「殺されなくて良かった」金正恩氏の叱責受けた北朝鮮幹部ら安堵

2018年9月12日(水)6時55分 デイリーNKジャパン


「保健部門全般(の幹部たち)は、冬眠が長すぎる。冬眠する動物だって1年に1度、冬の眠りにつくだけなのに、保健部門は何年にもわたって冬眠をむさぼり、空しいスローガンだけを叫んでいる」


これは金正恩党委員長が、平安北道(ピョンアンブクト)の妙香山(ミョヒャンサン)医療器具工場を視察した際に、担当幹部らを厳しく叱責したときのセリフだ。


現地のデイリーNK内部情報筋は、叱責された幹部の反応を次のように伝えている。


「妙香山医療器具工場のイルクン(幹部)たちは、ひどいことを言われ続けたようで、(視察の)現場では頭を上げることすらできなかった」


そしてその後、叱責された幹部に処分が下されていたことが明らかになった。


朝鮮労働党の組織指導部は、視察の終了直後から妙香山医療器具工場に対して検閲(査察)を行い、問題把握に乗り出した。不正行為は発見されなかったものの、「党の下した方針に安易でダラけた姿勢で、個人の利己的利害だけを考え、国に大きな損失を与えた」と激しく批判した。


そして、保健省保健部長、工場の党書記、工場現代化を担当する技術部門の責任幹部の3人が解任され、追放処分となった。


追放というのは、都市部の勤め先のポストを奪われ、僻地の協同農場の閑職に追いやられるというものだ。運が良ければ数年で復帰できるが、下手をすれば文明とは切り離されたところで一生飼い殺しの憂き目に遭う。


それでもこの処分に対しては『最高指導者に叱責された割には軽い」との声が上がっている。


「皆が皆、銃殺されなかっただけでもマシだと言っている」(情報筋)


スッポンのエサやり、水の供給に問題があり、多くのスッポンを死なせたことで金正恩氏に厳しく叱責された「大同江スッポン養殖工場」の支配人は、銃殺の憂き目にあっている。




幹部連中を厳しく叱責する金正恩氏のやり方について、一般住民の評価は分かれる。


多くの人は「指示を下されるばかりでまともに給料もくれない、そんな幹部に何の罪があるのか」と金正恩氏はやりすぎだという評価を下しているが、地方政府の幹部の事なかれ主義や高圧的な態度に苦々しい思いを抱いていた人の間からは「(叱責と処罰は)必要だ」という声が上がっている。


また、技術開発が行われていない状況で、市場で中国製品と競争しなければならない現状に疑問を呈する人もいる。


「国営の工場、企業所は市場に商品を売らなければ回らないが、市場で売られているこの工場製の注射器や測定器は、中国製と比べて質が落ちる。そんな(技術がない)状態なのに、どうやって工場を現代化するのか」(情報筋)


その後、平安北道のすべての工場、企業所に対して、自己批判事業と生産工程の現代化に関する指針が下された。妙香山医療器具工場には9月にも新しい人材が送り込まれる予定だが、競争するだけの条件が整わない限りは、また金正恩氏の大目玉を食らうことになるかもしれない。その時は、追放だけでは済まないだろう。

デイリーNKジャパン

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