「自動車」に沸き立つ韓国人投資家

9月24日(木)6時0分 JBpress

韓国人は投資先としても自動車が大好きなようだ。最も人気があるのが米テスラだという

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 韓国メディアの経済ニュースを見ていると、本当に多いのが「自動車」関連のニュースだ。

 新型コロナウイルスの世界的な流行とともに急速に増えた気がする。

 この半年、韓国の証券市場で株価の急騰が続いたが、その主役を占めているのも半導体と並んで「自動車」だ。

 2020年9月23日、午前5時半開始のユーチューブの生放送を韓国で3万人以上が視聴したと韓国メディアが伝えた。


早朝に3万人が視聴

 米国の電気自動車メーカー、テスラが株主総会後に米カリフォルニア州フリーモントで開催した「テスラバッテリーデイ」の中継だった。

 韓国の産業界関係者や個人投資家の間で「テスラが画期的なバッテリーを発表するのか」に大きな関心が集まっていたからだ。

 韓国では、「自動車」に関する関心が本当に高い。

 2020年9月に入っても、「自動車」の記事は本当に多い。それだけ読者の関心が高いのだが、どうしてこんなに高いのか。

 証券市場で「自動車」関連株が大人気なのだ。

 韓国では2月から3月にかけて南東部の大邱(テグ)で新型コロナの感染者が急増し、この間、外国人や機関投資家が韓国株を大量に売りに出した。

 総合株価指数(コスピ)も急落し、1月2日に2175だったコスピは3月19日に1457になった。

 ところが、この頃から個人投資家が猛烈な「買い」に入った。外国人や機関投資家の「売り」に対抗して果敢に「買い」に走った。


LG化学に個人投資家の人気集中

 個人投資家パワーはすさまじく、サムスン電子やSKハイニックスなどの半導体株などは反騰した。こうした銘柄の中で、特に株価を上昇させたのがLG化学だった。

 韓国を代表する総合化学メーカー。化学業界全体の株価が低迷する中でLG化学の株価は急騰を続けた。

 3月19日に23万ウォンだった株価は8月27日には78万5000ウォンに跳ね上がった。

 その理由は、LG化学が世界最大の自動車用バッテリーメーカーだからだ。

 半導体に続く次の成長分野は何か?

 韓国の産業界にとっても投資家にとっても最大のテーマだ。

 AI、医療、ロボット・・・有望分野は多いが、その中でも、自動車用バッテリーは政府をあげて育成強化に取り組んでいる分野だ。

 LG化学という財閥企業でもある。

 投資家にとって分かりやすい銘柄で人気が人気を呼んだのだ。

 韓国メディアによると、3月19日からの6か月間でLG化学は、サムスン電子やSKハイニックスなどよりも株価が急騰した。

 韓国で企業幹部や30代、40代のサラリーマンと会うとここ半年間、新型コロナと並んで「株式投資」が話題になることが本当に多い。

 6月以降は、LG化学について様々な話を聞いた。みんなやたら詳しいのは、それだけニュースになっていたからだ。


アップル、アマゾンを抑えてテスラが1位

 韓国の個人投資家は大胆だ。

 海外企業の株式投資にも積極的だ。「毎日経済新聞」によると、2020年になって9月16日までの間に韓国の個人投資家が買い越した外国企業の銘柄のランキングを見てびっくりした。

 1位がテスラだったのだ。2位アップル、3位アマゾン、4位エヌビディアを抑えて圧倒的1位。21億9700万ドルを買い越した。

 LG化学とテスラ。韓国の個人投資家がいかに「自動車」それも親環境車に関心を持っているかが分かる。

 ところが、9月に入って、異変が起きている。

 まず、LG化学の株価が下がってきたのだ。

 9月15日に72万6000ウォンだった株価が、16日に68万7000ウォンに下落、21日には62万7000ウォンになってしまった。1週間で10万ウォンも下がったのだ。

 9月16日午後2時、LG化学は、自動車用バッテリー事業の分割計画を明らかにしたのだ。

 LG化学は9月17日に会社分割を理事会(取締役会に相当)で決議した。10月3日に株主総会を開いてこれを承認し、12月1日に新会社「LGエネルギーソリューション」を設立する。

