壁に血で「死のメッセージ」…制裁不況の北朝鮮で治安悪化

2019年8月20日(火)10時45分 デイリーNKジャパン


制裁不況にあえぐ北朝鮮内部から、治安悪化を伝える情報がもたらされている。


両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋によると、先月25日に金正淑(キムジョンスク)郡の龍河(リョンハ)労働者区で、商店を営んでいた老夫婦と孫娘の3人が、親戚に刺されて死亡する事件が起きた。犯人は遠い親戚の男だった。


この老夫婦は長年に渡り店を営み、それなりの財産を持っていた。それを知った親戚の男は、カネを奪う目的で犯行を計画した。


彼は事件当日、何食わぬ顔で店に入りビールを飲んでいたが、突如として3人に斬りかかり、カネを奪って逃げた。襲われた3人は現場で死亡したが、妻は最後の力を振り絞って「ダイイング・メッセージ」を残そうとした。血で犯人の名前を壁に書こうとしたが、「ソ」「ヨ」の2文字を書いたところで事切れた。


翌朝、店を訪れた老夫婦の息子の妻が遺体を発見し、すぐに保安署(警察署)に通報した。3人が殺されるという重大事件の発生を受け、保安署は大々的な捜査に乗り出した。


「夜に男が店に入っていくのを見たが、老夫婦は男が遠い親戚であることを知っていたため、気にしなかった」という目撃者の証言と、壁に残されたダイイング・メッセージを元に捜査を進めた。


捜査班がまず逮捕したのは、第一発見者の息子の妻だった。しかし後日、真犯人ソ・ヨンチョルが逮捕された。妻は潔白が証明され、晴れて自由の身となった。



一方、首都・平壌の郊外でも人質殺人事件が起きていた。


事件が起きたのは先月25日、船橋(ソンギョ)区域将忠洞(チャンチュンドン)でのことだ。


平壌の情報筋によると、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)工兵局1旅団3大隊所属のチェ(24歳)は、平壌と両江道の恵山(ヘサン)を行き来しつつ送金業を営んでいたキムさん(29歳)の店を利用していた。両親からの仕送りを受け取るためだ。食糧事情が極めて悪い朝鮮人民軍では、兵士と言えども親のすねをかじらなければ生きていけないのだ。


チェは、今年2月と5月に店を利用した際に、キムさんがかなりの財産を持っていることを知り、カネ目当てで犯行を計画した。


チェは犯行当日、送金を受け取るためにキムさんの家に向かった。カネを受け取ったがすぐに帰らず「水が1杯飲みたい」と伝え、家の台所に上がりこんだ。チェはそこにあった包丁を持ち、キムさんの生後6ヶ月の娘を人質に取り、「ありったけのカネを出せ」と脅した。


そして、キムさんとチェがもみ合いとなる中で娘が刺されて亡くなり、キムさんも怪我を負ったという。


当局は捜査に乗り出したが、チェは部隊から逃亡し、今月14日の事件でも逮捕できていない。人民保安省(警察庁)と軍の保衛司令部はチェを指名手配し、行方を追っている。

デイリーNKジャパン

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