コロナ禍の中で露呈した国連の“役立たず”ぶり

9月22日(火)6時0分 JBpress

(平井 和也:翻訳者、海外ニュースライター)

 世界は依然として新型コロナウイルスの脅威にさらされているが、このような緊急事態の中で、国連(国際連合)は一体なにをしているのだろうか?

 米国の超党派組織「外交問題評議会(CFR)」のリチャード・ハース会長(前国務省政策企画局長)が9月10日に、「プロジェクトシンジケート(Project Syndicate)」(チェコ・プラハに本拠を置く論壇サイト)に「国連の不幸な誕生日(The UN’s Unhappy Birthday)」と題する論考を発表した。

 ハース会長の国連の活動に対する評価は手厳しい。以下にその概要を紹介したい。


緊急時に役割を果たせないことが明らかに

 ハース氏は論考の中で、創設から75周年をむかえた国連だが、今年(2020年)は新型コロナウイルスの影響で世界の指導者たちがニューヨークの国連本部に集まって総会を開催することができず、今や国連は、世界が緊急に必要としている国際的な協調を組織・管理する能力のない組織であることがコロナによって露呈した、と述べている。

「国連は、“国際的な平和と安全を維持し”“国家間の友好関係を発展させ”“国際的な問題を解決するために国際的な協調を達成する”という目標から大きくかけ離れている」

「国連の最も重要な機関である安全保障理事会は、ほとんど役に立たないことを露呈している。中国は、コロナ発生に対する初動のミスに対する責任を問われるのを避けるために、国連の執行機関が重要な役割を果たすことを妨害している。一方、世界保健機関(WHO)は当初から中国に従う動きを示し、米国が脱退する決定を下したことで、さらなる弱体化を見せている」


冷戦中も冷戦後も機能不全

 実は、このようなことは今に始まったことではない。ハース氏は冷戦中の国連をめぐる状況について次のように述べる。

「冷戦中の40年間、国連は米ソ対立の舞台だった。冷戦が熱戦に発展しなかったのは、国連が役割を果たしたからではなく、核抑止と、米ソ両国に強い警戒を強いた勢力均衡ゆえのものだった。朝鮮戦争に際して国連が国際的な平和を維持するために介入することができたのは、ソ連がボイコットしたからだ」

 では、冷戦の終結によって国連は生まれ変わったのか。決してそんなことはなかった。

「冷戦後になると、国連がより大きな役割を果たすことができるのではないかという期待が高まり、1990年にイラクのサダム・フセインによるクウェート支配を覆すために世界各国が国連に集結した時には、楽観主義者の正当性が立証されたかに見えた。しかし、後になって湾岸戦争は例外だったということが明らかになった。それは冷戦終結直後の出来事であり、米国と中ソの関係が相対的に改善されていた。その時の米軍主導による連合軍の目標は、イラクの体制転換ではなく、クウェートからイラク軍を追い出し、同国の原状を回復するという限定的なものだった」

「しかし、その後、大国間関係は急激に悪化し、国連は役に立たないものになっていった。ロシアはバルカン半島での流血の惨事をくい止めるための一体化した行動を阻止した。国際的な支援がない中で、当時の米国のブッシュ政権は国連を無視して、2003年にイラク戦争へと突入していった。また、ロシアが2014年にクリミアを不法併合した際には、同国の反対によって、いかなる国連の行動も不可能になった。

 また、国連は1994年にルワンダの大量虐殺を阻止することもできなかった。その10年後に国連総会は、二度と同じことを繰り返してはならないと誓い、一国の政府が自国民を大規模な暴力から守ることができない時、世界には事態に介入する責任があると宣言した」

「ところが、この方針はほとんど無視されてきた。シリアとイエメンで数十万人もの市民に死者を出す恐ろしい紛争を前にして、世界はただ手をこまねいているだけだ。2011年にリビアでこの方針が実際に発動された例があるものの、NATO主導の連合軍が既存の政府を排除した後、事態をフォローせず、力の空白を作り出しただけだった」


国連の構造的な問題点とは

 ハース氏は、国連の構造的な問題点を次のように指摘する。

「国連は全体的に大国同士が対立し、加盟国が行動の自由を引き渡そうとしないために、期待を裏切っている。また、能力以外の理由や、説明責任の欠如、偽善によって過剰に多くの人々を重要な地位に据える猟官制という欠点もある」

「安保理の構成を変更して、今日の世界の力の配分を反映させる変革は考えられるが、そうなると、一部の国が有利になり、また一部の国は不利になるため、国連の大規模な改革は現実的ではない。一方、国連の構造の中で最も『民主的』な総会は実効性に欠け、あらゆる国が国土の大きさや人口、富、軍事力に関係なく1票を有している限り、無力な存在と化している」

 ハース氏は本論考を次のように締めくくっている。

「国際的な協調の必要性が大きい状況の中で、これは危機と言える。私たちは、大国間対立の再来に加えて、パンデミックや気候変動、核の拡散、テロなど一国では答えが出ない地球規模の問題に直面しているからだ」

 以上見てきたように、ハース氏は冷戦期までさかのぼりながら、今日の国連が抱えている様々な問題点を指摘し、悲観的な見方を示している。コロナ禍という地球規模の緊急事態が起きているにもかかわらず無力な組織と化している国連の存在意義が問われているのではないだろうか。

筆者:平井 和也

JBpress

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