 LG化学は分割して設立する新会社の株式を当面100%保有するが、韓国メディアは「いずれ新規株式公開(IPO)して資金を調達する」と予測している。

 総合化学メーカーであるLG化学にとって自動車用バッテリー事業は有望な新規事業だったが、一方で、巨額の投資が必要でなかなか黒字化しなかった。

 2020年4〜6月期に1555億ウォンの営業黒字を計上し、初めて黒字転換した。これを機に新会社を設立し機動的に資金調達をしようとの狙いのようだ。

 ところが、個人投資家は黙っていない。


分割反対!青瓦台に相次ぐ請願

 もともとこの半年間、個人投資家は「化学会社」としてではなく「自動車用バッテリー会社」としてのLG化学に投資してきた。

 成長分野の切り出しに、反発と戸惑いの声が強まり、一部株主が「売り」に転じたのだ。

 その結果の株価下落で、「1日で300万ウォンの損が出た」などの声を韓国メディアは報じている。

 分割説は前からあり、これを察して先に動いていた機関投資がいたことから一部個人投資家はさらに怒っている面もある。

「会社分割による個人投資家の被害を防いでください」

 2020年9月17日、青瓦台(大統領府)が開設している「国民からの請願」にこんな書き込みがあった。23日現在で8000人以上がこれに「同調」している。

 民間企業の事業戦略上の決定を青瓦台に請願するのは本来はおかしな話ではある。

 それでも個人投資家が請願したのは、政府がこの間、自動車用バッテリーを戦略分野として何度も言及してきかからだ。

 例えば、韓国版ニューディール政策の目玉にも自動車用バッテリーが入っている。

 それだけではない、文在寅(ムン・ジェイン=1953年生)大統領もじきじき乗り出して売り込んだ、ニューディールファンド。

 韓国取引所(KRX)は、投資先の指数として「KRX BBIG」を作った。

 バッテリー、バイオ、インターネット、ゲームの略だが、この指数に組み込んだ12銘柄にLG化学も入っているのだ。

 個人投資家からすれば、政府肝いりの投資先だ、と言いたくなるのだろう。

 この請願の文章はなかなか辛らつだ。

「不動産投機ではなく健全な投資のために株式投資を政府は支持していると言います。しかし、企業がこんな決定を続けるのならばどうして投資を続けられますか」

 そのうえで「LG製品に対する不買運動も考えている」と述べている。

 この請願の5日後には、「LG化学法の制定」を求める書き込みもあった。

「17日の請願についてLG化学も政府も何も対応していない」ことに不満の声を上げ、再発防止のための規制法を制定してほしいという内容だった。


ニコラショック、現代自動車人気再燃

 韓国の個人投資家は、LG化学ショックのあと、もう一つのショックに見舞われた。「ニコラショック」だ。

 米国の電気、水素トラックメーカーのニコラは1台の車も生産していないが証券市場で人気銘柄となっていた。

 先の韓国の個人投資家が買い越した外国株の上位ランキングにも堂々と10位に名前を連ねている。

 韓国の財閥、ハンファグループもニコラに出資している。

 米国内で、ニコラに対する疑惑が浮上し、創業者が急遽退任したことで、ニコラやその株主であるハンファグループ企業株に投資していた個人投資家もパニックに陥った。

 そんな中で株価が反転してきたのが現代自動車グループだ。

 世界的な新型コロナの流行で、現代自動車グループの業績も低迷し、3月19日には、12社あるグループ上場企業の時価総額の合計は、45兆2621億ウォンになっていた。

 ところが、9月21日には100兆404億ウォンにまで跳ね上がった。100兆ウォンを超えたのは2018年5月14日以来のことだ。

 現代自動車の業績が徐々に回復していることに加え、水素トラックや電気自動車など親環境型自動車への取り込みが評価を得ている。

 カネ余りで証券市場が沸き立つなか、話題先行ではあるが、韓国の個人投資家たちにとって、半導体に続く有望分野の一つは、やはり「自動車」なのだ。

筆者:玉置 直司

JBpress

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