中国でいま最も売れている自動車メーカーはどこか

8月15日(水)6時12分 JBpress

中国・北京の道路

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 今年(2018年)上半期(1〜6月)における中国の自動車販売台数は、前年同期比5.6%増の1406.6万台となりました。このうち乗用車は同4.6%増の1177.5万台、商用車は同10.6%増の229.1万台でした。

 年初には、今年は市場飽和や生産能力改革などの要因からマイナス成長になるとの予測も出ていましたが、蓋を開けてみれば順調な市場拡大が続いています。中国の自動車市場では例年、上半期よりも下半期の方が販売台数も多くなることから、通年でもプラス成長を維持する可能性は高いでしょう。

 一方、つぶさにデータを見ると、これまで人気が高く販売台数も順調に伸びていたスポーツタイプ多目的車(SUV)の伸びが鈍化しています。また、同様に中国政府が力を入れている電気自動車(EV)も、新政策による影響が見られます。

 今回はこうした中国の自動車市場にまつわるさまざまなデータを集め、筆者個人の視点も入れつつ多角的な分析を行っていきたいと思います。なお文中、グラフ中において各中国自動車メーカー、ブランド名は略称で表示しています。


VW、GMの2強が上位に君臨

 下の表は中国における2017年6月以降の月間販売台数データです。2018年は2月に春節(旧正月)休暇が入ったという季節的要因からマイナス成長となったものの、それ以外の月は安定的にプラス成長で推移しています。

(* 配信先のサイトでこの記事をお読みの方はこちらで本記事の図表をご覧いただけます。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/53784)

 下の表は、2018年上半期の主要メーカー別販売台数です。6月の販売台数ランキング(左側)と1〜6月の販売台数ランキング(右側)を示しています。

 6月単月、上半期全体ともに、独フォルクスワーゲン(VW)系列の上汽大衆と一汽大衆が1、2位を占め、米ゼネラルモーターズ(GM)系列の上汽通用がそれに続く3位につけています。

 日系では日産系列の東風日産が6月に5位、上半期で6位と健闘しました。中国の民族ブランドの中では吉利汽車が両方で4位に入っています(各メーカーと外資系ブランドの提携関係については、本コラム「複雑な中国の自動車業界、提携関係を整理してみた」を参照ください)。


日産は好調が続くも、苦境にあえぐインフィニティ

 2018年上半期の日系自動車ブランドの販売台数のみをまとめたのが下の表です。メーカー別販売台数同様に日系としては日産がシェアトップで、2桁成長を遂げるなど躍進しています。

 この日産の躍進の背景にはセダン「シルフィ(軒逸)」の好調が大きく貢献しています。セダン販売台数で6月単月では首位、上半期を通してもVWの「ラヴィーダ(朗逸)」に次いで2位につくなど、熾烈な競争が繰り広げられている中国市場においてシルフィは高い人気を勝ち得ています(下の表:6月の販売台数ランキングと1〜6月の販売台数ランキングです)。

 その日産に続く日系2位のトヨタも販売台数を順調に伸ばしています。主力セダン「カローラ」は「シルフィ」に続く形で6月単月、上半期ともに3位となっています。またトヨタ系列の高級車ブランド「レクサス」は上半期において前年同期比14%成長を遂げるなど、輸入販売しか行っていないことを考えれば驚異的な伸び方をしています。

 そんな「レクサス」と同じ高級車ブランドでありながら対照的なのが、日産系列の「インフィニティ」です。中国で現地生産をしながらも販売台数は伸び悩んでおり、今期は9.9%減を喫するなど、日産本体の好調とは対照的な苦戦ぶりです。テコ入れのために無料メンテナンスサービスを繰り返しているものの販売増にはつながっておらず、現地メディアからも「ブランド力が致命的に不足」との指摘が出ています。


SUVブームにブレーキ

 続いて、車形(種類)別販売台数データを見ていきましょう。下の表は6月単月および1〜6月の中国における車形別の販売台数です。

 多目的車(MPV)はこれまでもずっと減少が続いており、もはやどのメディアもいちいち言及せずスルーしていますが、同期のSUV販売台数には大きな注目が集まりました。下のグラフは2009〜2018年のSUVの販売台数の推移です。

