<世界半導体不足>自動車・電機産業を直撃=AI需要、米中対立背景—ファーウェイは制裁回避へ

9月20日(月)6時30分 Record China

半導体の世界的な不足の影響が、自動車メーカーが減産を迫られるなど多くの製品に波及。「AI」「巣ごもり」需要が膨らんだほか、米中対立でサプライチェーンが混乱したことも影響している。

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〝産業のコメ〟半導体の世界的な不足の影響が、自動車、エアコンなど多くの製品に波及している。コロナ感染を予防するためテレワークなど在宅勤務が増え、家電やパソコンなどの「AI」「巣ごもり」需要が膨らんだ。米中対立でサプライチェーンが混乱したことも影響している。

半導体商社によると、インターネットの通信量が拡大。データセンターの設備増強が相次いでおり、必要な半導体も不足している。「性能や種類に関係なく半導体は絶対量が足りない」という。半導体生産設備の早期の増強は困難視され、「在庫を増やしたくても増やせない」状態が続いているという。

  ◆日本国内新車販売、2カ月連続で減少

半導体の調達には完成品メーカー各社とも苦慮。自動車メーカーが減産を迫られるなど影響が広がっている。第5世代(5G)移動通信システムや人工知能(AI)などで利用が増加した上、新型コロナウイルス感染拡大を契機に、テレワークでのパソコン向けなども伸び、需給が逼迫している。

世界的な半導体の供給不足により8月の国内新車販売台数は前年同月比2・1%減の31万9697台で、2カ月連続のマイナスとなった。乗用車のブランド別では、スズキ、ホンダ、日産など5社が前年割れだった。マツダは7月に防府第1工場(山口県防府市)の稼働を止めたほか、8月にタイ工場を計10日間、メキシコ工場を計9日間、それぞれ稼働を停止した。トヨタも9月以降に半導体不足による生産調整が販売に影響したという。

21年の世界の車生産が半導体不足の影響で当初予想よりも700万〜900万台減少すると予想されている。21年通年ではコロナ禍に見舞われた20年とほぼ同程度の約7400万台にとどまる見込みで、車載向け半導体の供給が安定するのは早くて22年後半と見られている。

電機メーカーにも同様の影響が出ている。カシオ計算機では電子ピアノの生産に影響が出ており。三菱電機は家庭用エアコン用半導体の確保に苦労している。パソコン大手のレノボ・ジャパンでは、注文通りに納品できない機種も出ているという。

  ◆今年の世界半導体需要、2割増の58兆円

世界半導体市場統計によると、今年の半導体市場は5272億ドル(約58兆円)に上り、前年比19.7%増という高い伸びとなる見込みだ。2022年も8.8%増と予測しており、需給の逼迫が解消するのは早くても来年になるとの見方が多い。半導体メーカーは設備増強に動くが、そのために必要な装置を、半導体不足で十分つくれないという悪循環に陥っている。

半導体の性能は自動運転や高速通信といった次世代技術の競争力を左右する。このため米国、欧州、中国は数兆円を投じて企業の開発や生産を支援している。米中対立の深刻化によりサプライチェーンの一部が混乱、安全保障の観点からも安定調達が課題となっている。

深刻な半導体の供給不足を背景に、日本でも国内の半導体産業を支援しようという機運が広がっている。経済産業省は今年6月に「半導体戦略」をまとめた。自民党も半導体産業を復活させる議員グループを立ち上げ、政府と与党が一体となって、日本の半導体産業の振興を目指している。

日本は、スマートフォンなどに使う最先端半導体工場を海外から誘致する計画を推進している。これまで国内企業を集約させる「日の丸半導体」路線を展開してきたが、行き詰まったため政策を転換した。

◆台湾のTSMC工場誘致目指す

経済産業省が誘致を目指すのは台湾積体電路製造(TSMC)。TSMCは自社で設計や開発を行わず、米アップルなど他社から製造を請け負う業態に専念し、生産技術の改善に巨額の投資を続けて成長した。蓄積したノウハウで設計を支援するサービスも手がけ、顧客を増やした。世界最高水準の生産技術と収益力を誇り、誘致できれば関連産業への波及効果が期待できる。中台関係の緊迫化に備え、台湾に集積する半導体工場を分散させる思惑もある。

