金銭感覚が「堅実」になってきた中国の新人類

8月16日(金)6時0分 JBpress

 現在30〜39歳の1980年代生まれの中国人は、金遣いが荒く給料は全て使い切ると言われていた。しかし最近の若い世代の間では、堅実に資産運用する風潮が高まっているという。中国の今どきの若者の金銭感覚を、中国・上海の投資コンサルティング会社に勤務する山田珠世氏がレポートする。(JBpress)


意外に堅実な新人類「90後」

 中国では長い間、1980年代生まれを意味する「80後(バーリンホウ)」が、“一人っ子政策の申し子”の代名詞とされてきた。「ワガママで打たれ弱い現代の若者」という烙印を押されてきた彼らも、すでに30〜39歳。80後が若者の域を超える歳になり、今では1990年代生まれの「90後(ジウリンホウ)」が新人類として語られるようになってきている。

 90後といえば、80後の特徴に加えて、後先を考えずにお金を使ってしまう「月光族」(月給を使い切ってしまう人々を指す)というイメージが強い。ところが、このほど発表された調査リポート「90後の貯蓄に関する報告書」によると、「毎月の給料は残す」と答えた人が92%に上り、意外にも堅実な一面があることが分かった。

 また、80%が「残った給料で資産運用している」と回答。90%が「理性的に消費する」「必要ないものは買わない」と回答するなど、90後の消費に対する世間のイメージを覆す結果となっている。


23歳から資産運用をスタート

 調査を行ったのは、中国新経済研究院と、電子商取引(EC)中国本土最大手、アリババグループ系の電子決済サービス「支付宝(アリペイ)」。リポートによると、90後が資産運用をスタートする年齢は23歳というから驚きだ。大部分の人が、就職後2年以内に資産運用を始めると答えており、この年齢は親の世代より丸10年早いという。

 同じくアリババ系の螞蟻金融服務集団(アント・フィナンシャル)が運営するMMF(マネー・マーケット・ファンド)「余額宝(ユエバオ)」の貯金額については、親世代より1カ月当たり平均1000元(約1万5000円)多いことも分かった。またユエバオ以外に、アリペイの中で親世代より2種類、2回それぞれ多く資産運用商品に投資している。

 このほか、アント・フィナンシャルが提供するオンライン消費者金融サービス「花唄(ホアベイ)」も積極的に利用しているようだ。一方で、ホアベイ利用者の80%超が、同時にユエバオを使って貯蓄していると回答。ユエバオでの1カ月当たりの貯金額はホアベイで支払った金額の4.5倍としており、貯金額が消費額を大きく上回っていることも明らかになっている。


背景には社会的プレッシャーも

 中国で90後と言えばほぼ一人っ子で、ITに強く、インターネットやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を使いこなし、電子決済サービスで買い物をするのが当たり前の世代。彼らの親世代とは生活習慣も社会環境もまったく異なるなかで生きる“新人類”だ。

 ただ、結婚する際に住宅を購入するのが一般的な中国で、不動産の高騰により「房奴(住宅ローンの奴隷)」になることすら難しい世代でもある。アパートの賃貸料が月給をゆうに超えるケースも少なくないほか、物価も高騰を続けており、一人暮らしもままならないといった厳しい現実と向き合っていかざるをえないのが90後。世間一般にある「月光族」のイメージの影で、資産運用しながらお金とうまく付き合っていく彼らの姿が、今回の調査で浮かび上がったとも言える。

 上海市に住む筆者の90後の友人は「90後は計画的にお金を使う」と断言する。彼女は90後の中でも、年齢が最も上の1990年生まれ。「友人の多くが株式投資や資産運用をしている」と話す。また、自分磨きのために投資をしている友人も多いといい、「90後はお金の運用の仕方やその概念をしっかりとらえている」と分析する。

 ただ前出のリポートで、上海社会科学院の何健華副院長は「90後はネット原住民。中国経済が伸びる時代に成長した世代でもあるため、消費や資産運用に触れる時期が親世代よりも早い。また、社会的なプレッシャーも大きく、早くから資産運用することで将来の生活のために準備している」と述べ、90後の堅実な一面には社会的背景があることを指摘している。


総資産のうち8割が不動産

 中国人の家計金融資産を見ると、現時点では資産運用をしている人は決して多くはない。

 広発銀行と西南財経大学が共同で実施した「2018年中国都市部家庭の財産に関するリポート」によると、中国の都市部家庭の「金融資産」に占める割合が最も大きいのは銀行預金(42.9%)であることが分かった。金融資産全体のうち5割弱が預金・現金である。一方、投資信託は13.4%と1.5割に満たない結果となっている。株式も8.1%にとどまるほか、基金に至っては3.2%だ(このほか、保険17%、貸付金10.3%、債券0.7%、外貨0.3%、金0.3%など)。

 ところが、ここには落とし穴がある。中国の都市部家庭の資産総額のうち「不動産」が77.7%を占め、「金融資産」は11.8%にとどまる。現在、中国の都市部家庭の資産の約8割は不動産なのだ。このことを考慮すると、資産総額のうち投資部分はさらに引き下げられることになる。

 ただし不動産が高騰するなか、今後、中国の若者が積極的に不動産を購入していくとは思えない。結婚しても住宅を購入できず、賃貸にする人が増えていく可能性は大いにある。10年後、20年後は、資産総額に不動産が占める割合は、今ほど高くなくなっているかもしれない。そのとき、お金を運用する人は今以上に増えていることだろう。


電子決済がハードルを下げる?

 なによりも中国では、スマホを使った電子決済サービスが普及していることが大きい。若者からお年寄りまで当たり前のようにスマホ決済を利用しているため、スマホを使いMMFにお金を投じることへのハードルが低い。お年寄りの中にはスマホを使えない人や「電子決済サービスは信用できない」と言う人もいるものの、それは高齢者のみにとどまるだろう。

 中国のメディアも「インターネットが金融商品を普及させている」と指摘する。資産運用の方法が多様化していることや、将来への不安感から中国人のお金に対する概念が変わってきていることを挙げ、「お金は自分の手の中に置いておくべきか、それとも投資すべきか」と問いかけている。

 そんなことを中国人の夫と話していると、夫も自分の小遣いは銀行口座に入れずに、ユエバオを利用しているという。スマホを見せてもらうと、1日単位で5%程度の利子がつき、それが目に見えて分かる仕組みになっている。夫は「こんな楽な方法を使わない手はない」と笑う。そんな夫を見て、リスクより利便性を取る人が多い中国では、資産運用をする人の割合はもっと増えていくだろうと確信した。

筆者:山田 珠世

JBpress

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