在韓35年の教訓「韓国に関心を持っても、深入りはするな」

8月14日(月)7時0分 NEWSポストセブン

「未来志向」を強調する両首脳だが 共同通信社

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 日本では8月になると“終戦モノ”といって戦争時代の歴史を振り返る。終戦の日の15日には天皇陛下が出席される政府主催の記念式典も行われる。そのコンセプトの基本は「追悼と平和」だが、日本支配から解放された韓国では15日は祝日で、大統領が出席する政府主催の記念式典があり、マスコミや各種イベントは“反日モノ”でにぎわう。


 映画界など毎年そうだ。今年の話題は2本で、すでに上映中の『朴烈』は、大正時代の日本で皇室テロを計画した無政府主義者の朝鮮人青年・朴烈(21歳!)と内縁の妻・金子文子の話。反日テロにプラス、当時いわば“翔んでる女”だった日本女性がからむ日韓ラブストーリーだから観客には心地よい?


 ただ映画の冒頭シーンがよくない。アルバイトで人力車の車夫をしていた朴烈が、日本人客から代金を地べたに投げつけられ、「足りない」というと「朝鮮人のクセに生意気だ! さっさと朝鮮に帰れ!」と怒鳴られ、踏んだり蹴ったりの暴行を受ける。


“料金踏み倒し”にいわれなき暴行で“朝鮮人差別”を象徴したつもりだろうが、これは日本ではありえない。ただ、映画は「大逆罪」に問われた二人の裁判風景が詳しく描かれ、日本人の良心的弁護士も登場するなど近代国家日本の法治主義が印象的である。このあたりは韓国人観客には新しい日本発見になるかも。


 もう一つの『軍艦島』は7月下旬封切りだが、ユネスコの世界遺産に登録された長崎の旧炭鉱の話。『朴烈』のテロ計画もそうだが、近年の韓国映画界の“反日モノ”は日本人をバッタバッタやっつける活劇調が多い。したがって『軍艦島』も苛酷な炭鉱労動で虐げられた朝鮮人徴用工が“反日抵抗”に立ち上がるといったストーリーになるようだ。


 筆者は韓国留学の1970年代から韓国の映画やテレビドラマを観てきた。夏の8・15モノというと90年代中ごろまでは「日韓和解の試み」みたいなものも結構あったが近年はそんな迂遠な(?)話はなく、勇ましい韓国人が日本を痛めつける話がもっぱらだ。


 というわけで日韓ともども毎年8月は歴史回顧の季節だ。そこで筆者も今年はそこに加わらせてもらおうと一冊の本を出版した。


『隣国への足跡/ソウル在住35年 日本人記者が追った日韓歴史事件簿』(KADOKAWA刊)で、筆者の個人的体験を盛り込んだ激動の日韓歴史物語であるが、「これまで日本はこの隣国にいかにかかわったか」を探ることで今後の付き合い方を考えた。結論的にいえば「相手は永遠に隣にいる。関心は大いに持て。しかし深入りするな」である。


 尊敬する櫻井よしこさんが最近、『週刊新潮』(6月8日号)の連載コラムで「白村江の戦い、歴史が示す日本の気概」として古代7世紀、日本が百済支援のため朝鮮半島で唐・新羅連合軍と戦った故事を高く評価していた。


 こうした朝鮮半島をめぐる「日本の気概」は13世紀の元寇、16世紀の文禄・慶長の役(壬辰倭乱)、日清・日露戦争、韓国併合、満州建国、大東亜戦争、朝鮮戦争にも関係しているのだが、その「気概」が「深入り」となって結果的に日本に禍をもたらしたことも一方で念頭に置かねばならないと思う。


 拙著では日本の敗戦に伴う朝鮮半島からの「日本民族苦難の引き揚げ」にページを割いたが、北朝鮮からのある引き揚げ者は「戦争がなければ敗戦の悲運はない。戦争は絶対に仕掛けてはならないが、仕掛けられた戦争には絶対負けてはならないことを学んだ」と痛切に証言している。


 拙著では、戦争に負けたにもかかわらず日本人が見せた気概も多く紹介している。そしてこの隣国相手の「引きこみ、引き込まれ」の危うさも。「気概」もまた民族的教訓をしっかり胸に刻んでこそ生きてくる。


●文/黒田勝弘(産経新聞ソウル駐在客員論説委員)


【PROFILE】くろだ・かつひろ/1941年生まれ。京都大学卒業。共同通信ソウル支局長、産経新聞ソウル支局長を経て産経新聞ソウル駐在客員論説委員。著書に『決定版どうしても“日本離れ”できない韓国』(文春新書)、『韓国はどこへ?』(海竜社刊)など多数。


※SAPIO2017年9月号

NEWSポストセブン

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