立ち直る中国自動車市場、テスラの独壇場に

8月3日(月)6時0分 JBpress

上海にあるテスラショールームの「モデル3」(筆者撮影)

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(花園 祐:上海在住ジャーナリスト)

 中国汽車工業協会が7月初めに発表したデータによると、2020年1〜6月における中国自動車販売台数は前年同期比16.9%減の1025.7万台でした。年初のコロナウイルス流行の影響を受け通年販売台数では前年割れが続いているものの、第2四半期の単月販売台数では、4月(前年同月比4.5%増)、5月(同18.7%増)、6月(同11.9%増)ともに早くも反動需要ともいうべきプラス成長を見せています。

 また新エネルギー車分野では、昨年(2019年)末に上海工場を稼働させたテスラモーターズの快進撃が続いています。同社の好調ぶりは新エネルギー車分野のみならず、中国自動車市場全体で台風の目となっています。

 今回はこうした、コロナウイルスの大流行を経て活況を取り戻した中国自動車市場の現状をお伝えします。


初回購入ユーザーが増加

 前述の通り、中国の自動車販売台数は1〜6月の統計では前年比割れとなりましたが、直近の4〜6月における単月販売台数では、早くも前年同月比でプラス成長へと転換しました。

 中国の報道では、その背景として、年初の自粛期間中に購入が控えられていたことによる購入時期先送り、並びに反動需要が大きいと指摘されています。また、下半期にかけて販売台数はさらに成長を続けるという強気の見方が多くなっています。

 しかし筆者は、やはり反動需要は一過性のものであり、まだ楽観視はできないと見ています。成否の分かれ目としては、政府が準備している各種の自動車購入刺激策が、今後どこまで浸透するかにかかってくるでしょう。

 このほか第2四半期に販売台数を増やした要因として、新規購入ユーザーの存在が挙げられています。中国では、年初のウイルス流行による自粛期間を経て、自家用車が必要と考えるようになった消費者が増えたと言われています。実際に筆者が上海の街中を歩いていると、まだ運転に慣れていない初心者ドライバーをよく目にし、確かに初回購入ユーザーが増えていることを実感します。


トラック販売が空前の特需

 車形別販売台数をみると、1〜6月の乗用車販売台数は前年同期比22.4%減の787.3万台と大きく落ち込みました。一方、商用車販売台数は同8.6%増の238.4万台と、早くもプラス転換を果たしました。

 商用車の内訳をみると、バスが同12.4%減の18.5万台に対し、トラックが同10.8%増の220万台と台数を増やしました。実質的にトラック販売台数の急増による結果と言えます。

 トラックが売れた背景としては、第1に、昨年、排気ガスの排出基準が引き上げられたことで旧式トラックの更新が続いていることが挙げられます。

 そして第2の理由はほかでもなく、コロナ禍による運送需要の増加です。今年1〜5月における中国の小売消費額は前年同期比で13.5%減少した一方、オンライン商品小売消費額は同11.5%と大きく上昇しました。自粛期間中のオンライン小売の活況を受け、運送量が増加しており、物流業者の運搬用トラックへの投資が増えたことが、販売増につながっています。


トヨタ「レビン」が急上昇

 続いて1〜6月の車種別販売台数を見ていきます。セダン販売台数では、前年から続いているように日産系列の東風日産が販売する「シルフィ」が前年同期比5.4%減ながら約20.6万台で首位を維持しています。

 しかし今回最も注目すべき日系車は、トヨタ系列の広汽豊田が販売する「レビン」に他ならないでしょう。レビンの1〜6月における販売台数は約10.4万台、前年同期比で20.6%という急増ぶりを見せました。新型コロナウイルスの流行という逆風下でも、ハイブリッド車という特徴による高い燃費性能が消費者に大きく評価されている結果と見られます。

 なお日本ではハイブリッド車の代名詞といえば、同じくトヨタが販売する「プリウス」ですが、中国においてはレビンがハイブリッド車代表として認知されているように感じられます。レビンは今年6月30日にモデルチェンジを行っており、下半期にかけて販売台数を今後さらに伸ばしてくる可能性があります。

 レビンの好調ぶりが支えた結果というべきか、1〜6月におけるメーカー別販売台数においても、広汽豊田は乗用車販売台数上位15社に入る外資合弁系メーカーとして唯一の前年同期比プラス成長(3.1%増)を達成しました。


世界販売台数の3分の1が中国

 総合的な販売台数でみれば、2020年前半は広汽豊田、並びにトヨタの逆風下における躍進が大きく目立ちました。しかし中国自動車業界で今季最も注目されたのはトヨタではなく、米国の新エネルギー車メーカーであるテスラ・モーターズ(以下、「テスラ」)で間違いないでしょう。

 中国汽車工業協会によると、2020年1〜6月における中国の新エネルギー車販売台数は前年同期比37.4%減の39.3万台となり、全体販売台数同様に大幅な落ち込みとなりました。しかし車種別販売台数では、テスラの「モデル3」が4.98万台を記録し、2位の「Aion S」(1.56万台)の3倍超と他車を大きく突き放す驚異的な売れ行きを見せました。

 実際に今年に入って以降、上海の街中では「モデル3」が走っている光景を目にする機会が非常に増えています。

 テスラがこれほど絶好調なのは、昨年末に上海工場が稼働し、現地生産化によって販売価格を引き下げたことが最大の要因です。ただし価格が引き下げられたとはいえ中国系メーカーのEVよりも高価なテスラが、短期間にこれほどまでの売れ行きを見せるとは誰も予想していませんでした。

 中国自動車業界専門サイト「盖世汽車網」の報道によると、1〜6月におけるテスラの世界販売台数のうち約3分の1が中国市場で販売された車となっています。テスラの株価も、中国市場での好調によってこのところ大きく押し上げられています。

 テスラ側の発表によると、同社の上海工場では現在、今年3月に発売された「モデルY」の新たな生産ラインを建設中であり、2021年に稼働を開始するとしています。現在、中国で輸入販売されているモデルYの販売価格は48.8万〜53.5万元(約740万〜810万円)です。業界アナリストは、現地生産の開始後、同車の販売価格は40万元(約600万円)以下に設定されると予想しています。

 新型コロナウイルスの世界的大流行を受け、多くのグローバル企業が海外への進出や追加投資を控える中、テスラは積極的な攻めの経営を続けています。このテスラの戦略は吉と出るか凶と出るか、また、反動需要はいつまで続くのかを含め、中国自動車市場の動向は下半期も非常に気になるところです。

筆者:花園 祐

JBpress

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