 これまで中国の自動車市場では世界市場同様にSUVの人気が高く、2009年以降は毎年数十%増という急成長を続けてきました。しかし2016年に45.4%成長を記録した後、翌2017年は13.3%増と大きく鈍化し、2018年も上半期累計では前年同期比9.7%増と一桁成長で、6月単月には前年同月比-0.52%と、わずかとはいえマイナス成長に転じてしまいました。

 なぜ、SUVは突然成長が鈍化したのでしょうか。筆者は、SUV市場の飽和に加え、単純にブーム沈静化により消費者の購買熱が下がってきていることが原因だとみています。年々成長が鈍化してきていることに加え、各メディアの取り上げ方をみても、中国消費者のSUVに対する見方が以前と比べると冷めてきているように思われます。従って、SUVは今後も成長鈍化、場合によってはマイナス成長が続くのではないでしょうか。

 この市場の変化は、すでにメーカーに直接的な影響を及ぼしています。これまでSUVブームに乗り、急成長を遂げていた民族ブランドの長城汽車でしたが、2018年上半期販売台数は前年同期比2.34%増の47.1万台と微増にとどまり、6月単月に至っては3.54%減の6.2万台とマイナスに落ち込みました。中国メーカーも日本メーカーも、今後もSUVへの依存が強いメーカーほどラインナップの底力が試されることとなるでしょう。


新エネ車は倍々成長も支援策が厳格化

 最後に、中国が世界をリードしている新エネルギー車(新エネ車)市場を取り上げます。

 2018年上半期における中国新エネ車の販売台数は前年同期比111.6%増の41.2万台となり、このうち電気自動車(EV)は同96%増の31.3万台、プラグインハイブリッド車(PHV)は同181.6%増の9.9万台でした。

 上のグラフは新エネルギー乗用車に限った販売台数推移をまとめたものです。中国政府の積極的な支援策も相まって、3〜5月にかけては前年同月比成長率が毎月100%超という倍々成長が続くなど、相変わらずの活況ぶりを見せています(1月は販売台数が少ないにもかかわらず前年比が突出しているのは、2017年は春節の休暇が1月だったのに対し2018年は2月だったからです)。

 ただ6月に入り、伸び幅は69.8%と急激に鈍化しました。これは、政府が政策転換したことが大きく影響しています。

 中国政府は今年2月、新エネ車に対する新たな支援策を公布しました。同新政策では、補助金支給条件がこれまでよりも厳格化されました。具体的には、基準を満たさない低性能な新エネ車に対しては補助金をゼロとし、逆に高性能な新エネ車にはこれまで以上の補助金を支給するなど、連続航続距離や車載電池性能を厳しく審査するようになりました。

 この政策は6月12日より施行されました。この影響から6月は伸び幅がやや鈍化したと考えられます。逆を言えば、それまでの数カ月間は、補助金支給対象外となる新エネ車が在庫処分されたことによって高い成長率となった可能性があります。

 この政策の影響により、今年下半期は上半期に比べ、新エネ車の販売台数成長率はやや鈍化すると予測されます。

 もっとも新エネ車のハイグレード化はさらに進み、メーカーの利益は増大が見込まれます。また、成長が鈍化するとはいえ、市場拡大はまだまだ続きます。今後も活発な市況が続くことは間違いないでしょう。


圧倒的勝者はまだいない

 下の表は、2018年上半期の中国国産EV乗用車の車種別販売台数をまとめたものです。

 上位には、北京汽車系列ブランドの北汽新能源やBYDなどの従来から存在感のあるメーカーの車種が入っています。一方で、上海汽車系列ブランドの上汽乗用車や奇瑞汽車も新規に食い込んできました。

 新興の、それも急拡大している市場とあって、圧倒的シェアを確保し、絶対勝者と呼ばれるようなブランドはまだ定まっていません。今後もこの順位は大きく変動する可能性が高いといえるでしょう。見ていて楽しい市況が続くことを保証して、今回の報告を終わりたいと思います。

筆者:花園 祐

JBpress

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