ウィキリークスは国家システム破壊目的の政治運動と佐藤優氏

6月7日(火)16時0分 NEWSポストセブン

 朝日新聞が5月4日付朝刊でウィキリークス(WL)から入手した約7000本の米国国務省公電をもとに、その内容と分析についての特集を発表した。この瞬間からWLは日本の外交を根底から揺るがす政治問題になった。作家で元外務省主任分析官の佐藤優氏が解説する。


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 WLを企業や官庁の内部告発者と同一視すると大きな過ちを犯す。WLは既存の国家システムを破壊するという明確な目的をもった政治運動だ。

 

 ある会合で同席した警察庁幹部(警視監)が「佐藤さんのWLに関する論考を興味深く読みました。私も佐藤さんと同じ認識でWLはとても危険だと思っています。WLは情報を用いた一種のテロリズムだと思うのです」と述べていた。

 

 この警察庁幹部の認識は正しい。WLの政治目的に筆者は与しない。しかし、だからといってWLが不正な手段で入手し、公開した情報を無視すればいいということではない。

 

 情報は、それが表に出れば、入手経路にかかわらず独り歩きする。真実であれば、その情報は世の中の現実に影響を与える。政府が「WLの情報を無視しろ」と訴えても、それは逆効果になるだけだ。


 朝日新聞が5月4日付朝刊でWLから入手した約7000本の米国国務省公電をもとに、その内容と分析についての特集を発表した。この瞬間からWLは日本の外交を根底から揺るがす政治問題になった。新聞記者には他紙のスクープ記事の後追いはしたくないという心理が刷り込まれている。


 従って朝日新聞の読者以外にはWL問題が日本の国益に与える影響が十分に認識されていない。しかし、注意深く観察すると、深刻な事態が進捗していることがわかる。


 5月4日付第一弾の特集では普天間問題が中心になった。沖縄タイムスは、朝日新聞の記事をすべて転載した。こんな事例は新聞業界で異例のことだ。琉球新報は、WLが公開した米国国務省の秘密公電を独自に分析して、朝日新聞が報道しなかった以下のような重要な情報を発掘している。


〈普天間関連米公電 米に不満表明促す 外務官僚暗躍 新たに判明


 内部告発サイト「ウィキリークス」が公開した米公電で、米軍普天間飛行場の返還・移設問題をめぐり、交渉相手の米政府と内通し日本の閣僚への影響力を行使させようとする外務官僚の姿が6日、新たに照らし出された。


 外務官僚が閣僚に対し、在沖海兵隊のグアム移転と普天間飛行場代替施設建設を切り離せないとさとしたり、外務省の「前担当者」が当時の鳩山政権の普天間問題に対する取り組みを批判し、米政府に対して公式に不満を表明するよう促していたことが分かった。

 

 /2009年10月5日作成の在沖米総領事館発の公電は、外務省日米安全保障条約課長の船越健裕氏が、岡田克也外相(当時)とやり取りした発言を紹介。船越氏が「岡田氏は、米国が普天間代替と、海兵隊のグアム移転を切り離すことを受け入れられないとする官僚らの主張を認めなかった」などと話したという。

 

 船越氏は「普天間代替なしに、議会がグアムに予算を認めることなどあり得ないと、岡田氏に伝えた。しかし彼(岡田氏)は米国から直接それを言わなければ信じなかった」と述べたという。

 

 /2009年12月16日作成の在東京大使館から米国務省など宛ての電文は、外務省の「前担当者」らが東京に招集され、うち3人が同月10日に駐日米大使館の職員と面談した内容を報告。

 

 /「前担当者らは、鳩山政権の普天間代替施設問題への取り組みを強く批判しており、米政府に公式に不満を表明するよう促した」としている。この3人について「さまざまな表現で普天間代替施設計画への鳩山政権の扱い方や政治性について、不満を表した。

 

 米政府が普天間代替計画において、日本政府に全面的に合わせるべきではないし、合意済みのロードマップで譲歩するのも避けるべきだということだ」と伝えている。(内間健友)〉(5月7日琉球新報電子版)


 特に船越健裕氏は、現在も普天間問題に関する鍵を握る外務省北米局日米安全保障条約課長の地位にいる。この報道によって船越氏は沖縄県民の信頼を失った。


※SAPIO2011年6月15日号

NEWSポストセブン

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