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それでも33%の米国人がトランプを熱狂支持する理由

JBpress8月15日(火)6時14分
画像:Rediscovering Americanism: And the Tyranny of Progressivism by Mark Levin Simon & Schuster, 2017
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Rediscovering Americanism: And the Tyranny of Progressivism by Mark Levin Simon & Schuster, 2017

米ニューヨーク、タイムズスクエアにある軍の採用施設の前で行われたドナルド・トランプ大統領への抗議デモ(2017年7月26日撮影)。(c)AFP/Jewel SAMAD〔AFPBB News〕

 これだけの内憂外患をものともせず、猪突猛進する米大統領は米史上でも珍しい。ドナルド・トランプ大統領の不支持率はついに61%にまで上昇した。支持率は33%と最低記録を更新し続けている(米キニピアック大学世論調査)。

 同大世論調査班は、「日々明らかになる醜聞や不手際が悪い結果につながる波状現象を起こしている」と分析している。

 しかし、コップの中に3分の1の水が入っているのをどう見るか、いわゆる「コップの中の水」論を持ち出せば、まだ33%がトランプ氏を支持をしているとも言える。いったい、この33%の米市民はどんな人たちだろう。

 トランプ大統領が何度か出かけて行って、トランプ支持大集会を開催してもらっているペンシルバニア州ハリスバーグ市に住むブルーカラーのマイク・ホワイトヘッドさん(51)にトランプ大統領を熱烈支持するわけを電話で聞いた。


リベラルなエリートが何より嫌い

 ホワイトヘッドさんは筆者にこう語っている。

 「俺たちは黒人やラティーノ、同性愛者やリベラルなエリートが大嫌いなんだよ。米国をダメにしているのは奴らなんだ。その象徴がバラク・オバマ(前大統領)だったし、ヒラリー・クリントン(前民主党大統領候補)だった」

 「オバマが去り、ヒラリーが選挙に負けてせいせいしてる。トランプ大統領の言っている『リアル・アメリカ』(Real America)*1に戻すことが俺たちの願いだ」

 「大統領は今それを必死になって実現しようとしている。ロシアゲートだって? あれはコミ—(共産主義者の別称)の仕業だよ。そのうち収まるさ」

*1=保守派は「かっての古き良き米国」を漠然と描いているが、本音は「白人中心の豊かで安全な米国。マイノリティや不法移民に邪魔されない、かっての白人優先社会」のこと。


白人たちが夢見る、かっての「古き良きアメリカ」

 この「リアル・アメリカ」について、もう少しお上品に、一応インテリとしての矜持を保って解説した本が今爆発的に売れている。トランプ贔屓の白人団体の大量買いやネットでの格安販売が功を奏しているらしい。

 米国建国時に戻って歴史を俯瞰しながら「トランプメリカ」(トランプのアメリカ)を解き明かしている。

 著者はマーク・レビン氏(60)は、テンプル大法科大学院出身の弁護士だ。「保守主義を守る」ためにラジオに解説者として随時出演。その後、「ラジオで喋ることが趣味」となって自らの番組を始めた。

 今では、押しも押されぬ超人気ラジオ番組のパーソナリティとして政治、経済、社会と森羅万象について一刀両断、その切れ味がリスナーを惹きつけている。週平均視聴者は770万人。

 米国でのラジオ・パーソナリティの第一人者は何と言ってもラッシュ・リンボー氏だ。人種的偏見から女性蔑視まで言いたい放題を売り物にする超人気者である。2人とも視聴者層は若干異なる。

 レビン氏は一応大卒などにも受けがいい。リンボー氏は完全に低学歴、低所得層白人にとっての「教祖的」存在だ。

 この2人が2016年の大統領選挙でどれほどトランプ当選に貢献したことか。科学的データはないものの、選挙専門家の一致した意見である。


「敵」はNYタイムズ、ハーバード、そしてハリウッド

 本のタイトルは、『Rediscovering Americanism: And the Tyranny of Progessivism』(アメリカニズムを再発見する:そしてリベラル派勢力による圧政を再認識する」)

 タイトルを見ただけで中身はだいたい想像がつく。

 「アメリカニズム」(米国主義)とは何か。それを今「Rediscover(再発見する)」。この場合、再発見と言うよりも再認識の方がピッタリかもしれない、

 そして後に続くリベラル派による圧政。8年間続いたオバマ民主党政権が「白人一般大衆」を抑えつけた圧政だったという意味だ。

 レビン氏はすでに6冊の本を著している。

 レビン氏にとっての「敵」は、リベラル派が牛耳っているMSM(メーンストリーム・メディア=主要メディア)、高等教育機関、エンターテインメント産業。つまり平たくシンボリックに言えば、ニューヨーク・タイムズ、ハーバード、ハリウッドということになる。

 著書のいくつかを列挙してみると——。

 Men in Black: How The Supreme Court Is Destroying America(法衣を着た男たち:最高裁はいかにしてアメリカを破壊しているか)

 Liberty and Tyranny: A Conservative Manifesto(自由と専制政治:保守主義のマニフェスト)

 Ameritopia: The Unmaking of America(アメトピア:アメリカ破壊)

 The liberty Amendments: Restoring the American Republic(自由に関する修正条項:米共和制の復活)

 Plunder and Deceit: Big Government's Exploitation of Young People and the Future(略奪と詐欺:巨大な政府が若者とその将来を摂取している)

