ライバルはいない!中国で躍進する北海道ラーメン店

6月20日(水)6時12分 JBpress

中国・上海のラーメン店「富良野とみ川」で昼食を取る中国人親子(筆者撮影、以下同)

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 筆者は昨年(2017年)2月、複数の日系ラーメン店が軒を連ねる上海のフードテーマパーク「ラーメンアリーナ」(中国名は「拉麺競技館」)を取材しました。その際、ラーメンアリーナの一軒、「富良野とみ川」(以下、「とみ川」。中国での店名は「北海道富川」「富川製麺所」。本店は北海道富良野市にある)の責任者である富川哲人氏に中国進出の経緯やラーメンの評判などを語ってもらいました。

(参考)「『本場』中国で!日本のラーメンに中国人殺到」
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49142

 日本では少子高齢化および人口減少から将来の市場規模縮小がほぼ確実視されており、活路を見出すために中国市場へ進出する日系飲食企業が少なくありません。しかし、事業がうまくいかず半年程度で撤退してしまう店もかなり数多く見受けられます。

 そうした中、昨年取材したとみ川はどうなっているのか? 再びラーメンアリーナを訪れ、とみ川の今を取材してきました。


1年半で3店舗に拡大!

「今は運営体制も整いつつあり、理想的な状態ですね」

 そう語るのは、「とみ川」の責任者で店長の富川哲人氏です。前回の取材時から1年以上経ちましたが筆者のことを覚えてくれており、今回の再取材にも快く応じてくれました。

「とみ川」は、なんとこの1年半で3店舗にまで拡大していました。

 上海市地下鉄「曲阜路駅」直結のショッピングモール「大悦城」内の「ラーメンアリーナ」にある上海第1号店。「龍柏新村」駅直結のショッピングモール「万象城」内の第2号店。そして今回訪問した「中山公園」駅近くの「city'super」内のフードコートに入る第3号店です。

 上海市内で建設中の別のショッピングモールからも、さらなる出店オファーが来ており、今後はフランチャイズ方式による展開も視野に入れているとのことです。


中国のやり方を一から勉強

 短期間で3店舗にまで拡大できた要因は何か? 富川氏は、「やはり中国でのやり方を一から学ぼうとしたことが大きい」と言います。

 富川氏は日本で長年ラーメン店を運営してきましたが、中国に来て日本でのやり方は通用しないと感じたそうです。そこで、料理の品質や従業員管理、店舗運営などについて、中国でのやり方を一から学び直しました。それが円滑な運営と店舗数の拡大につながったのではないかと述べました。

 また、「従業員に恵まれたということも大きい」と言います。

 中国に来た当初は、中国人従業員と一緒に店舗を切り盛りすることに不安を感じていたものの、非常に勉強熱心な従業員が入ってきてくれ、現在は調理のほぼすべてを任せられるだけでなく、味についても頻繁に改善意見を出してくれるそうです。


日本人の「おいしい」では通用しない

 現在、とみ川が継続的に取り組んでいるのは、ラーメンの味を現地の味覚に合わせていくための改善です。

 富川氏によると、日本のラーメン関係者は、中国で成功している日系ラーメン店の味を必ずしもおいしいとは思っていないそうです。「中国で成功している日系ラーメン店の味を試してみて、この程度なら自分たちでも行けると思う人が多いはず」と言います。

 しかし、それはあくまでも「日本人の味覚」に基づいての話です。日本人の味覚でおいしいと感じられるラーメンが、必ずしも中国人に受け入れられるとは限りません。富川氏は、その違いを理解して対応できるかが重要だと言います。

 実際に、日本のラーメンを中国人が食べると「塩味がきつくてしょっぱい」と感じられやすいと言われています。「(日本人にとっては)あっさり目のスープにして、塩分を抑えることが中国では大事」(富川氏)なのだそうです。


とみ川に「ライバルはいない」理由

 上海には、日々、日系ラーメン店が進出し、競争が激化しています。そこで、ライバルと目す店はないかと尋ねてみました。すると富川氏から「うちのやっていることと競合する店はまだいないと言っていい」という意外な回答が飛び出てきました。

「とみ川」では、「おいしいラーメン」はもちろんのこと、「健康志向のラーメン」の追求にも力を入れています。体にいいラーメンとするためには「脂肪分とともに塩分をどう抑えてスープを作るかが重要」だと強調します。また、化学調味料の類も一切使っていないそうです。

 麺にも強いこだわりがあります。北海道産の小麦粉を、防カビ剤(ポストハーベスト農薬)を使わずに中国へ輸入して使っており、ショーウィンドーにもこの小麦粉を陳列してアピールしています。

 一般的にラーメンは体に良くない食べ物と思われがちですが、「とみ川」では「おいしいことはもとより、体にいいものを提供することが何よりも大事」だとして、健康志向のラーメンであることを訴えています。

 中国では、汚染食品のニュースが日々あふれ、中国人消費者は食の安全に対して敏感になっています。そうした中、とみ川のラーメンは体にいい健康志向のラーメンであることが評価され、他のラーメン店より値段が高いにもかかわらず(日本円にすると1杯当たり1000円以上の価格帯が中心)、客足が絶えないのだといいます。

 富川氏が確認した限り、とみ川のような本格的な健康志向を掲げるラーメン店は、まだ上海市内には見られないそうです。だから、まだライバルはいないというわけです。


成功へのカギはローカライズと健康アピール

 富川氏の話を聞いて感じたのは、日本の飲食店の中国進出では、やはり「ローカライズ(現地化)」と「健康アピール」が重要だということです。

 筆者はこれまで、中国に進出した日系の飲食店をいくつか取材してきましたが、「日本の本場の味」をそのまま提供しようとする店よりも、中国人の味覚に味を合わせようと努力する店の方が成功しています。日本の良い点を持ってくることは確かに大事です。しかし経営者は、それ以上にローカライズに力を注ぐべきだということです。

 もう1つの成功のポイントが、健康アピールです。中国からは汚染食品のニュースが頻繁に伝えられます。そのため、「中国人はあまり食の安全を気にしていないのではないか」と考える日本人が少なくないかもしれません。しかし中国人消費者は、日々の生活を汚染食品に脅かされているからこそ、食の安全に対する意識は非常に強く、安全な食品を手に入れるためには高いお金を払うことを厭わない傾向があります。

 こうした現地ニーズを汲み取れるか? 飲食業に限らず、日系企業の海外進出の成否はこの点にかかっていると思われます。

筆者:花園 祐

JBpress

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