日、ファイザーのワクチン43万8000回分が韓国に届いた。今後毎週届くという。

 さらに13日に、アストラゼネカのワクチン83万5000回分も届いた。6月初めまでにさらに723万回分が届き、合わせて806万5000回分のアストラゼネカワクチンも確保できるという。

「本当にきちんと届くのか? 届いてみなければ分からないが、政府の詳細なワクチン調達計画が出ているのだから、信じる以外手がない」(韓国紙デスク)

 韓国政府は、民間企業と協力してワクチンの韓国内での生産を進める方針だ。

 すでにSKバイオサイエンスがアストラゼネカのワクチンを韓国内で生産している。同社は、ノババクスのワクチンの生産にも乗り出す。

 さらにサムスンバイオロジクスが8月にもモデルナのワクチンの生産を始めるという報道が韓国内で相次いでいる。ロシアの「スプートニクV」の韓国内での生産も近く始まるという。

 韓国政府は、韓国をワクチン生産拠点として育成するとともに、韓国内への供給問題も解消したい狙いだ。

 新型コロナのワクチン接種が長期的に必要だとの見方も出ている中で、「調達が遅れた」との批判を教訓にしているようだ。

 韓国では、新規感染者数を400〜700人の範囲で何とか抑え込んでいる。防疫がうまくいっているという評価が多いが、5人以上の会合禁止や、一部飲食店などの営業禁止措置などに対しストレスも高まっている。

 先日も、韓国の警察と防疫当局が、ソウルの江南(カンナム)地区のビルやホテルなどを急襲する模様がニュースで放映された。

 大きなバールなどでドアをこじ開けて中に入ると、営業禁止のはずの「接待を伴う飲食店」だった。一度に数十人が摘発される例もある。

 全国でこうした摘発が相次ぐというのはそれだけ、ヤミ営業も多いということだ。

 韓国でも1年前に比べると、飲食店は混雑しているし、地下鉄の乗客数も段違いに多い。

 それでもソウルの場合、5人以上の会合は禁止だし、飲食店やコーヒーショップを利用する場合は、必ずスマホのQRコードを使って個人の「利用記録」を残す必要がある。

「人流」の増加を、営業禁止や会合禁止などの厳しい防疫措置と、「利用記録」を使った大規模PCR検査で何とか抑えている状態だ。

「最終的には治療薬の登場を待つ必要があるが、当面はワクチン接種が最も効果的な措置だ」(政府関係者)。

 5月27日からのワクチン接種がそのカギを握っている。

筆者:玉置 直司

JBpress

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