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中国で先端的「シェア自転車」にまさかの使いみち

JBpress8月14日(月)6時14分
画像:中国ではキャッシュレス社会になってニセ札をつかまずに済むようになったが、代わりにQRコードの偽物が登場してきた。ちなみに上記の紙幣コピーの上には「ニセ札は通報」と書かれている(筆者撮影)
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中国ではキャッシュレス社会になってニセ札をつかまずに済むようになったが、代わりにQRコードの偽物が登場してきた。ちなみに上記の紙幣コピーの上には「ニセ札は通報」と書かれている(筆者撮影)
画像:こんな庶民的な市場でも、近所の奥さんがスマホ決済で買い物(広東省広州市内で筆者撮影)
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こんな庶民的な市場でも、近所の奥さんがスマホ決済で買い物(広東省広州市内で筆者撮影)
画像:歩道橋に空いた大穴をシェア自転がふさぐ。様々な意味で大雑把さを感じる、中国らしい光景だと言えよう。現地報道より
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歩道橋に空いた大穴をシェア自転がふさぐ。様々な意味で大雑把さを感じる、中国らしい光景だと言えよう。現地報道より
画像:最新技術の匂いがするシェア自転車がゴミ柵に。そこに立ちションする子ども・・・。このギャップが現代の中国である。現地報道より
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最新技術の匂いがするシェア自転車がゴミ柵に。そこに立ちションする子ども・・・。このギャップが現代の中国である。現地報道より

 近年、中国ではスマホの普及に伴って、その機能を活用した社会のスマート化の試みが急速に進んでいる。QRコードの読み込み機能を使ったスマホの電子決済は、都市部ではあらゆる決済の5割を占めるほどまで普及し、北京・上海・深センなどの大都市圏ではほぼキャッシュレスで生活することすら可能となった。

 また、関連サービスの発達も著しい。スマホで借りられるシェア自転車の利用者数は今年末までに約5000万人に達し、最大手「モバイク(Mobike)」は今年6月に日本市場への参入まで決定。また、個人の車両の相乗りを紹介する「滴滴出行」(中国版Uber)や、シェア傘・シェア充電バッテリーの利用が拡大するなど、アプリを用いた革新的なシェアリングエコノミーも急速に市民権を得ている。

 だが、スマホ決済やシェアリングエコノミーが国民的な普及を見せたからといって、それを用いる社会や人々の意識までもが即座に「スマート」に変わるとは限らない。

 今回の記事では以下、中国におけるスマート文化が、庶民の社会で巻き起こしている仰天事件の数々について見ていくことにしたい。


偽札は消えたがニセQRが登場

「あんたの店のQRは『やられちまった』んだろ? スマホじゃなくて現金で払うよ」

「ありがとうよ。新しいQRはもう作ったんだけどねえ。用心のために夜になったら店の中にしまうようにしたんだ」

 今年7月17日付けの陝西省地元紙『三秦都市報』が伝えた、西安市内にある露店市場における店のおばさん・薄さんと買い物客のやり取りだ。この市場で菜っ葉を売っていた薄さんによると、西安市内では昨年ごろからスマホ決済が広がり、露店の市場ですらも店先にQRコードが描かれた紙をぶら下げるようになっていた。

 ところが、薄さんの店では今年7月15日の昼前に異常が発生。店主である夫のスマホアプリに、朝からの売り上げがまったくチャージされていなかったのだ。

 不審に思った薄さんが隣の店の奥さんに相談したところ、こちらの店もチャージがなされていないことが判明した。よく調べてみると、店先のQRコードの上にぴったりと別のQRが貼られており、第三者にスマホ決済の売り上げを騙し取られていたらしい。被害総額は薄さん宅が500元で、隣の奥さんが1000元であった——。

 こうした事件は現代の中国では日常茶飯事である。たとえば今年5月ごろから重慶市でもニセQRを使ったスマホ決済の窃盗事件が起き、当局は7月に犯人の男2人を逮捕。彼らは20店以上の商店の店先のQRコードを自分が準備したアカウントのものに貼り替え、総額1万元以上の売上金をかすめ取っていたという。

 犯人らはまず別人のIDカードと飛ばしの携帯SIMで作った振込専用アカウントを用意して、自分にアシがつかないQRコードを作成。ファーストフード店などで犯人1人が店員の注意を引きつける間に、もう1人がこっそり貼り付け作業を行う手口だったようだ。

 また、6月末には広東省深セン市南山区でも、ニセQRの貼り付け詐欺犯1人が逮捕。さらに7月に入り江蘇省徐州市の牛肉ラーメン店でニセQRが発見されたほか、7月27日には広西チワン族自治区柳州市の市場でも同様の貼り付け詐欺が発生し、犯人の男女3人が逮捕されている。ほか、こうしたニセQRコードにスパイウエアなどを仕込んで個人情報を抜き取るという、単なる売上金詐欺よりもさらにタチが悪い犯罪も横行中だ。

