<コラム>「日本が敵」の抗日ドラマ、トンデモ作品激減もゼロにならない理由

8月5日(日)14時40分 Record China

2011年ごろから2014年あたりにかけ、日中両国で話題になったトンデモ抗日ドラマ。現在の抗日ドラマ事情はいったいどうなっているのか?そのあたりを中国の動画サイトの事情を交え、軽くレポートしたいと思う。写真は『超自然事件之墜龍事件』。

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2011年ごろから2014年あたりにかけ、「日本兵を素手で引き裂く」とか「手りゅう弾で飛行機を撃墜」など、日中両国で話題になったトンデモ抗日ドラマ。黄金期ともいえる全盛期から数年経過したが、現在の抗日ドラマ事情はいったいどうなっているのか?そのあたりを中国の動画サイトの事情を交え、軽くレポートしたいと思う。

2011年あたりは日中間で政治的にいい関係とは言えず、各地の反日デモが報じられたので記憶にある人も多いだろう。その結果、TVドラマの制作作品数のうち3割近くが抗日ドラマという状況が生まれた。

政治的にそういった状況なうえ、視聴率も狙える、審査も通りやすいという副産物のおかげで従来のまじめな抗日作品とともにトンデモ作品も数多く制作された。この辺はかつて「アタリ・ショック」といわれるアメリカのゲーム機メーカー、アタリ社が失速の原因となったクソゲー乱発と似た状況といえよう。また検閲が通りやすいのを逆手に取り、自分たちの作りたいものを作るというクリエーターにとってはある意味よい環境でもあったかもしれない。

【近年の制作数変化】
真面目な戦争ドラマからトンデモ作品まで、日本が敵となっている日中戦争を題材とした抗日ドラマの作品数を追ってみたい。

例に挙げるのは中国の大手動画サイト「Youku」の軍事ドラマジャンルで公開されている作品数をエビデンスとする。明らかに年代が異なる解放軍ものや三国志時代の軍事ドラマは除外した。ただし、Youkuにはないが他の動画サイトで公開されていたり、TV放映はあったものの動画サイトにアップされない作品もあるが、概略を把握するなら事足りる。

▼Youku年別抗日ドラマ作品数(カッコ内:全ジャンル作品数)
2010年:69本(347)
2011年:89本(348)
2012年:73本(350)
2013年:82本(309)
2014年:63本(336)
2015年:55本(328)
2016年:25本(245)
2017年:6本(192)
2018年:2本(226)

上記の一覧で2016年ころから激減しているが、これはゴールデンタイムにおけるドラマ放映数の規制が発動されたことと関係ありそうだ。従来ゴールデンタイムに3話4話放映していたものが2話までとなったため、必然的に作品数が淘汰されたと推測する。

【代わりに台頭してきたジャンル】
全体的な作品数が減ったとはいえ、従来、アクションドラマの一角を担う抗日ドラマはさらに激減。その穴埋めというわけではないが、警察もの、人民解放軍ものが増えている。抗日ドラマ同様、日本では考えられないほどの爆発シーン、アクションシーン満載で楽しめる。スローガン満載で抗日ドラマより説教臭いシーンが多いのが難点だ。

また、アマゾンプライムビデオやネットフリックスがオリジナル作品を連発しているように、中国の動画サイトでも自主制作が増えている。こちらは作品を鑑賞している限り、表現規制はテレビより緩そうだ。

【それでも抗日神劇は死なず】
ところがである、トンデモ作品の代表作『抗日奇侠』や『英雄使命』など、いまだに地方放送局の再放送枠で健在だ。各省の衛星放送局、さらに各都市の放送局と、日本とは比べ物にならない数の放送局があり、そしてその放送枠がある。なので、かつて人気のあった作品などは深夜早朝や昼間の再放送によく登場する。

新たに制作される抗日ドラマの作品数が激減したとはいえ、「抗日」は中国にとっては建国神話の一部である、ドラマで19世紀末から20世紀前半を扱えば必ず日本が関わってくるので、抗日ドラマはゼロにはならないはずだ。

また、前述した動画サイトの自主制作作品として『鬼子也瘋狂』という不条理抗日ドラマやSF作品で抗日期にタイムトラベルする『超自然事件之墜龍事件』が公開されたりと、テレビだけではなく、新たなメディアにクリエーターの軸足が動く現象もみられる。そういった新しいメディアで今までにない表現が試されるのであれば、中国ドラマファンとしても楽しみである。

■筆者プロフィール:岩田宇伯
1963年生まれ。景徳鎮と姉妹都市の愛知県瀬戸市在住。前職は社内SE、IT企画、IT基盤の整備を長年にわたり担当。中国出張中に出会った抗日ドラマの魅力にハマり、我流の中国語学習の教材として抗日作品をはじめとする中国ドラマを鑑賞。趣味としてブログを数年書き溜めた結果、出版社の目に留まり『中国抗日ドラマ読本』を上梓。なぜか日本よりも中国で話題となり本人も困惑。ブログ、ツイッターで中国ドラマやその周辺に関する情報を発信中。

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