人件費高騰の中国、いちばん高給取りの業界はどこか

5月27日(月)6時14分 JBpress

(花園 祐:中国在住ジャーナリスト)

 中国国家統計局は5月14日、2018年の国内賃金給与に関する統計を発表しました。発表データによると、民間法人就業者の全国平均年収は4万9575元(約79万3200円、1元=16円で計算)となり、名目ベースで前年比8.3%上昇しました。また一定規模以上企業(年間主要営業収入が2000万元=約3.2憶円以上)の就業者は同11%増の6万8380元(約109万4080円)と、2桁超の伸びとなりました。

 中国では経済成長とともに人件費の高騰が続いており、現地で製造を行う日系メーカーにとっても悩みの種となっています。そこで今回は、中国の各種賃金統計を、日本の賃金統計とも比較しながら解説していきたいと思います。


中国の管理職の年収は?

 中国の賃金統計で一般的に用いられる一定規模以上企業の賃金統計からみていきます。

 まず地域別にみると、上海をはじめとする沿岸部を含む東部地域の平均賃金が最も高く、西部、東北、中部の順番で続いていきます。業種別では、当然ながら中級以上管理職が14万5125元(約232万2000円)で最も高く、次いで専門技術職、事務関連職、生産製造職、生活サービス職となっています。

 注目すべきは中級以上管理職の賃金水準で、前述の通り日本円に換算すると200万円の大台を突破しています。為替次第ではさらに上昇する可能性もあり、中国の中級以上管理職は概ね日本の大卒1年目並の給与を得るようになっていると解釈できるでしょう。


プログラマーは能力次第で高い報酬も

 専門技術職は中級以上管理職の後塵を拝していますが、この統計上の平均はあまり実態を表わしていないと思われます。というのも、中国の同職種の賃金は市場においてきわめて幅が大きく、ニーズの高い技能保持者であれば年齢に関係なく高い報酬が得られる好待遇職だからです。

 一例を挙げると、筆者が先日取材したゲーム業界のプログラマーは月収4万元(約64万円)で雇われていました。この報酬待遇は中国の大手ゲーム企業においては珍しい金額ではなく、「会社によっては平均でその程度」という声も聞かれました。

 ゲームプログラマーのほかにはどのような職種が好待遇を得られるのか。やはりネットや金融分野、また、中国が近年力を入れている半導体分野のエンジニアなどが、好待遇を狙える業界としてよく挙げられています。


最低賃金は7年間で約2倍に

 続いて、地域別の最低賃金を見ていきましょう。

 中国では日本と異なり、最低賃金基準を月額と時給で定めています。月額、時給ともに全国最高は上海市(月額=約2420元円、時給=21元)です。その後を深セン市、天津市、浙江省、北京市が続きます。逆に最も低かったのは、観光地として有名な海南省(月額:約1430元、時給:12.6元)でした。

 最近は、どの地域もほぼ毎年のように最低賃金基準を引き上げており、中国全土の人件費上昇に大きな役割を果たしています。上海市を例にとると、2015年まで月額最低賃金の毎年の引き上げ率は10%を超えていました。直近の2018年も5.2%引き上げられています。

 また年度で比較すると、上海の2018年(2420元)の基準は2011年(1280元)の約2倍です。この7年間で最低賃金が2倍に引き上げられたということです。これは上海に限る話ではなく、中国のほぼすべての地域に当てはまる傾向です。


学部によって差がつく初任給

 続いて日本でも代表的賃金指標として扱われる大卒初任給を見ていきましょう。

 人材コンサルティング大手のMyCos発表データによると、日本の大学学部生に当たる、中国の大学本科生の2017年度卒業生の平均初年度月額給与は、前年比9.1%増の4774元(約7万6384円)でした。全体の賃金水準同様、中国の大卒初任給も順調に上昇しています。

 中国の場合、大卒初任給は日本のようにほぼ横並びというわけではなく、出身大学や専攻によって大きく変動します。それこそ一流大学で先端技術を学んだ学生であれば、月収1万元(約16万円)からのスタートも珍しくありません。逆に企業からのニーズが低い歴史学を専攻した卒業生などは、低い待遇に甘んじなければなりません。

 このほか、入社以降の昇給速度も日本とは大きく異なります。中国では入社から3年も経つと、給与は初任給の1.5倍以上に引き上げられるのが一般的です。それ以降は、昇給速度は徐々に緩やかになっていきます。

 中国の賃金は実力主義的な傾向が強く、業務に習熟していく入社2〜3年目にかなりのスピードで賃金が上昇していきます。もっともMyCosのデータによると、2017年度大学本科卒業生のうち23%が半年以内に離職しています。2〜3年間、同じ会社に勤める中国人自体があまり多くはないのが現実といえるでしょう。


金融系を上回り、IT系がトップ

 最後に、民間法人就業者の業種別平均賃金について、日中で比較してみることにします。

 まず中国です。業種別では、世界的にも高給業種とされる「金融業」を上回り、「通信、ソフトウェア、ITサービス業」の年収が前年比8.4%増の7万6326元(約122万1216円)で、他を大きく突き放してトップとなっています。2位の「金融業」は前年比20.4%増の6万2943元(約100万7088円)と前年から大きく伸びてはいるものの、ここ数年は毎年IT関連業種に差をつけられています。

 一方、日本の2017年における産業別常用労働者1人平均月間給与額データを見ると、2位の「情報通信業」(49万0647円)、3位の「金融業、保険業」(48万6011円)を抑え、なんと「電気・ガス・熱供給・水道業」(55万1840円)が首位となっています。近年の日本の就職情報を見ると、雇用の安定性からかインフラ系がやけに人気だなとは思っていましたが、賃金待遇でもトップというのは意外でした。

 日中間で上記の業種別賃金状況を比較した場合、インフラ関連業種の待遇が日本で高いことを除くと、全体としては似たような結果となっています。

 日本の統計には農業などの1次産業系業種が掲載されていませんが、これを無視した場合、「宿泊・飲食業」が最低という点も共通しています。

 最後に余談となりますが、日本の「宿泊・飲食業」の平均賃金は月額12万7644円と、順位が1つ上の「生活関連サービス業、娯楽業」(20万7154円)と比べても極端に低い数字です。これは1カ月当たり労働時間を考慮して時給に換算した場合、全国最低賃金すれすれの数値であり、集計する際に労働時間の均一化処理などがなされているのか、やや疑問です。この点に限らず、日本の政府統計データの配布Excelデータはどれも見づらく、また、ただの定期給与のことを「きまって支給する給与」と独特な表現で書いたりするなど疑問に思う点が少なくありません。先日、厚生労働省の統計不正調査が発覚して問題となりましたが、政府統計担当者には、不正を撲滅すると同時に、もっとExcelを学んでわかりやすいデータ作成を心がけてほしいものです。

筆者:花園 祐

JBpress

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