一方、製造装置メーカーにとっては追い風となっている。国内最大手の東京エレクトロンが16日発表した2021年4〜6月期連結決算は、最終(当期)利益が前年同期比77.8%増の1003億円となり、四半期ベースで過去最高だった。

日本の半導体は1980年代、世界市場の6割近くを占め「電子立国」を掲げる日本の象徴だった。その後、韓国や台湾の企業が急追し、今では日本のシェアは10%以下まで落ち込んでいる。衰退の理由とされるのは日本のメーカーの経営判断の甘さ。半導体ビジネスは不振のときでも我慢して投資を続けなければならないが、日本では総合電機メーカーが一部門の半導体に集中的に投資できなかった。

  ◆中国メーカー、急速に力つける

半導体を製造する技術では、TSMCと韓国のサムスン電子が圧倒的に強く、開発・設計の技術では米国に優れた企業が多い。

中国のメーカーも巨額の投資を受けて急速に力をつけている。中国企業は人工知能(AI)などを駆使した監視システムなどで最先端をリード。中国の華為技術(ファーウェイ)は世界の基地局市場で3割を握り拡大している。開発途上国で中国企業のシステムを採用する動きが広がる。

ファーウェイから独立したスマートフォンのブランド「オナー」が好調を維持。米政府の輸出規制の影響をかわす狙いで、ファーウェイはオナーを売却、2020年11月に中国地方政府の傘下企業に生まれ変わった。独立後に下落した国内シェアは新機種の積極投入などで今年春以降、急回復している。

ファーウェイは米国からの厳しい制裁にもかかわらず業績を順調に伸ばし、2021年上半期の決算によると、売上高は3204億元(約5兆4468億円)を確保。売上高純利益は9.8%で、前年同期比0.6ポイント上昇した。最新の米経済誌フォーチュンのフォーチュン・グローバル500では、ファーウェイは前年より5位上昇して44位になった。

米国政府は、米経済から中国を切り離し(デカップリング)、米国を「世界の製造業大国 」に復帰する計画を推進してきた。中国に拠点を持つ米企業に対し中国を放棄してアメリカに戻るよう求めたわけだが、在上海アメリカ商工会議所の調査によると、中国に拠点を置く米企業の70%以上が反対した。同会議所のケル・ギブス会頭は「世界最大の消費市場の中国で事業を継続するメリットは大きい」と述べている。

米国の対中デカップリングはクリスマス商戦を前にした米国内の物価高騰を招いたり、サプライチェーンの分断による混乱に繋がったりし、米国にブーメランのように跳ね返っている。このため米産業金融界はバイデン政権に対中政策の是正を要求している。

  ◆一帯一路・AIIB総動員、アフリカ、中東、南米にも迫る

中国はアジア、中南米、中東、アフリカを中心に勢力を広げている。広域経済圏構想「一帯一路」、アジアインフラ投資銀行(AIIB)、中国・ロシア・インドなど8カ国で構成する上海協力機構のほか、中東欧や南米など世界各地で多国間の枠組みができている。中国貿易統計によると、コロナ禍の下、アジア諸国連合(ASEAN)や欧州諸国との貿易額は着実に増加している。

さらにアフリカ、中東、南米諸国の多くがファーウェイに代表される、中国の安価で高性能のハイテク製品への依存を深めている。アフリカの4G基地局の7割はファーウェイ製で、5Gへの転用を考えれば脱ファーウェイは非現実的。ジンバブエやベネズエラ、イランなど60カ国以上が中国と契約し、AIを使った中国流の都市監視システムを導入する。

  ◆ソニーのセンサー素子、世界シェア5割

一方、日本は半導体の一種であるソニーグループの画像センサー素子が世界の市場でシェア4〜5割を占めている。電力を送ったり止めたりするパワー半導体も日本企業が強い分野だ。

重要なのは新しい技術と新しい需要の創造であり、材料や加工法など基礎的な研究開発の力が試される。従来想像もしなかった分野への半導体の活用が実現すると、需要は一気に拡大する。人工知能(AI)や仮想現実(VR)、電気自動車(EV)などの新分野が広がるにつれて、特定の企業のために少量生産する専用半導体の需要が増えそうだ。

Record China

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