習近平「美人妻」の暗殺未遂事件 犯人は武装警察だった

6月26日(日)7時0分 NEWSポストセブン

習近平には独裁者との批判も(写真:アフロ)

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 習近平は最近、「習沢東」と呼ばれるほど、毛沢東を模した自身の偶像化や軍権掌握といった権力の一極集中を進めている。その独断専行ぶりは50年前の文化大革命発動当時の政治状況を彷彿とさせる。


 毛沢東がトウ小平や劉少奇ら“実権派”を叩き潰したように、習近平も上海閥や共青団閥の力を一気に削ぐ動きを加速しているが、その最中、習近平を震えあがらせる事件が起こっていた。ジャーナリストの相馬勝氏がレポートする。


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 北京の党幹部筋は「習近平の増上慢は極まっている。まるで、絶大なカリスマ性を発揮した毛沢東のように振る舞っている」と前置きして、次のように指摘する。


「反腐敗運動で、最高幹部を失脚させるなど、これまでの指導者ができなかったことを敢然と実行したことで、庶民の習近平人気は高まってきたが、ここにきて、習近平を称える歌や漫画をユーチューブで流すなど、個人崇拝の機運が高まり、逆に庶民は白け始めている」


 その一つの表れが3月から4月にかけて、ネット上で、習近平に対する辞任要求の書簡が公表されたことである。


 まず、3月4日に新疆ウイグル自治区主管のニュースサイト「無界新聞」に「習近平は辞職せよ」と勧告する謎の書簡が掲載された。この書簡の差出人は自らを「忠実な共産党員」として、習近平を「独裁者」と批判し、経済運営の失敗をあげつらっている。


 この辞任要求で注目されたのは、書簡の公開時期だ。年に1回しか開催されず、世界中からメディアが取材に訪れる全国人民代表大会(全人代=国会に相当)の前日に発表されたのだ。この書簡の主は用意周到に習近平に辞任要求を突きつけたといえよう。


 さらに、3月下旬にも再び習近平の辞任を求める書簡がネット上で公開された。この米国を拠点にする中国問題専門の華字ニュースサイト「明鏡新聞網」系のブログに辞任要求書簡を投稿したのは「171人の中国共産党員」と名乗るグループだ。


「習同志の独裁と個人崇拝が党内組織を混乱に陥れている」と批判したうえで、中国共産党中央に対して、「習同志を一切の職務から罷免し、党と党員を救済するよう要求する」と強く訴えている。書簡は投稿主が自らすぐに削除したもようだが、ネット上で一気に拡散した。


 前出の党幹部筋は「最高権力者の辞任を求める声が立て続けに公になるのは異常事態だ。これは習近平の個人崇拝や言論統制に党内からも強い反発が出ているためだ」と明かす。このため、中国当局も事態を重視し、この事件に関与したとして20人以上が逮捕され、その家族も身柄を拘束されているという。


◆犯人は武装警察だった


 同筋が明かしたところでは、習近平が危機感を募らせているのは習近平夫人の彭麗媛にまで批判が及び、暗殺未遂事件まで起こったことが原因だという。


 4月上旬、広東省在住のジャーナリストが習近平夫人である彭麗媛を中国史上唯一の女帝で、稀代の悪女とされる7世紀の則天武后になぞらえる文章をネット上で発表。当局はすぐに削除するとともに、「デマを流した」などとして、このジャーナリストを逮捕した。


 さらに、真偽のほどは不明だが、彭麗媛の専用車に爆発物が仕掛けられたものの、党中央の要人警護のシークレットサービス「党中央警衛局」要員に見破られ、犯人は逮捕された。犯人は何と武装警察部隊の隊員数人だった。習近平による30万人の兵員削減で、軍から武警に配転になったことを恨んだ犯行とされる。


 ここに至って、習近平は羊の群れを狙うオオカミのように、権力者としての牙をむき出しにする。4月下旬から5月初旬にかけ、習近平の党の重要会議での演説全文が公表され、「党内部の敵」の撲滅を宣言したのである。


 まず、4月末に、昨年12月に行われた党の高級幹部養成機関である党中央党校での重要講話が党機関誌「求是」に掲載された。


 習近平は演説で「国内外の各種敵対勢力が我が党の旗幟を変えようとしている。我々のマルクス主義信仰を踏みつぶそうと企んでいるのだ」としたうえで、「地方の共産党員は党中央の指示に忠実であらねばならない」と党への忠誠を誓うよう檄を飛ばした。


 さらに、5月初旬には、今年1月の党中央規律検査委員会の全体会議で行った演説内容が公表された。


 習近平は「党内には野心家や陰謀家が存在し、内部から党の執政基盤をむしばんでおり、見逃すことはできない。政治規律を第一にしてリスクを取り除き、災いを防がなければならない」と危機感をあらわにした。


「野心家、陰謀家」という強烈な表現が党の重要な大会で使われるのは1981年6月の第11期党中央委員会第6回総会以来、35年ぶり。この総会では文化大革命(1966〜1976年)を批判した「建国以来の党の若干の歴史問題に関する決議」が発表され、文革を主導し、中国全土を大きな混乱に陥れた江青女史ら四人組や林彪集団を糾弾した。このため、習氏はいまも中国で文革に匹敵するような非常事態が起こっていると警告しているようだ。


●そうま・まさる/1956年生まれ。東京外国語大学中国語学科卒業。産経新聞外信部記者、香港支局長、米ハーバード大学でニーマン特別ジャーナリズム研究員等を経て、2010年に退社し、フリーに。『中国共産党に消された人々』、「茅沢勤」のペンネームで『習近平の正体』(いずれも小学館)など著書多数。近著に『習近平の「反日」作戦』(小学館)。


※SAPIO2016年7月号

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