韓国経済を追い詰めた最大要因は「最低賃金の29%引き上げ」

9月20日(金)7時0分 NEWSポストセブン

経済混乱が起きれば、日本へも影響は出る(写真/EPA=時事)

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 日本の輸出規制に対するWTOへの提訴、報復的経済制裁への言及、そして北朝鮮との協力に触れながら、「韓国経済は強い」と主張し続ける文在寅政権。だが、実際は「1997年の通貨危機の再来」と言われるほどの危機的状況に陥っていた。隣国に経済混乱が起きれば、日本も“対岸の火事”ではいられない──。


◆輸出額は9か月連続でマイナス


 数々の数字が韓国経済の危機を物語る。


 その象徴と言えるのが、売上高が韓国の国内総生産(GDP)の約15%を占めるサムスン電子の業績だ。


 同社の2019年4〜6月期の営業利益は6兆6000億ウォン(約6000億円)と前年同期比で半減。系列の上場企業16社の上半期(1〜6月)の営業利益も前年比52%減となった。2本柱であるスマホと半導体事業の不振が原因だという。


 韓国経済を牽引する“巨人”の失速は景気全体にも影響する。韓国はGDPの約40%を輸出が占めるが、8月の輸出額は前年比13.6%減、9か月連続で前年比マイナスが続いている。貿易黒字額は昨年8月の4分の1まで減少し、国内10大財閥の上半期の営業利益は前年比45%減に。


 元週刊東洋経済編集長で経済学博士の勝又壽良氏が語る。


「韓国政府は今年の経済成長率予測値を2.4〜2.5%と発表しましたが、海外の投資銀行や韓国の民間シンクタンクの予測値は1%台と乖離があり“政府の予測は甘すぎる”と指摘されている。過去に韓国の経済成長が2%を割り込んだのは、第二次石油ショックの1980年と通貨危機後の1998年、リーマンショック後の2009年の3回だけです」


 経済政策の要となる雇用状況も深刻だ。


「文在寅大統領は『8月の就業者は45万人増えた』とアピールしていますが、45万人の就業者のうち39万人は、公園の草取りや清掃などのため政府や自治体に雇われた60歳以上の高齢者だったことが明らかになった。一方で8月の製造業の就業者は2万4000人減少し、30〜40代の雇用も23か月連続で下落しています。また失業者が急増して失業給付の支給額が過去最高を更新したため、政府は雇用保険料を23%引き上げることを決めました」(勝又氏)


 輸出の減速と雇用悪化で先行きが見えない中、企業の「国外脱出」が顕在化しつつある。


 サムスンやLGといった財閥企業は、ベトナムや東南アジア、米国に次々と工場を建設しており、韓国政府の発表によれば、今年1〜3月期に国内企業が行なった海外直接投資は過去最高の141億ドルにのぼった。


 就任以来、文大統領は韓国経済の財閥依存からの脱却を掲げているが、10大財閥企業の売り上げがGDPの約4割を占める経済構造は変わっておらず、財閥の海外移転志向は韓国経済の空洞化に直結する深刻さを孕んでいる。


 業績悪化に苦しむ財閥は文政権に危機意識を高めており、その象徴と言える出来事が、日本が対韓輸出管理の強化を打ち出した直後の7月10日に起きていた。


 この日、文大統領は経済界のトップを集めた緊急会合を開いたが、サムスン電子の李在鎔(イ・ジェヨン)副会長、ロッテグループの辛東彬(シン・ドンビン=重光昭夫)会長らが「日本出張」を理由に欠席したのだ。


 そのタイミングであるかどうかは明示されていないが、『週刊ダイヤモンド』(9月21日号)は、来日した2人が、キヤノン会長で元経団連会長でもある御手洗冨士夫氏と面会していたことをスクープしている。韓国の大統領より日本の“元財界総理”との面会を重く見ていたのだとすれば、文政権の経済政策への不信感の強さを物語る。


◆自営業者100万人が廃業


 何がここまで韓国経済を追い詰めたのか。


 現地メディアでは日本の輸出規制をやり玉に上げるが、それ以前に文大統領の経済政策が原因だと前出の勝又氏は指摘する。


「最大の要因は最低賃金の大幅引き上げでしょう。労働組合や市民団体を支持基盤とする文政権は、この1年で最低賃金を29%引き上げた。この政策が企業の利益を圧迫して景気を停滞させ、失業者を増やした。韓国経済を下支えする自営業者は人件費の高騰に耐えられず、相次いで廃業に追い込まれました」


 韓国国税庁と小商工人連合会の統計によれば、2018年に廃業した自営業者は100万人を超え、過去5年で最悪となった。


 賃金引き上げによる韓国経済の不況は、1年前から予期されていたという。勝又氏が続ける。


「生産や雇用など様々な経済活動の動きを示す景気動向の指数を見ると、昨年10月から景気は下り坂だった。検査でがんの影が見えているのに放置していたようなものだと言わざるを得ません」


 韓国の消費者物価指数も今年に入って前年比0%台で推移していた。


「8月の消費者物価は統計開始以来初となる前年比マイナスを記録しました。不況の予兆があったにもかかわらず、文政権は効果的な対策をしてこなかったといえる」(同前)


 7月以降、ソウル中心部では「文在寅退陣デモ」がたびたび開かれ、日本製品不買運動をはるかに超える、数十万人規模(発表)の参加者を集めた。


 韓国紙でも文政権批判の論調が目立ち始め、


〈(韓国経済への)解決策を提示せず国民の反日感情に火を付ける政権〉(朝鮮日報)

〈外交を怠り、雇用を守ることができない政府〉(中央日報)


 といった論調が展開されている。


※週刊ポスト2019年10月4日号

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