北朝鮮のガス爆発事件、対応の遅れで地方トップが異例の謝罪

2020年9月2日(水)6時37分 デイリーNKジャパン

北朝鮮の地方トップが住民に対して頭を下げて謝罪する——少々のことでは起こりえないそんな光景が、北部の両江道(リャンガンド)で見られた。


事の発端は先月3日。恵山市内の中心部、塔城洞(タプソンドン)の民家で火災が発生、ガソリンやプロパンガスのボンベに引火し爆発した。しかし、消防車が出動しないまま燃え広がり、長屋1棟が全焼し、9人が亡くなる大惨事となった。


地元当局は当初、責任は火元の家に住んでいた国境警備隊の哨所長にあるとして、被災者に対して生活必需品の支給を除く、一切の補償は行わないとの姿勢を示していた。


ところが、現地のデイリーNK内部情報筋によると先月18日、朝鮮労働党の恵山市委員会の委員長、人民委員長(市長)、安全部長(警察署長)が現場を訪れ、被災者と近隣住民に対して、出動ができなかったこと、事故の収拾がまともにできなかったことに対して、腰を曲げて深々と謝罪した。また、責任者を処罰することも約束した。


結局、恵山市安全部の消防課長と消防隊長が解任、撤職(更迭)される処分を受けた。また、火元の哨所長は生活除隊(不名誉除隊)と、労働鍛錬刑(懲役刑)2年の処分を受けた。


2011年に平壌市の平川(ピョンチョン)区域で新築マンションが崩壊、住民450人から500人が犠牲になる大惨事が発生したが、崔富一(チェ・ブイル)人民保安部長(当時)ら幹部4人が住民に直接謝罪したことがある。金正恩氏の指示によるものだ。



金正恩氏は先月、黄海南道(ファンヘナムド)の洪水被災地を視察、支援物資を提供した。その後、朴奉珠(パク・ポンジュ)党副委員長、金徳訓(キム・ドックン)内閣総理も相次いで現地を訪れ、民生を重視する姿勢をアピールしているが、今回の謝罪もその一環と考えられる。


また、新型コロナウイルス対策として市場の閉鎖が命じられたが、商人らが集団で抗議し、命令を撤回させる事件が起きるなど、経済的苦境に国民の不満が高まっているが、今回の謝罪はそれに対する配慮とも考えられる。


地方トップの謝罪という異例の対応だが、市民の反応は今ひとつのようだ。


「火事が起きて通報は迅速に行われたのに、市の安全部(警察署)の消防車を動かすガソリンがなかった」(市民の声)


経済難という根本的な問題が解決しない限りは、いくら謝罪したところで事故は繰り返されるという嘆きの声だ。


当局は被災者に対して、「家は、キムジャン(年末に越冬用に大量のキムチを漬けること)までに完成させ、入居させる」と約束し、遺族には1世帯あたり8万北朝鮮ウォンを手渡し、被災者には毛布を配布したという。

デイリーNKジャパン

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