北東アジア平和三大リスクは「北朝鮮問題、サイバー攻撃、米中対抗」―香港メディア
2024年9月15日(日)21時0分 Record China
香港メディアの亜洲週刊はこのほど、日本の言論NPOが東京都内で3日から4日まで開催した「アジア平和会議2024」を紹介する、毛峰東京支局長の署名入り記事を発表した。言論NPOは2001年に設立された、日本国内や国境を越えた課題の解決に世界やアジアの知識層とも連携し取り組む非営利のシンクタンクで、特定の利益に寄らず、独立した立場から国内外の課題解決の提案やそのための調査研究や議論を続けている。以下は亜洲週刊が発表した記事の主要部分を再構成したものだ。
今回のアジア平和会議は、内部討論と公開討論の2つの部分に分けられ、中国、日本、韓国、米国から外交や軍事に関するベテラン専門家も含めた15人が出席した。公開シンポジウムにはさらに100人以上が参加した。議長は言論NPOの工藤泰志氏代表理事が務めた。会議は北朝鮮の事実上の核兵器保有とミサイル発射の挑発行為、サイバー攻撃の日常化、米中対抗の深刻化が北東アジアの平和を脅かす三大リスクとした。
北京大学国際関係学院の賈慶国元学長は、現在の朝鮮半島の非核化情勢は極めて悪く、今後についても楽観することはできないと述べた。賈元学長は、北朝鮮の核問題解決の重要な側面の一つは、北朝鮮で日増しに高まる不安感の問題を解決することだと主張し、北朝鮮に圧力を強めるだけのやり方は現実的でなく、逆効果になるかもしれないとして「北朝鮮が追い詰められれば、何でも起こりうる」と論じた。ただし(北朝鮮に対して)単純に自制することは受動的すぎて、待っても問題は解決できないと指摘した。また、北朝鮮の核兵器開発を制止できなければ、韓国の核兵器開発、米国の韓国への核兵器配備、国際核不拡散メカニズムの終結だけでなく、他にも悪いことが起きると指摘した。
賈元院長は、朝鮮の核兵器問題を解決するための、より現実的で、より実務的で、より積極的な方法として「原則的な再接触」を提唱した。その方法とは、非核化を目標として包摂的な協力を手段とする大原則を堅持しつつ、朝鮮半島の非核化を引き続き推進することであり、賈元院長は、日中韓米の4カ国は北朝鮮と再び接触し、「行動をもって行動を引き起こす」ことにより、段階的に進めねばならないと主張した。
会議では、日米韓と中ロ朝が日増しに対立する局面は、両陣営が対立する新たな冷戦の危機との指摘があった。元中国軍事科学院米欧軍事研究室室長の樊高月大佐は同件について「近年になり、米国はインド太平洋戦略を推進しており、日本と韓国は米国のインド太平洋戦略を支持し、米国とともに軍事的に中国を包囲してきた」と指摘した。さらに「米国は米日、米韓二国間軍事同盟を米日韓三国間軍事同盟に転換し、北朝鮮とロシア、中国を抑止ししている。米国、日本、韓国の国防予算は再び史上最高値を更新し、北東アジア軍備競争を引き起こした。同時に、米国はインド太平洋経済の枠組みを推進し、中国を地域経済協力から排除し、科学技術の面で『小さな庭と高い壁』を構築し、中国の発展を阻害している」と述べた。また「北朝鮮とロシアは包括的戦略パートナーシップ条約を結んで事実上の軍事同盟を結ぶことで、日米韓三国の軍事同盟による抑止に対抗している」として、北東アジアは新たな冷戦構造が急速に形成されているように見えると論じた。
ただし樊大佐は、「北東アジアに新冷戦のリスクは存在するが、新冷戦は回避できる」との見方を示した。そのためには、北東アジア諸国は政治対話と軍事交流を通じて敵意を解消し、国民間の相互訪問交流を通じて相互理解と相互信頼を深め、既存の意思疎通のルートとメカニズムを活用して危機と摩擦が衝突と対決にエスカレートするのを防ぐために全力を尽くす必要があるとした。[樊高月氏]
今回のアジア平和会議は、米中の衝突が深刻化し続けていることに警戒を示し、米中両国の間に複雑な利害関係があると指摘し、米中関係を象徴する言葉としては「軍事上の対抗(Confrontation)」「政治上の競争(Competition)」「経済上の共存(Coexistence)」「世界的な問題での協力(Cooperation)」の4つのCがあるとの指摘もあった。出席した専門家は、利害関係がこれほど大きいため、中国と米国の間が全面的な強硬対決段階に入る可能性は低いと主張した。また、中国には自らの核心的利益にかかわる場合には譲歩を一切しないことも脅威論に拍車をかけているとの指摘もあった。一方で、米国には世界における指導的役割を果たす力が低下し続けているとの指摘があった。例えば、ロシア・ウクライナ戦争やガザ地区の戦火が止まないことについて、世界情勢における最大のリスクは戦争を制止する力の欠如との見方も披露された。
米戦略国際研究センター(CSIS)上級顧問であるクリストファー・ジョンストン日本部門主任は、現在の日米同盟の状況は非常に良好で、両国の指導者交代によって多少の変化があっても構造そのものは変わらず、中国や北朝鮮に対する日米両国の協力も同様と述べた。太平洋フォーラム上級顧問でもある多摩大学ルール作成戦略研究所のブラッド・グローザマン副所長は、日本は米国の強力なパートナーであり続けることで、日米同盟を変えたと述べた。オンラインで討論に参加した米上院軍事委員会のマーク・モンゴメリー元政策部長も、現在の日米同盟の強さを高く評価した。日本の西正典元防衛事務次官は、米国は日米同盟の重要性を十分に認識しているため、米大統領選の結果にかかわらず同盟強化の流れは続くとの見方を示した。(翻訳・編集/如月隼人)