 SuicaやEdyのような、日本や香港など他国で主流の非接触型ICカードの決済は、店側が専用のカードリーダーを準備しなくてはならない。だが、近年の中国で主流のスマホ決済は、店側がQRコードを紙に印刷するだけで対応が可能であり、このことも中国でスマホ決済が個人商店まで広く普及する要因になっている。

 だが、これは要するに詐欺師のコストもゼロに近いということだ。中国ではスマホ決済の普及によってニセ紙幣をつかまされるリスクが減ったと言われるが、かわりにニセQRコードが登場しているため、実は騙される危険は相変わらずだったりするのである。


シェア自転車を無料資材に使ってしまえ?

 現代中国のシェアリングエコノミーを代表するサービスが、スマホで借りられるシェア自転車だ。利用は簡単で、たとえば大手のモバイクであれば事前に自分の電子マネーアカウントに紐付けたアプリをインストールし、あとは路上のあちこちで見つかるモバイクの車体のQRコードを読み取って解錠するだけ。乗り終えたら、再び施錠してどこにでも乗り捨てられるシステムである。料金は各社とも30分あたり0.5〜1元と格安だ。

 中小業者のなかには、セキュリティコストをケチったことで車両が大量に盗まれて倒産する例も出ているが、最大手のモバイクと「ofo」は絶好調。各都市ごとに数万〜数十万台もの自転車を投入し、街の風景をすっかり一変させてしまった。

 車両の乗り捨てが都市景観を損なうことや、交通の妨げになることに非難の声も出ているが、なにぶん便利であるうえに大気汚染対策にもなるため、当局も基本的に好意的な姿勢である。もっとも、いまやシェア自転車は街に普及しすぎたせいで、人々の間でなんとなく無料の公共物のように思われているフシもある。

 今年7月21日、広東省広州市内でいきなり歩道橋が割れ、階段部分が1メートル横にズレてしまう事件が発生した。階段を登りきった場所に大穴が空き、足を滑らせると地上に落下するという非常に恐ろしい状態になったのである。

 そこで地元の人たちが考えついた応急処置が、街にいくらでもあるofo社のシェア自動車を持ってきて、穴の上に置いてしまうことだった。三角コーンよりも安くてどこにでもある「資材」というわけだが、日本人の感覚では到底思いつかない斜め上の利用法だろう。

 同様の例は他にも多く、今年5月には河北省でモバイク製のシェア自転車がマンホール工事の蓋がわりに使われていたことが報じられたほか、4月には北京市郊外の城中村(中国版のスラム)で、シェア自転車がゴミの柵がわりに使われている様子が撮影されている。

 近年の中国は極度のデジタル監視社会と化しているため、業界大手のシェア自転車の利用履歴は個人の信用情報と紐付けされ、荒っぽい使い方をした人は後で住宅ローンが組みにくくなるなどの社会的なペナルティを受ける場合もあるとされる。

 だが、最初から信用情報などあってなきに等しい、貧困層の「持たざる民」にとって、そんなリスクはちっともこたえない。シェア自転車のマナー問題は、今後も中国の社会問題であり続けそうだ。


日本だと間違いなく「潰される」?

 近年、中国における目覚ましいスマート化の進展によって、日本の一部の報道や識者の間では「中国は日本を超えた」といった声すら出ている。確かに、ここ数年の中国では実験的で革新的なサービスが次々と生まれ続けており、現地にいると社会がダイナミックに変化している実感を覚えることは間違いない。

 だが、新しいサービスが世の中を席巻しても、人々の心がすぐに「先進的」に変わるとは限らない。むしろ、前近代以来の泥臭くてなんでもありな中国社会に、スマホを用いたハイテクなライフスタイルが融合し、よりいっそうカオス感にあふれたサイバーパンクな世の中になっているのが実情だ。社会全体の総合的な安定度や便利さの面で、少なくとも現時点で日本が中国に負けているとは言い難いだろう。

・・・もっとも、仮に現代の日本で画期的なサービスが登場したとして、なんらかの問題が発生した場合、ほぼ間違いなくクレームの嵐と当局の勧告によって「潰されて」しまい、当初のパワーが失速するだろうことも確かだ。中国に日本よりも「すごい」点があるとすれば、事前にリスクが明らかに想定されているサービスでも躊躇なく実用化していく、良くも悪くもアグレッシブすぎる姿勢だろう。

 むやみに中国を賛美する気はない。ただし、チャレンジをすぐに形にして勝負するスピード感については、日本もすこしは参考にしてもいいのかもしれない。

筆者:安田 峰俊

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データ提供元:アニメキャラクター事典「キャラペディア