日本と韓国 WTOを舞台とする争いの現在地

9月20日(金)7時0分 NEWSポストセブン

近年は貿易問題での日韓対立も目立っている(AFP=時事)

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 韓国政府は9月11日、「日本の半導体材料の輸出規制強化は不当」として世界貿易機関(WTO)に提訴した。このところ日本のメディアでは、「WTO」という言葉が日韓関係に絡んで頻繁に登場するようになっている。


 奇しくも同日、日本製産業用バルブに対する韓国の反ダンピング(不当廉売)課税は不当として日本政府がWTOに提訴した件で、WTO上級委員会(2審にあたる)は韓国側の協定違反を認定し、是正勧告を出した。


 この問題では日本が勝訴したと思いきや、韓国産業通商資源部が「韓国が最終的に大部分で勝訴した」と発表したため、日韓のメディアでちょっとした騒動になった。本当はどっちが勝ったのか。貿易問題に詳しい高橋洋一・嘉悦大教授はこう断言する。


「反ダンピング課税の是正を求めて提訴し、是正勧告の判決が出たのだから、部分的に韓国の主張が認められようとも、日本の勝ちであることは間違いありません」


 しかし、韓国が今後、WTOの是正勧告に従わない可能性もあるのではないか。


「15か月以内に勧告に従わず是正しない場合、(日本側が)対抗措置をとることが認められています。どんな措置をとるかはそのとき考えればいいことです」(高橋教授)


 韓国が反ダンピング課税を是正せず、日本が対抗措置をとったら、それを受けた韓国側が「元徴用工問題に対する報復だ」と再び言い出す可能性は十分にある。


 今年4月、福島県など東日本の8県産水産物に対する、放射能汚染を理由とする韓国の禁輸措置が非科学的であるとWTOに訴えていた件では、日本が敗訴したことは記憶に新しい。が、実は他にも日韓間でWTOを舞台に争う案件がある。


 韓国は2004年から、自動車や半導体製造設備の部品に使う日本製ステンレス棒鋼に約15%の反ダンピング課税をかけている。日本政府は韓国の措置を不当として、2018年6月にWTOに提訴した。日本経済新聞(2018年6月18日付)によると、対象製品の韓国市場でのシェアは、2002年の51%から2016年には13%にまで激減したという。


 さらに2018年11月14日に日本政府は、韓国政府が自国の造船会社に対し過剰な金融支援を行っているとして、WTOに提訴した。韓国は2015年に造船会社の大宇造船海洋に対し約1兆2000億円にも及ぶ公的支援を実施し、海運会社にも船舶の購入を支援してきた。過剰な公的支援によって、韓国の造船会社は採算が取れないような安い価格で受注が可能になり、市場を歪め、公正な競争を阻害してきたというのが日本側の主張である。


 韓国造船業のダンピングは長年にわたって日本の造船業界内で不満がくすぶり続けてきた問題で、過去においては欧州委員会も韓国をWTOに提訴し、一部違反とする判決が出ているが、日本もようやくここにきて提訴した格好だ。


 今回の半導体材料の輸出規制強化に関する提訴は韓国側からだが、それ以外はすべて日本側からの提訴である。しかし、ここ数年の間にWTOへの提訴がこれほど頻発しているのはなぜか。国際政治学者の六辻彰二氏はこう解説する。


「背景に元徴用工訴訟があるのは間違いありません。今までは、日韓でくすぶる問題があっても、日米韓の同盟関係があるので穏便に処理しようとしてきましたが、元徴用工訴訟を契機に政府は方針を変えたということです。


 たとえば、竹島問題については、日本は国際司法裁判所に提訴しようとしていますが、両国が合意しないと裁判にならないのに対し、WTOの場合は2国間での協議が決裂すれば、否が応でもWTOによる審理にかけられます。だから、使い勝手が良く、それでWTO提訴が続いているのです。日本側としては、韓国の不公正さを国際社会にアピールするのが狙いと考えられます」


 日本産水産物の禁輸問題では、日本の水産物が放射能で汚染されているかのような誤ったイメージが広がってしまう懸念が指摘された。WTOの裁定は、貿易面に限らず国のイメージを左右する可能性がある。今後も論理的な主張を積み重ね、勝訴が続くことを期待したい。


●取材・文/清水典之(フリーライター)

NEWSポストセブン

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