「選ばれし者」アルカイダの次期指導者はハムザ・ビンラディンで決まり?

9月13日(水)20時45分 ニューズウィーク日本版

<ウサマ・ビンラディンの20人以上いる子供のなかでもハムザは幼い頃からアルカイダのプロパガンダに登場し、今もイスラム聖戦運動の中で抜群の知名度と過激さを備えている>

9.11米同時多発テロ16年周年の前日、テロ組織アルカイダは自分たちがジハーディスト(聖戦士)として世界に名を轟かせた9.11当日に4つのメッセージを発表すると予告した。投稿されたメッセージの1つには、世界貿易センタービルに激突しようとする航空機のシルエットや、炎上するツインタワーの画像が載っていた。興味深いのは、そのツインタワーと重ねるように、2人の人物の姿が写っていたことだ。1人は9.11テロを指揮したアルカイダの指導者ウサマ・ビンラディン。もう1人はその息子、ハムザ・ビンラディンだ。

【参考記事】9.11から16年、アメリカの分断

現在20代後半のハムザは、幹部の高齢化が進むアルカイダの若き後継者だ。アルカイダは、テロ組織ISIS(自称イスラム国)がイラクとシリアにまたがるカリフ国家を樹立し勢いづいた間に存在感を失った。ハムザは今、父ビンラディンの威光を、強力なプロパガンダに利用している。ハムザの名前は、欧米社会でも、広い意味でのイスラム聖戦運動の中でも、抜群の認知度がある。

アメリカはすでにハムザを「国際テロリスト」に指定しているし、あるイギリスの政治家はハムザを「テロの皇太子」と呼んだ。アルカイダの最高指導者アイマン・アル・ザワヒリは2015年8月の音声メッセージで、ハムザを「アルカイダの獅子」と紹介した。ハムザはアルカイダのプロパガンダを一手に担いつつある。



9.11テロ16周年の日にアルカイダが公開したツインタワーにはビンラディン父子の姿が重なっていた AL-QAEDA MEDIA

表に出れば殺される身の上

アルカイダのプロパガンダ部門アズ・サナブは今年5月、「欧米の殉教志願者」に向けた「助言」と題したハムザの音声メッセージを、英語とアラビア語で公開した。ハムザは中東、とりわけシリアやイラク、アフガニスタン、ヨルダン川西岸やガザ地区で戦うイスラム教スンニ派を支援するためジハーディストが団結するよう呼び掛けた。

【参考記事】ベニスで「アラーは偉大なり!」と叫んだら射殺

「できるだけ多くの敵を殺害できるように、標的の選定を完璧にせよ」とハムザは言った。「武器の選択でプロ意識を持て。必ずしも軍用の武器を取る必要はない。銃を取れればそれでいい。それができなくても、他の選択肢はたくさんある」

アルカイダがハムザを貴重な後継者として守っていることを示すヒントは他にもある。アルカイダは成人後のハムザの容姿をまだ一度も公表していない。公表すれば敵軍の関心を呼び、命を狙われてしまうからだ。事実、ハムザの兄サード・ビンラディンは2009年に米軍がパキスタンで行った空爆で死亡し、義理の兄でアルカイダのナンバー2だったハイル・アル・マスリも今年アメリカ主導の有志連合がシリアで行った空爆で死亡した。

【参考記事】バルセロナで車暴走テロ、はねられて「宙に舞う」観光客



20人以上もいるビンラディンの子供のなかで、なぜハムザが後継者に担がれているのかは不明だが、ハムザはビンラディンのお気に入りだったという見方がある。ハムザの指導者としての資質もほとんど知られていないが、3年以上ISISに注目を奪われてきたアルカイダにしてみれば、ビンラディンの息子というだけで十分なようだ。

ハムザについてわかっているのは、子どもの頃にアルカイダのプロパガンダビデオに登場していたこと。幼少期は、スーダンとアフガニスタンで父と過ごしたことも分かっている。両国は、1990年代にサウジ国籍を剥奪された父ビンラディンの亡命先だった。ビンラディンは2011年にパキスタン北部アボタバードの潜伏先で米海軍特殊部隊に殺害されたが、幼少期を父親やその側近とともに過ごしたハムザは、父親の過激思想を継承しているようだ。

ザワヒリにはビンラディンやISISの最高指導者アブバクル・バグダディのようなオーラがなく、年老いたリーダーだというのが、欧米や若いジハーディストの間の評価だ。ザワヒリよりハムザの方が、ビンラディンの血を引くという理由だけで、欧米からより大きな注目を集めている。民間ウェブサイト、ロング・ウォー・ジャーナルによれば、ハムザは5月の声明で「ユダヤ人」と「十字軍」への攻撃を呼び掛け、アルカイダとその信奉者が優先すべき攻撃対象のリストも示した。

「ユダヤ人と十字軍を狙え」

ハムザは、ジハーディストの標的は「神聖なイスラム教や予言者ムハンマドに背く者すべて」であり、「そこら中のユダヤ人を狙え」と言った。もしユダヤ人が見つからなければ「アメリカの十字軍戦士」を攻撃しろとも言った。ハムザは声明で、ロシア(旧ソ連)が1980年代にアフガニスタンに侵攻したことを理由に挙げて、ロシアも攻撃するよう呼び掛けた。当時ムジャヒディンと呼ばれるイスラム聖戦士としてゲリラ戦に参加した父ビンラディンにとって、ロシアは侵略者であり敵国だったからだ。「ロシアに過去の清算をさせてやれ」とハムザは言った。

ハムザは、父の出身国であり9.11テロへの関与も疑われるサウジアラビアの王室も批判した。「我々の土地であるサウジアラビアはサウジ王室に占領されている」とハムザは言った。「サウジアラビア軍がアラビア半島とイスラム教徒に属するあらゆる土地から撤退するまで、サウジアラビアを攻撃し続ける」

今回アルカイダがハムザのメッセージを公表したのは、ISISが弱体化する隙を狙って、再び自分たちの存在感を取り戻すためだ。ISISはイラクやシリアの戦闘で次々に敗れ、かつての支配地域を大幅に失っている。



アルカイダ系の武装組織は今も世界各地で活動している。シリアの武装勢力「ヌスラ戦線」から改名した「ジャブハト・ファタハ・アルシャム」は、6年に及ぶシリア内戦で常に存在感を維持してきた。サハラ砂漠以南を拠点にするアルカイダの分派「イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ」やその分派も、北アフリカ地域の地元政府や住民に対するテロ攻撃を続けている。

ビンラディンがアメリカに消えない傷を与えた9.11テロから16年がたった今、息子のハムザは最高の立ち位置にいるように見える。理由の1つは、アルカイダが世界の舞台で復活を願っているからだ。アルカイダに詳しいアリ・スーファン元FBI捜査官は6月、本誌の記事にこう書いた。「アルカイダは攻撃を再開する手段も機会も手に入れた。ハムザはただ、機が熟すのを待っているだけだ」

アルカイダは近年、世界中で力を蓄えることを優先したせいか、ほとんど欧米でテロ事件を起こさなかった。それももうすぐ変わりそうだ。

(翻訳:河原里香)


ジャック・ムーア

ニューズウィーク日本版

「ビンラディン」をもっと詳しく

「ビンラディン」のニュース

トピックス

BIGLOBE
トップへ