都心部でも見直される、お金を使わない「非貨幣経済」

6月14日(木)15時0分 ニューズウィーク日本版

<物々交換や贈与といったお金を介さない物品のやりとり「非貨幣経済」が、シェアリングなどの発想から都心部でも広がっている>

社会は人々の分業で成り立っているが、高度化・複雑化した現代社会では、財やサービスの交換は貨幣を通じて行われている。物々交換や贈与といった慣行は、ほとんどなくなっていると言っていい。

しかし、完全に消え去っているわけではない。21世紀の今でも未開社会では物々交換などが広く行われているし、先進国の日本でも地域によってはまだ残っている。筆者の出身地の鹿児島県では、公立学校の教員は離島に赴任しないとならないが、住民が野菜や魚を分けてくれるので食費がかからず、へき地手当もつくのでお金が貯まり、鹿児島市内に戻ったら家が建つと言われている。

まさに「非貨幣経済」の恩恵だが、野菜への支出額と実際の消費量を照合することで、その度合いを推測できる「非貨幣経済指数」が出てくる。

東京都の野菜・海藻への平均月間支出額は9859円(1世帯当たり)で、これを食料の消費者物価地域差指数(1.037)で割り、他県と比較可能な数値に補正すると9507円(1)となる。成人男女の1日あたりの野菜摂取量は322.1グラム(2)だ。東京の非貨幣経済のレベルは、(1)÷(2)=3.388という指数で推測できる。

これは大都会・東京の数値だが、人間関係が濃い地方ではもっと高いだろう。先ほど例にあげた鹿児島県との比較をすると<表1>のようになる。



支出額・摂取量とも東京が多いが、分子より分母の差が大きいので、算出された非貨幣経済指数は東京より鹿児島が高い。前者は3.388、後者は3.930だ。

余った農作物を分け与える贈与経済の頻度、自給自足の生活を営む農家の数などの違いを考慮すれば当然の結果だ。鹿児島県内でも、離島部に限ったら値はもっと高くなるだろう。



同じやり方で、47都道府県の非貨幣経済指数を計算してみた。<表2>は、高い順に並べたランキングだ。



トップは鹿児島で、長野、高知がそれに続く。長野では、米を親戚や知り合いに譲渡する「縁故米」が盛んだという。上位には西日本の県が多く、地図にすると西高東低になる。

常識的には、非貨幣経済指数は農村県で高く都市県で低いと考えられるが、必ずしもそうではない。東京の値は、全国値を上回っている。都心部で不要物資を放出するフリーマーケットが多く開かれ、ITに強い若者が需要と供給を上手く結びつけて廉価の売買の場を創出していることなどが背景として考えられる。

「貰う」「共有する」「拾う」「助け合う」「育てる(自家栽培)」といった、貨幣を媒介としない非貨幣経済の効用を見直したい(鶴見済『0円で生きる—小さくても豊かな経済の作り方—』新潮社、2017年)。食品ロスに象徴される大量生産の無駄を活用できるし、人と人とのつながりが必然的に生じる。「お金を使わないと人間関係がどんどんできる。お金は協力的な人間関係を省略する」という、鶴見済氏の指摘は実に的を射ている。(毎日新聞、2018年5月18日)。

それは、煩わしい「濃すぎる」人間関係とは異なる。必要な時だけ助け合う、自発的な「緩い」人間関係だ。そんな人間関係は今、都市部でも求められている。

<資料:総務省『全国消費実態調査』(2014年)、
    総務省『小売物価統計調査』(2014年)、
    厚労省『国民健康・栄養調査』(2012年)>


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舞田敏彦(教育社会学者)

ニューズウィーク日本版

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