「中国恒大」が経営危機、ついに来るのか中国の不動産バブル崩壊

8月27日(金)6時0分 JBpress

 俗に、「桐一葉落ちて天下の秋を知る」と言う。

 昨年1月に、中国の武漢でパンデミックが起こって以降、中国の官製メディアは、いかに官民挙げて経済復興を進めているかを「感動的に」伝えていた。当時、私が知りたかったのは、中国の正確な経済損失だったが、本当のところは、いつもの中国らしくブラックボックスだった。

 そんな中で、昨年2月半ば、「桐一葉」が落ちた。それは、中国の不動産最大手・恒大(Hengda)集団の「動向」だった。中国全土で販売中の住宅用マンションとオフィスビルを、2月18日から29日まで、一律25%引きにすると内部通知したのだ。さらに3月1日から31日までは、22%引きにすると決めた。


資金繰り悪化で資産投げ売り

 恒大集団は、2019年の売り上げが6010億元(約10兆2200億円)で、「2019年版 フォーチュン・グローバル500」で世界138位につけていた。当時の従業員は約14万人で、中国280都市で1300以上もの不動産プロジェクトを展開していた。

 恒大集団は、主力の恒大地産(不動産)の他にも、恒大物業(不動産管理)、恒騰網路(インターネット番組)、房車宝(中古不動産・中古車)、恒大童世界(テーマパーク)、恒大健康(ヘルスケア)、恒大氷泉(ミネラルウォーター)、それに450億元(約7700億円)を投資して創った恒大新能源汽車(新エネルギー車)を加え、8大企業から成っている。本社がある広州に、プロサッカーチームも保有し、2019年のCリーグ覇者となり、アジアクラブ選手権で鹿島アントラーズや浦和レッズと死闘を繰り広げた。

 そのような不動産業界の巨人でも、コロナ禍で、もはや背に腹は代えられなくなって「投げ売り」に走ったのである。この情報から、恒大集団はもとより、恒大に代表される中国の不動産業界、ひいては中国経済が、相当疲弊しつつあることが推測できた。


「マンションは住むもの、投機するものではない」

 そして、この「桐一葉」から一年半を経た現在、いよいよ恒大という「大樹」が、抜き差しならないことになってきたのだ。コロナ禍に加え、「マンションは住むものであって投機するものではない」という習近平主席の強い引き締め政策もあいまって、不動産バブル崩壊の兆しが出てきた。

 その「矢面」に立たされたのが、恒大である。今年年初の時点で、負債総額は8700億元(約14兆8000億円)にも膨れ上がっていた。

 そんな中、今年6月、深圳に建設中だった恒大都会広場の工事が、突然、ストップされた。資金繰りがつかなくなったためだった。

 続いて、8月2日、江蘇省の南通三建集団が、請け負っていた漯河恒大悦府の工事をストップした。翌3日、同じ江蘇省の鎮江句容紫東で始まっていた恒大文化旅游城住宅プロジェクトもストップした。

 12日には雲南省の昆明恒大の大型マンション開発プロジェクトである金碧天下二期隽翠苑と坤海湖の二つの工事がストップした。15日にも、江蘇省蘇州の太倉恒大文化旅遊城(テーマパーク)の工事がストップした。


危機脱出をアピールするも株価は大幅下落

 8月10日には、恒大集団が自ら、次のような発表を行った。

<わが社(中国恒大集団)は現在、まさにいくつかの潜在的に独立した第三者の投資者と接触中で、わが社の傘下にある一部の資産売却を模索しているところだ。上場している企業の関連企業に限らず売却を検討している。中国恒大新能源汽車集団及び恒大物業集団の一部の権益も含めてである>

 ついに、資産売却計画を自ら認めたのである。これは、巷間噂されている「恒大倒産説」を払拭する狙いがあるものと見られた。負債額は現在、5700億元(約9兆7000億円)まで圧縮した。8月25日現在の株式時価総額で、恒大集団が596億元、恒大物業が652億元、恒大汽車が713億元で、計1962億元(約3兆3400億円)を有しており、危機は克服できるというわけだ。

 だが、今年春以降の香港市場における恒大関連株の急落は、いかんともしがたいものがある。中国恒大は、16.2元(3月1日)から4.24元(8月26日)、恒大物業は19.7元(2月28日)から5.73元(8月26日)、恒大汽車は70.8元(4月30日)から5.25元(8月26日)へと、いずれも急落している。特に、起死回生の頼みの綱にしていた恒大汽車が、この約4カ月の間に、約93%も暴落しているのだ。


「広州の帝王」の退場

 8月17日、ついにグループの総帥として君臨してきた許家印(Xu Jiayin)董事長(会長)が辞職した。

 許董事長は、中国の経済界で立志伝中の人物である。1958年河南省生まれで、武漢科技大学卒業後、地元河南省の鉄鋼会社に就職。1990年代に入り、経済特区の深圳に出てきて、1996年に広州で恒大実業を創業し、中国最大の不動産会社に育て上げたのだ。

 2017年には、中国長者番付(胡潤百位富豪排行榜)で、総資産2900億元(約4兆9300億円)でトップに立った。アリババ創業者の馬雲(ジャック・マー)元CEOや、脱税騒ぎで世間を賑わせたトップ女優の范冰冰(ファン・ビンビン)ら、多彩な交友関係でも知られる。本人は「許教授」と呼ばれるのを好むが、「広州の帝王」と呼ばれていた。そんな中国実業界の巨星が、ついに身を引いたのである。

 それでも、上述の如く、株価の下落に歯止めがかからない。「倒産説」も、相変わらずくすぶっている。


経営危機の恒大は中国経済転落の「桐一葉」になるのか

 だが仮に、恒大が倒産した場合、中国社会におけるマイナスの影響は計り知れない。例えば、恒大は今年1月から7月までを見ても、計3847億元(約6兆5400億円)もの不動産収入を得ているのだ。相変わらず、中国の不動産業界でトップである。

 中国の報道によれば、2019年から今年7月まで、恒大は中国で564万人にマンションを売った。また、グループの関連企業なども含めると、380万人の従業員を抱えている。もしいま倒産したら、合わせて1000万人近い人々の生活に、多大な影響を及ぼすことになる。

 中国の不動産業界には、「金九銀十」という格言がある。「国慶節」(10月1日の建国記念日)の大型連休前の9月に、販売の黄金期を迎え、10月はそれに続くという意味だ。

 だが今年は、コロナ禍などで、すでに少なからぬ中小の不動産会社が潰れていることもあって、明るい声は聞かれない。この先、万が一、恒大が倒産することになれば、それが中国経済転落の「桐一葉」となるかもしれない。

筆者:近藤 大介

JBpress

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