在日韓国人の銅メダリスト、安昌林が明らかにした韓国の在日差別

7月30日(金)6時0分 JBpress

 過去に例を見ない状況で始まった東京五輪だが、いざ始まってみると、日本でも韓国でも、自国の選手の活躍に胸を躍らせる国民が増えている。その中で、在日韓国人3世ながら韓国代表として東京五輪の男子柔道73kg級に出場し、銅メダルを獲得した選手が脚光を浴びている。

 今回、メダルを獲得したのは、在日韓国人3世の安昌林(アン・チャンリム)選手だ。27歳の彼は京都で生まれ、6歳から柔道を始めた。高校と大学で頭角を現し、大学の監督からは日本への帰化を勧められたものの、「韓国人として太極旗をつけたい。国際大会で日本の選手に勝つことが目標」として韓国代表を目指した。

 その後、韓国に渡り、龍仁大学の柔道部に所属し、国内外の大会に出場を続けながら実績を積んだ。そして、1年延期となったものの、東京五輪の舞台に「韓国代表」として立ち、韓国に銅メダルをもたらした。

 柔道中継の際に、韓国MBCのアナウンサーが「私たちが望んだメダルの色ではなかった」と発言。「選手に対する差別」「敬意はないのか」といった非難が殺到したが、その当事者である。

 日本で生まれた在日韓国人で、柔道の韓国代表を目指していたケースと言えば、現在日韓両国でタレントとして活動をしている秋山成勲「秋成勲(チュ・ソンフン)」氏が挙げられる。

 韓国で市役所に勤務しながら柔道の韓国代表を目指したが、在日韓国人に対する差別などから代表になることを断念し、日本に戻った。

 日本へ帰化した秋氏は2002年の釜山アジア大会の81kg級に出場し、優勝を果たしたが、優勝インタビューの際に「代表のために日本国籍を取得したが、自分は韓国人であり、声援を送ってくれた同胞に感謝をする」というコメントを出して韓国メディアからバッシングを受けた。

 その後、秋氏は格闘技に転向し活躍の後、現在では娘と共に韓国内のテレビ番組やCMに出演するなど人気タレントの地位を確立している。


日本では「韓国人」、韓国では「日本人」と見られる在日韓国人

 今回の安昌林選手のメダル獲得について文大統領は「祝福する」と述べるとともに、「安選手の活躍は在日同胞を越えて、5000万の韓国の国民の誇りだ。我々は祖国のために安選手の闘魂を記憶する」と称えるメッセージを発表した。

 もっとも、韓国代表を目指しながらも対照的な軌跡を辿った秋氏の事例や今回のメダル獲得における文氏の発言、さらにMBCアナウンサーの発言を見ると、それぞれに様々な複雑な思いや思惑が絡んでいるように感じる。

 2020年現在、日本にいる在日韓国人は約42万6000人である。現在では、3世、4世の世代となり、その多くが日本で生まれ育っている。国籍は韓国でありながら感覚は日本人に近いが、日本では『韓国人』として見られ、韓国では『日本人』として見られる存在だ。

 彼らからよく聞かれるのは、「在日韓国人の精神的な基盤は在日同胞の社会で作られたもので、そういう意味では韓国とのつながりは強いものではない」という声である。韓国に行けば「日本人」という扱いを受け、日本では「外国人同様」に差別を受けるという声も聞かれる。

 前述の秋氏の過去や今回の安昌林の銅メダルを巡るMBCの発言を見ると、文氏の祝福コメントも、純粋に受け止めることはできない。

 以前、ある在日韓国人の方と話した時に、「スポーツで日韓戦があった場合、自分の国籍は韓国だが、応援するのは日本だ。韓国の、何でもスポーツと政治を結びつける姿勢に反感を感じるからだ」と語っていた。

 続けて、「70年代から90年代初頭まで、差別など日本で葛藤を覚えることはあまりなかったが、韓国が河野談話を引き出してからというもの、日本に対して過剰な難癖をつける韓国の言い分に恥ずかしさを感じるようになった」と語り、最後に「日本で生まれた在日と80年後半以降、韓国から日本に渡って来た在日韓国人は全く別のもので、当然、日本で生まれ育った在日の感覚は日本人と変わりない」と話す。

