北朝鮮食品工場でガスタンク爆発、4人が死傷

2020年5月20日(水)7時32分 デイリーNKジャパン

北朝鮮北東部、咸鏡南道(ハムギョンナムド)の内陸にある虛川(ホチョン)の食品工場で爆発事故が発生し、貴重な人命が失われた。国家から求められた「自力更生」の成果を出そうと頑張った末の悲劇だった。現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。


事故が起きたのは今月初旬のことだ。虛川の中心部にある食品工場は、「ないからと座視するのではなく、革新的な案を受け入れ、地方の産業を稼働せよ」という党の自力更生の方針に従って、新技術を導入した設備を作ることにした。


自力更生は1960年代から使われてきた言葉だが、国際社会の制裁とコロナ不況下にある昨今、「正面突破戦」と並んで特に強調されている。


工場は今月に入って、敷地の裏に排泄物のメタンガスタンクを設置した。この「排泄物」とは、おそらく人糞のことだろう。


北朝鮮は毎年冬になると、国民一人ひとりに人糞を集めることが要求される。不足する肥料を補うために、集めさせた人糞を発酵させて肥料を作るのだ。


ところが、タンクが試験運転中に突如爆発、現場で技術者をサポートしていた労働者4人が重傷を負った。4人はすぐに病院に搬送され、2人は命をとりとめたものの、2人は病院到着前に息を引き取ってしまった。


道保安局(県警本部)と郡の保安署(警察署)、郡党(朝鮮労働党虛川郡委員会)と人民委員会(道庁)の幹部が調査に乗り出したが、事故の原因が設備にあったのか、技術的な部分にあったのかなど、依然として解明できていない。


しかし、いずれにせよ事故を未然に防げなかったとして、工場幹部の責任を追求する方針だ。死亡事故となったことから、責任追及は致し方ないだろう。しかし、国から資金や原材料の支援を一切ない状態で、無い袖は触ろうとしてがんばった結果がこれでは、やる気が出るはずがない。


国家の政策を実行すると同時に、人々を助けようとした慈江道(チャガンド)の山林経営所の作業所長は、処刑されてしまった。積極的な創意工夫も一つ誤れば命取りになるような状況では、「やってる感」の演出ばかりが横行し、何の成果も得られない。



当局は、国家の方針に従って働いていた労働者に対しても冷たい対応をしている。


郡では、亡くなった労働者の葬儀に合わせてトウモロコシ20キロ、大豆5キロ、酒5リットルを提供したが、それ以外の補償は一切なく、地元住民の間から非難の声が上がっている。


「党の方針貫徹のために働いて死んだのだから、党が愛国烈士証くらいは出さなければならないのではないか」
「国のために働いて死んでもトウモロコシ数キロの命か」(現地住民)

デイリーNKジャパン

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