ラグビーW杯代表・具智元が韓国の「反日」を変える

10月10日(木)8時30分 JBpress

 決戦の時が近付いている。ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会が連日大きな盛り上がりを見せている中、勝ち点14でA組首位の日本代表は史上初の決勝トーナメント進出をかけてスコットランドと13日の最終戦(横浜国際総合競技場)で激突する。その戦いを前にスコットランドは9日、静岡・エコパスタジアムで行われたロシア戦で4トライ以上に与えられるボーナスポイントを獲得して圧勝。勝ち点を10とした。それでも日本はスコットランドとの直接対決に勝利、もしくは引き分ければ無条件で1位通過が決まる。

 仮に敗れても7点差以内での負けならば、日本が4トライ以上を奪うか、もしくはスコットランドを3トライ以内に抑えることで予選突破となる。いずれにせよ、たとえ黒星であっても接戦に持ち込むことが絶対条件だ。今大会での日本代表の最大目標はベスト8、すなわち決勝トーナメント進出である。台風19号の進路が気がかりだが、当日は横浜の大舞台に日本中から熱い視線が注がれることになるはずだ。


日の丸を背負う韓国人選手・具智元

 さて、その日本代表の面々に1人の韓国人選手が加わり、日の丸を背負いながら闘志あふれるプレーでチームの快進撃に大きく貢献している。背番号3、プロップの具智元(グ・ジウォン)だ。

 大金星を奪った世界ランキング2位のアイルランド戦、そして前試合のサモア戦と2戦連続で先発出場。右プロップとして最前列でスクラムを組み、他国代表の屈強な相手の重圧に負けず力強く押し込んでいく姿は実に頼もしい。身長184センチ、体重122キロの体格をいかんなく発揮し、日本代表に欠かせないキーパーソンの1人となっている。

 韓国・ソウル出身の25歳。父親の具東春(グ・ドンチュン)もラグビー選手で日本のホンダヒートでも活躍し「アジア最強プロップ」と呼ばれた名選手、元韓国代表だ。兄・具智充(グ・ジユン、現ホンダヒート)とともに小学校6年からニュージーランドのウェリントンへ留学し、その偉大な父の影響でラグビーを始めた。

 中学2年で来日し、大分県内の公立中学校に編入後、日本文理大付属高校のラグビー部で頭角を現した。全国大会には進めず「花園」には無縁だったが、高校日本代表の一員としてその名を轟かせ、拓殖大学に進学後も20歳以下日本代表メンバーに加わった。日本チームのサンウルブズにも選ばれ、スーパーラグビーに参戦。拓大卒業後にホンダヒート入りし、今から2年前の2017年11月に行われたトンガ戦で日本代表の初キャップを獲得している。


試合前にはチームメイトと「君が代」斉唱する具智元

 10年以上も日本で生活し、高校時代から日の丸のユニホームを身にまとっている韓国籍のプレーヤー。その具だけでなく日本代表には31人中15人の外国人選手がいる。

 他の競技や五輪とは違ってラグビーの各国代表は国籍だけにとらわれず「(a)当該国で出生している」「(b)両親、祖父母の1人が当該国で出生している」「(c)プレーする時点の直前の36カ月間継続して当該国を居住している。もしくは通算10年にわたり居住」のうち、いずれか1つの条件を満たせば資格を得られるからだ。

 ただ「他国での代表歴がないこと」を前提条件としていることから日本で代表メンバーに選ばれると、もちろん母国の代表へ入る資格を失う。帰化していないとはいえ、ラグビー日本代表に選ばれた外国籍の選手たちは大きな決意と覚悟を胸に刻み込んで日本チームのために戦っている。

 普段はラグビーにあまり興味がない人たちや、W杯で初めて試合を見たという一部の一般層からは外国人プレーヤーが日の丸を背負っていることに「違和感」や「おかしい」などと訴える声も時折耳にする。人それぞれの意見だから別に構わないだろうが、個人的には詭弁だと感じている。

 具が試合前、大きな声で君が代を歌うシーンを見ると「頑張ってほしい」と素直に思うのは日本代表を応援する人たちなら誰でも同じであり、自然の流れだ。日本代表のために身を削りながら必死に戦う彼ら外国籍の代表メンバーの姿はラグビー独特のもので常に感動を覚える。


「日本代表の活躍を持ち上げると政府からクレームが来るかも」

 一方ではお隣の韓国もW杯日本大会での具の活躍には戸惑いを見せつつも、主要メディアがその様子を報じている。韓国国内では文在寅政権の強硬な「反日政策」が今も変わらず推し進められているだけに、敵国扱いの日本で代表メンバー入りするなど文大統領ら政府幹部としては本来ならば〝御法度レベル〟に近いことかもしれない。

 とはいえ、さすがに世界的に注目の集まるラグビーW杯で自国の選手が活躍している以上、いくら日本代表になっていようとも完全にスルーするわけにはいかない。今回のW杯日本大会にも韓国メディア数社の取材班がそれなりの数で来日しているが、その面々は母国側からの「制約」と「圧力」に人知れず腐心させられながら具のニュースを発信しているという。そのうちの1人で以前から東京支局で働く韓国メディアの関係者が、このように嘆く。

「自分たちのような現場記者や取材関係者は具の活躍だけを極力クローズアップする形にして編集しながら報じています。チームの勝利に貢献したことにウェイトを置きすぎてしまうと、日本の快進撃を持ち上げてしまう流れになりますから。そうなれば、会社に文政権側の政府関係者から何らかの激しいクレームが来ても不思議ではありません。

 ただ確かに世論は『反日』で一辺倒ですが、具の活躍に関しては韓国国内でも強い関心を示す人たちが多いのも事実です。それを封じ込めなければいけないのも、不可解な話。日本代表に名を連ねる具の活躍はうまくいけば、日本と韓国が和解の道につながる架け橋になればいいと考えているのですが・・・。現状ではなかなか難しいことなのかもしれません」

 ラグビーW杯日本大会で日の丸を背負う日本代表・具の熱いプレーが韓国国民の胸を打つ——。そして文政権の「反日政策」に歯止めをかけるきっかけとなり、丁々発止になっている日韓の危険な関係性にも終止符を打つ日が来ることを願ってやまない。

筆者:臼北 信行

JBpress

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