 思い返せば、ロッテグループの元副会長である重光宏之氏(韓国名・辛東主)が韓国メディアのインタビューに応じた際に、韓国メディアは「韓国の国籍を持っているのに韓国語も話せない」と批判的に論じていた。

 これは在日韓国人に限らず、在米韓国人にもありがちなことであると言える。


「民族は一つ」に入らない在外韓国人

 韓国では、現在、米国出身のK-POPアイドルが数多く活動している。在米韓国人で、現在は韓国でミュージシャンや実業家として活躍するパク・ジェボムは18歳だった2005年に、韓国の芸能プロダクション、JYPエンターテインメントの練習生として来韓し、デビューを目指した。

 そして、2008年に男性アイドルグループの2PMのリーダーとしてデビューすることが決定したが、翌2009年になって、彼が韓国生活の苦しさを吐露していた過去のウェブサイトの文章が流出。これが「韓国、韓国人に対する侮辱」とされパク・ジェボムは激しいバッシングの矢面に立たされた。これが引き金となり、彼は2PMを脱退、JYPも去ることとなった。

 このように、韓国では在外の同胞が祖国の言葉や文化を理解できない、適用できないといったことに非常に厳しい見方をしがちだ。韓国語をろくに話せない在外韓国人を露骨に馬鹿にする風習が残っており、海外育ちであったとしても「同化」を求められるような雰囲気がある。

 韓国に対して従順であれば称賛を受け、韓国を否定するようなことを言ったり、韓国籍を放棄したりすれば、すぐさま批判の的にするなど、同胞を都合よく上げ下げをしているという印象が否定できない。韓国の政権は「民族は一つ」と言って「北従」を貫くが、在外韓国人はいつも無視をされ、都合の良い時だけ利用される。

 安昌林選手は銅メダルを獲得した時に、「韓国籍は祖父と祖母が命をかけて守ったものだ。韓国籍を維持したことを後悔したことは一度もない」とコメントしたが、「在日韓国人は日本では韓国の人、韓国では日本の人と呼ばれる」とはっきりと差別を訴えた上で、「今も多くの(在日同胞の)方たちが助けてくれる。感謝を伝えたい」と在日同胞への感謝を述べた。

 安昌林選手のコメントから見て取れるのは、韓国にいる韓国人と日本で生まれた在日は違うというアピールである。今どきの在日らしいコメントだと思う。


他者に対する敬意が根本的に欠けている韓国

 日韓の問題に限らず、オリンピックでは様々な国や地域、そして国同士が抱える問題が露見する。だが、先日の男子団体アーチェリーでは韓国が金、台湾が銀、日本が銅を獲得した。そして、競技終了後の表彰式の際に、韓国、台湾、日本の選手が一同に集い、自撮りで記念撮影をする一幕が話題を呼んだ。

 ネット上にも、「こういう姿が本来のあるべきオリンピックの姿で醍醐味だ」「韓国の選手もすべてが日本に対して悪いイメージを持っている人ばかりでないということがわかるだけに、横断幕などの問題は本当に残念」といった声が目立っていた。

 今回の五輪では、先の選手村の横断幕の問題に始まり、マスコミの「故意」としか思えないような失言や問題が相次いでいる。

 SBSは放送中に、「竹島」を韓国の領土として強調するかのようなコメントや日本を揶揄するようなコメントをことあるごとに出していた。MBCは、開会式の選手入場の紹介で、出場国を侮辱するような紹介で不評を買った上に、サッカー中継では相手のミスを茶化して喜ぶかのようなテロップを流し、柔道でも銅メダルに対して敬意を欠く発言を出した。これにより、MBCは社長が謝罪する事態にまで至っている。

 しかし、謝罪会見という割には、終始、弁解に徹していたところを見ると、こうした不祥事は必然的に起こったのだろうと思われる。つまり、彼らが日本や、他国、在日韓国人に対して普段思っていることが出ただけということだ。

 先のアーチェリーの表彰式での出来事はほっこりとした気持ちにさせる出来事であり、選手一人ひとりを国としてでなく個人で見れば、すべてが日本を敵視しているわけではないということもわかる。ただ、そういった雰囲気を否定し、相手と相手の不和を煽るような報道をしているメディアには辟易とさせられる。

筆者:田中 美蘭

JBpress

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