北朝鮮、貯水池から戦術核の発射訓練「水中発射場を建設方針」

2022年10月10日(月)11時37分 デイリーNKジャパン

北朝鮮は朝鮮労働党の創建77周年を迎えた10日、主要メディアを通じ、朝鮮人民軍戦術核運用部隊の軍事訓練が9月25日から10月9日まで、金正恩総書記の立ち合いの下に行われたと明らかにした。


日本上空通過は「新型の中・長距離弾」


朝鮮中央通信は軍事訓練について「戦争抑止力と核反撃能力を検証、判定し、敵に厳重な警告を送るため」のものだとし、また、「米海軍の空母とイージス駆逐艦、原潜をはじめ、連合軍の大規模海上戦力が朝鮮半島水域で危険な軍事演習を行っている時期に行われた」と言及。


党中央軍事委員会が9月下旬、「朝鮮半島の現在の政治的・軍事的情勢と展望を討議し、わが国家の戦争抑止力の信頼性と戦闘力を検証および向上させ、敵に強力な軍事的対応の警告を送るために相異なる水準の実践化された軍事訓練を手配し、行うことを決定した」と伝えた。


北朝鮮はこの間、7回にわたり弾道ミサイルを発射したことが日韓防衛当局などに確認されていたが、同国メディアによる情報公開はなかった。


同通信が今回明らかにしたところによると、9月25日未明には「北西部の貯水池水中発射場で戦術核弾頭の搭載を模擬した弾道ミサイル発射訓練が行われた」という。同通信は、貯水池の水中から、「北朝鮮版イスカンデル」と呼ばれる地上発射型の短距離弾道ミサイルKN23の改良型と見られるミサイルが発射された場面の写真も公開した。韓国では「ミニSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)」などと呼ばれている。


同通信によれば、「訓練の目的は、戦術核弾頭の搬出および運搬、作戦時の迅速で安全な運用・取り扱いの秩序を確定し、全般的運用システムの信頼性を検証および熟達する一方、水中発射場での弾道ミサイル発射能力を熟練させ、迅速反応態勢を検閲すること」にあったとし、ミサイルは「予定された軌道に沿って朝鮮東海上の設定標的上空へ飛行し、設定された高度で正確な弾頭起爆の信頼性が検証された」としている。


一方、「実戦の訓練を通じて計画された貯水池水中発射場の建設方向が実証された」ともしており、北朝鮮は今後、複数の貯水池を弾道ミサイルの発射基地化する可能性がある。


9月28日には、「南朝鮮作戦地帯内の各飛行場を無力化させる目的で行われた戦術核弾頭の搭載を模擬した弾道ミサイル発射訓練でも核弾頭の運用に関連する全般システムの安定性を検証した」とし、9月29日と10月1日には「複数の種類の戦術弾道ミサイル発射訓練でも当該の設定標的を上空爆発と直接精密および散布弾打撃の配合で命中することで、われわれの兵器システムの正確性と威力を実証した」という。


日本の上空を通過した今月4日の発射については、「党中央軍事委員会は持続する朝鮮半島の不安定な情勢に対処して、敵により強力で明白な警告を送ることに関する決定を採択し、新型地対地中・長距離弾道ミサイルで日本列島を横切って4500キロ界線の太平洋上の設定された標的水域を打撃するようにした」と説明。公開された写真を見る限り、「新型」とされたのは過去にも発射された「火星12」の改良型と見られる。


「対話の内容も必要性もない」正恩氏


同通信は続けて、「10月6日未明、敵の主要軍事指揮施設打撃を模擬して機能性戦闘部の威力を検証するための超大型ロケット砲と戦術弾道ミサイル命中打撃訓練が行われたし、9日未明、敵の主要港湾打撃を模擬した超大型ロケット砲射撃訓練が行われた」と明らかにした。


同通信は「7回にわたって行われた戦術核運用部隊の発射訓練を通じて、目的とする時間に、目的とする場所で、目的とする対象を目的とするほど打撃、掃滅できるように完全な準備態勢にあるわが国家の核戦闘武力の現実性と戦闘的効率、実戦能力があまねく発揮された」と成果を誇示した。


訓練を現地で指導した金正恩氏は「訓練を通じて、任意の戦術核運用部隊にも戦争抑止と戦争主導権獲得のごく重い軍事的任務を課することができるという確信をいっそうしっかり持つことになった」とする一方、米韓の「持続的で意図的であり、無責任な情勢激化行動はやむを得ずわれわれのさらなる反応を誘発させる」と警告した。


また、「敵が軍事的威嚇を加える中でも相変わらず対話と交渉を云々し続けているが、われわれには敵と対話する内容もなく、またそのような必要性も感じない」としながら「国家の尊厳と自主権、生存権死守の重大な義務を自覚して最強の核対応態勢を維持し、いっそう全面的に強化していくとの期待と確信」を表明したという。


デイリーNKジャパン

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