【北朝鮮国民インタビュー】台風13号上陸で被害続出も国からの支援は皆無

9月17日(火)11時3分 デイリーNKジャパン


台風13号(レンレン)は、韓国の西海岸を北上し、7日午後2時30分ごろに北朝鮮の黄海南道(ファンヘナムド)海州(ヘジュ)付近に上陸した。


韓国では3人が亡くなり、24人が負傷、9400棟の建物が破損する被害が発生した。一方、北朝鮮の国営朝鮮中央通信は、北朝鮮では3人が亡くなり、3人が負傷、210余棟の住宅と15棟の公共施設が全壊または半壊したり浸水する被害が発生したなどと報じた。



デイリーNKは、今回の台風による詳しい被害状況を知るために、上陸地点の黄海南道の住民とのインタビューを行った。この住民は「この地域だけでも10人が亡くなり、全国的には死者がこれ(報道)よりはるかに多いだろう」と述べた。


また、「台風により建物が崩壊し、負傷者が多数発生したが、適時に治療を受けられず亡くなる人が徐々に増えている」とも述べた。


金正恩党委員長は、台風上陸前の6日に朝鮮労働党中央軍事委員会の非常拡大会議を緊急招集したと朝鮮中央通信が報じている。その席で金正恩氏は「党と政府の幹部から中央と地方の活動家に至るまでその深刻さを悟れず、安逸な認識にとらわれて無為無策で旧態依然とした態度を取っている」と叱責し、「被害をあらかじめ防ぐための闘いに全党、全軍、全民を総決起」させよと強調した。



しかし現地住民はデイリーNKに、台風による深刻な被害が発生し、被災地への支援は全くなされていない状況と語った。


ー金正恩党委員長が緊急会議を招集し、軍を中心に事前の備えを徹底せよとの指示を下したと伝えられているが、現地ではどのような措置が下されたのか?


「党から被害状況を把握し迅速に伝え緊急復旧を行えとの指示が下された。こちらの人々の間では異例のことだと囁かれている。しかし、被害を復旧せよと指示が下されただけで、復旧に必要な燃料、セメント、木材、鉄鋼材など物資の支援は皆無だ。早く復旧しろというが、何を持ってどうすればいいのか見当がつかない」


—現地では誰が中心になってどのような復旧作業が行われているのか?


「住民自らが勝手にやっている。それぞれがつるはしを抱えて通りに出て雨に流されたところを埋めたり、折れた木を片付けたりしている。その程度がやっとで、今すぐの再建は難しい。さらに、土砂崩れが起きるなどして被害が大きかった地域は、二次被害の懸念から人が近づけない状態だ」


ー土砂崩れが起きたのはどこ?


「松禾(ソンファ)郡とクァイル郡で土砂崩れが起きた。山の麓にあった家々が破壊された。農民たちは住む家を失ってしまった。そればかりか、それら地域は果物栽培が盛んだが、果物が風で落ちてしまった。お先真っ暗だと言っている」


ー穀倉地帯として知られる黄海道の被害が深刻だと伝わり、今年の農作物の収穫量が激減するとの話もでているが、現地での見方は?


「農作物の被害が相当大きい。黄海南道のほとんどの田んぼが海水に浸かるなど、塩水による被害が最も大きい。トウモロコシも皆なぎ倒された。それのみならず、協同農場の脱穀場は屋根がすべて飛ばされた。収穫までには復旧しなければならないのだが、何をどうすればいいのか、どこから手を付ければいいのかわからないと言っている。今年の収穫量には相当の影響が出るだろう」


ー他の被害は?


「農家の被害が大きいが、牛、ヤギ、ウサギなどの家畜も死んでしまった。さらには黄海南道の康翎(カンリョン)、海州、白川(ペチョン)、延安(ヨナン)の沿岸では、多くの養殖場が破壊された。また、康翎、夢金浦(モングムポ)、海州などでは、数百隻の船が破壊されるなど、目も当てられない有様だ」


今回の被害に限らず、日韓中の3カ国では軽い被害で済む気象災害が、北朝鮮では甚大な被害をもたらすケースが多発している。その多くが防災インフラの未整備によるものだ。既存のインフラも整備不足や老朽化によって効果がなく、被害を拡大させる大きな原因だ。


2016年に北東部を襲った台風10号(ライオンロック)では、脆弱な防災インフラに加え、予告なしで行われたダムの放水で、下流の村々が飲み込まれ、多数の死者が発生している。

デイリーNKジャパン

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