 「専制政治」「破壊」「略奪」「詐欺」「摂取」・・・レビン氏のリベラル派に対する憤りがほとばしっている。


「建国の理念」とハイエクの自由主義思想

 レビン氏は建国の父が論議を戦わして作り上げた米国という国家のバックボーンを「アメリカニムズ」(米国主義)と名づけている。

 「アメリカ合衆国の政治理念は『American exceptionalism(他の国家とは異なる例外主義)』である。その国家がいかなる政治秩序を国内外で堅持していくのか。ルールに基づいて計画された秩序なのか、あるいは『Might-makes-right(勝てば官軍式)』に作られる秩序なのか」

 「つまり国家的な計画によって収斂された目標を追求するための政治、経済活動が行われるべきなのか」

 「あるいは個人、企業、政党、団体などがそれぞれの目標を立て、切磋琢磨することで、強制ではなく、自然に出来上がる秩序に基づいて政治、経済活動が行われるべきか」

 「後者はいかなる個人や官僚制の理解度を超えた複雑なシステムによって出現する」

 徹底した自由主義、国家を統治しようとする巨大な連邦政府に対する激しい反発。それは市場経済、規制制度にまで及ぶ。

 「どういったルールを作るか、そのことは市場主義経済についても言える。ハイエク*2が主張したように、市場における競争は人為的に創造することはできない」

 「市場がなければ生産手段に適正な価格はつけられない。人々が何をどれだけ欲しているのか、そのためにどれだけ供給すべきか。それを100%知り得るための膨大な情報を連邦政府が集めることなど不可能だ、とハイエクは指摘している」

 「連邦政府による規制も同じことが言える。官僚たちが規制措置を決定する際に熟慮せねばならないことは、個人の自由と市民生活を守るために不可欠な個人の財産を守り、そして市民の生活を豊かにさせる活気ある経済を育み、発展させるという鉄則だ」

 「これらの障害になる規制は百害あって一利なし。これこそが建国の父が定めた理念である」

*2=フレデリック・ハイエク(1899〜1992)、オーストリア出身の自由主義経済思想の巨匠。貨幣的景気論を展開し、「社会主義経済計画論争」でポーランド出身のオスカル・リシャルト・ランゲら社会主義経済学者を論破した。米シカゴ大学でも教鞭を執った。ノーベル経済学賞を受賞。

 レビン氏が「アメリカニズム」の根幹をなす保守主義の正当性を解き明かす狙いから、かのハイエク大先生を持ち出しているところは興味深い。

 同氏は「アメリカニズム」についてさらにこう言及する。

 「アメリカニズムとは、英国や欧州の自由主義思想の延長線上にあると言っていい。つまり米国という国家は、英国や欧州の自由主義政治の良いところに着眼し、建国の父たちはそれを北米大陸で実現させたのである」

 「その意味では米国の国家理念は、ハイエクはもとより、アダム・スミス*3、ジョン・アダムス(第2代大統領)、ジェームズ・マディソン(第4代大統領)の自由主義と相通ずるものだ」

*3=18世紀後半の英経済学者、思想家。『国富論』を発表、自由主義経済理論を体系化し、「古典派経済学の父」と言われている。

 それで、自由主義の歴史的検証と「トランピズム」との接点は何か。

 レビン氏は、その一例としてスコット・プルィット環境保護局長官(前オクラホマ州司法長官)の就任後初の演説を引き合いに出している。プルィット長官はこう述べている。

 「規制というのはそれによって物事を規則正しい状態にさせることだ。規制する者は規制されるものになぜ規制が必要なのかを示す、その確かさ(Certainty)を提示せねばならない」

 「規制されるものは規制されることによってもたらされるメリットについて十分に説明を受け、納得するものでなければならない」

 同氏はこの演説内容についてこう解説している。

 「形成過程にあるルールというものは、広範囲で、安定的で、一般的に適用可能であり、予測可能でなければならない。一部の専門家や官僚が言い出した特定の政治的目標を満たすためのルール設定など意味がない」

 「一例がエネルギー源の規制だ。我々のエネルギーは**年までにソーラからX%、風力からY%と設定する、といった類(たぐい)の政治的目標を前提としたルール作りなどするべきではない、ということを長官は言っているのだ」

 トランプ政権が地球温暖化防止のための「パリ協定」から離脱した背景には、よく米国の雇用を守る、という「米国第一主義」があるとされる。だがレビン氏の指摘する保守主義者の間にある規制への根強い反発のもう1つの要因が垣間見える。

 レビン氏はこれまでにも自らのラジオ番組でオバマ大統領が2016年の大統領選のさなか、トランプ氏の選挙本部のある「トランプタワー」に盗聴器を仕かけていたことや同大統領がイスラエルとの関係を「破壊」しようと画策していたこと、エボラ対策の不備などを激しく批判していた。

 今年8月20日には「ロシアゲート」疑惑捜査を指揮するロバート・モラー特別検察官にも矛先を向け、明らかに立憲政治システムを破壊しようとしていると糾弾している。同氏は本書の結語でこう指摘している。

 「巨大な連邦政府を排除し、官僚システムの息の根を止めない限り、米国は専制政治へと音を立てて転げ落ちるだろう。今、アメリカニズムを再認識しなければ、我々は米国民が謳歌してきた自由を蘇生させ守り抜くことができなくなってしまう」

 読み終えて感ずるのは、分裂国家化する米国の保守対リベラルの確執の深さだ。

筆者:高濱 賛

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