下り坂の中国自動車市場で日系メーカーが大躍進

8月19日(月)6時14分 JBpress

中国・上海の道路

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(花園 祐:中国在住ジャーナリスト)

 中国汽車工業協会によると、2018年上半期における中国での自動車の生産台数は前年比13.7%減の1213.2万台、販売台数は同12.4%減の1232.3万台となり、ともに2桁減を記録しました。

 単月販売台数は12カ月連続の前年同月比マイナスが続いています。2018年は、通年では28年ぶりとなるマイナス成長を喫しました。このままでは2019年も2年連続の市場縮小になると、市場からは既に諦めにも似た声が出ています。

 ただそうした逆風の中、日系メーカーの自動車は販売を伸ばし続けており、市場シェアもここに来て急拡大しています。背景には、輸入関税引き下げやハイブリッド(HV)車種の好調な売れ行き、在庫管理の優位などが指摘されています。


中国全体で消費が低迷

 乗用車市場信息聯席会(以下「乗聯会」)によると、2019年6月単月の乗用車販売台数は前年同月比8.1%減の1685万台でした。マイナス幅は前月までの2桁から1桁に縮小してはいるものの、単月のマイナス成長はこれで12カ月連続となりました(下のグラフ)。

 一部アナリストからは、「年後半にかけて巻き返す」「在庫消化段階は終わりを迎えつつある」などという意見も出ています。しかし米中貿易摩擦などの影響から、このところ自動車に限らず中国全体で消費の落ち込みが見られ、「これから巻き返せる」という意見はやはり楽観的過ぎると筆者には感じられます。


トヨタ、ホンダ系列メーカーが躍進

 メーカー別販売台数を見ていくと、上位は相変わらず独フォルクスワーゲン(VW、中国名「大衆」)、米ゼネラルモーターズ(GM、中国名「通用」)の系列メーカーが占めています。ただし、それら上位メーカーも販売台数が減少しています。

 一方、逆風の中で販売台数が急拡大しているのが、トヨタ、ホンダの系列メーカーです。特にトヨタ系列の広汽豊田は前年同期比21.9%増と販売台数を伸ばし、大幅に順位を上げました(下の表)。

 こうした日系メーカーの躍進は、中国乗用車市場における国別シェアにもはっきりと現れています。2019年上半期、日系のシェアは前年同期に比べ3.7ポイント増加の21.5%となり、トップのドイツ系シェアとの差を1.7ポイントまで縮めてきています(下のグラフ)。

 なお、米中貿易摩擦の影響か、米国系シェアは同1.1ポイント減の9.6%に落ち込みました。また、世界的にも不振の続くフランス系に至っては同1ポイント減の0.7%にまで縮小しています。


アコード、カムリが絶好調

 中国自動車市場全体が落ち込みを見せる中、どうして日系メーカーの販売台数が増加しているのでしょうか。

 中国ではいくつかの理由が指摘されています。まずトヨタ系に関しては、昨年(2018年)の輸入車に対する関税引き下げにより、中国で現地生産をしていないレクサスブランド車が高級車市場において大きな恩恵を受けました。レクサスブランドの2019年上半期における中国市場販売台数は前年同期比36.5%増の約9.4万台に達しており、成長著しい中国高級車市場の中でも際立った成長ぶりを見せています。

 また、輸入車関税引き下げによる恩恵のほか、日系メーカーの投入車種が好調に売れているという要因も挙げられます。

 東風日産の「シルフィ」は前年の勢いそのままに、今年上半期も車種別販売台数で「ラヴィーダ」を抑え首位の座を守りました。また広汽本田の「アコード」は前年同期比41.8%増、広汽豊田の「カムリ」は20.2%と中高級車が絶好調となっています(下の表)。

 特に「アコード」と「カムリ」の販売増に関しては、HVの燃費の良さが中国市場でも評価されるようになってきました。景気の低迷から中国人ユーザーも以前より燃費を意識するようになってきたと指摘されており、燃費で強みのある日系HV車の追い風となっています。

 ただ「アコード」に関しては、走行中に失速するという不具合から広汽本田は8月前半に約22万台のリコールを実施しました。販売が絶好調という矢先だったこともあり、中国メディアからも「非常に惜しい」との声が出ています。


柔軟な生産管理も日系メーカーの強み

 日系メーカーが躍進している背景として、製品自体の競争力のほか、生産管理方面の優位性も大きいとの指摘があります。

 ある業界関係者によると、「トヨタのカンバン方式をはじめ、日系メーカーの生産管理は市況の変動に合わせて非常に柔軟に行われる。ディーラーに必要以上の在庫を持たせないことも大きい」という見方が示されています。

 同関係者によると、ドイツ系や米国系メーカーは好況期に大量に生産し、ディーラーへ大量の在庫を持たせようとすることが多いそうです。そのため伸びる時は一気に伸びるのですが、不況期に入るとなかなか在庫を消化し切れなくなる傾向があります。それに対し日系メーカー各社はどこも在庫調整管理に長けています。ふだんから余計な在庫は持たず、不況期であっても工場稼働率や出荷台数を維持することで現在のようにプラス成長を維持できると分析されています。

 こうした見方を裏付けるようなデータも見られます。中国メディアの汽車之家によると、2019年の上半期自動車製造業の平均稼働率は前年同期比3.8ポイント減の77.2%でした。各ブランドの中国工場稼働率を見ると、GMが88%、VWが80%超であるのに対し、トヨタとホンダは市場が停滞するなかで100%を超えているとされ、東風本田に至っては140%近くにまで達していると報じられています。


「HV車」奨励がさらに追い風に?

 最後に、中国が国を挙げて普及させようとしている「新エネルギー車」の動向について触れます。

 中国汽車工業協会データによると、2019年上半期における中国の新エネルギー車販売台数は前年同期比49.6%増の61.7万台でした。自動車市場全体が落ち込む中では高い成長率ですが、2018年通年の61.7%増と比べると鈍化傾向が見られます。

 中国政府はかねてより、2020年における新エネルギー車の年間販売台数を200万台とする目標を掲げてきました。しかし前述の通り、2019年上半期の販売台数は61.7万台でした。下半期も同じペースを維持すると仮定した場合、2019年通年では約120万台程度に落ち着くことになります。この台数をベースとした場合、2020年に200万台を達成するのは現状の成長率ではやや厳しいと言わざるを得ません。

 こうした状況の中、にわかに色めき立ってきたのは、HV車市場です。

 これまで中国では、新エネルギー車には電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド(PHV)車しか認められてきませんでした。しかし前述の200万台という目標を達成するため、HV車も新エネルギー車のカテゴリーに加え、奨励策を適用することを中国政府が検討し始めていることが各所で報じられています。

 仮に実現した場合、HV車で強みを持つトヨタをはじめとする日系自動車メーカーはさらなる追い風を受けるはずです。日系メーカーは、厳しい市場環境の中でチャンスを逃さず、どれだけシェアを伸ばして次の好況期に望めるかが、今後の大きなポイントとなるでしょう。

筆者:花園 祐

JBpress

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