「もうダメだ。死ぬしかない」猛暑被害に北朝鮮国内から悲鳴

2018年9月5日(水)6時35分 デイリーNKジャパン

この夏の異常な猛暑により、北朝鮮の農業が壊滅的なダメージを受けている。両江道(リャンガンド)の情報筋は米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)に対し、「猛暑と日照りで、今年の農業はもうダメ。一部の農場では収穫高の予想すらつかず、上層部に報告できずにいる」と語っている。


数十万人が餓死したとされる1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」以降、北朝鮮の食糧事情は大きく改善してきた。


市場の食糧価格も、比較的安定している。しかしそれも、国内である程度の収穫が上がってこそ維持できているはずだ。都市の市場に出回る作物は、個人耕作地で栽培されたものが多いことから、凶作で品薄になれば価格が高騰してしまう。


またこの間、なし崩し的な市場経済化が進行する中で貧富の格差が拡大。外貨をため込んだ富裕層ならば、食糧不足にもかなりの程度まで対応できるだろうが、生計のため女性が売春に走らざるを得ないような貧困層は、たちまち大きなダメージを受けかねない。


前出の情報筋はRFAに対し、次のように語っている。


「協同農場の被害も問題だが、個人が国から借りている耕作地の被害も大きい。大部分の個人耕作地は保水力の弱い山の斜面にあり、被害がいっそう大きかった。農村の住民にとって、個人耕作地の収穫は命の綱だ。家族総出で、文字通り命がけで耕している。それなのに今年は、秋になっても収穫が期待できない。都市住民は市場で商売でもして食いつなげるが、農村には商売のできる環境がない。農業が壊滅すれば、飢え死にするしかない」


それでも、金正恩党委員長がすでに非核化の方針を打ち出していることは、不幸中の幸いと言える。最近の対話の流れもあり、仮に北朝鮮が大幅な食糧不足に陥っても、韓国がそれを黙って見過ごすことはないだろう。米国も、人道支援には反対しないはずだ。


一方、お先真っ暗な状況の中、北朝鮮の農村では世論が悪化しているという。「猛暑と日照りのダメージには目を向けず、9.9節(建国記念日)の準備にばかり関心を向けている中央当局に、怨嗟の声が上がっている」(情報筋)。


北朝鮮では、災害や事故における当局の対応が後手後手になり、または抜本的対策が講じられないために、被害を拡大させる例が繰り返されている。今回ばかりはそのようなことがないように願う。

デイリーNKジャパン

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