中国のEVシフトで世界の自動車部品業界が一変する日

10月10日(水)6時0分 JBpress

中国では自動車販売市場の拡大に伴い、自動車部品市場も拡大の一途をたどっている。上海にて

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 世界最大の規模を誇る中国の自動車販売市場は、今なお毎年成長し続けています。拡大する自動車市場を追い風に、中国の自動車部品市場も高い成長率をキープして拡大を続けています。

 2017年における中国の自動車部品市場の売上高は、前年比8.2%増の3兆7392億元(約61兆6160億円)でした(下のグラフ)。また、輸出額は前年比1.2%減の637.8憶米ドル(約7兆1800億円)、輸出額は同1.9%増の370.5憶米ドルで267.3憶米ドルの黒字となりました。

(* 配信先のサイトでこの記事をお読みの方はこちらで本記事の図表をご覧いただけます。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54286)

 しかし企業単位で見ると、中国の自動車部品メーカーは独自技術に乏しいOEM企業が大半を占めます。とくに中核部品は外資系のグローバルサプライヤーによってほぼ独占されている状態です。

 その一方で、中国政府のテコ入れにより近年、実力を身につけ規模を拡大するメーカーも現れつつあります。また、自動車業界の「電気自動車(EV)シフト」により、自動車部品業界の構造が今後大きく変わる可能性もあります。

 今回は、日本ではあまり報じられない中国の自動車部品市場とその主要企業について、世界市場統計を交えながら現況を見ていきたいと思います。


2018年の日系トップはデンソー

 まず、世界全体の自動車部品市場から見ていきましょう。

 下の表は「Automotive News」がまとめた、2018年度(2017年7月〜2018年6月)における自動車部品メーカートップ100(売上高が基準)のうち、トップテンを抜粋したものです。

 見ての通り世界トップは前年に引き続きドイツのロバート・ボッシュです。そして、デンソーが日系としては最上位となる2位につけ、同じトヨタグループの一員であるアイシン精機も6位に入っています。

 国別で見ると、トップテンはドイツ系が3社、日系とフランス系が2社、カナダ系、韓国系、米国系が1社という構成になっています。順位には変動がありますが、今年も去年もこれらの顔ぶれには変化がありません。

 トップ100の中に、日系企業は合計26社がランクインしています。独立系としては矢崎総業が12位に入っています。パナソニックや日立製作所のグループ会社など、自動車部品製造が専業ではない会社もみられます(下の表)。

 中国系シンクタンクの前瞻産業研究院も、2017年通年(2017年1〜12月)における自動車部品メーカートップ100をまとめています。下のグラフは、ランクインした企業の国別売上高をまとめたものです。

 国別では日本(2206.7憶米ドル)がトップで、わずかな差でドイツ(2015.6憶米ドル)が後に続いています。その後は3位の米国が1198.8憶米ドル、4位の韓国が531憶米ドルと金額が急減しており、実質的に世界の自動車部品市場は日系とドイツ系の2強が大きく二分していることが見て取れます。


規模が小さい中国系メーカー

 では、中国系メーカーの実力はどの程度なのか。同ランキングでトップ100にランクインした中国系メーカーはわずか4社です。また合計売上高も190.1憶米ドルと日系のわずか8.6%に過ぎません。

 さらに、上位20社に入った延鋒汽車飾件係統有限公司を除く他3社はどれも70位以下です。市場規模に比して中国系メーカーの企業規模は小さいことを如実に示す結果となっています。

 こうした現状の原因については、中国国内でも様々に分析されています。第1に、研究開発が足りず技術力が低いこと、第2に、企業規模が小さく効率も低い中小企業ばかりであることがよく指摘されています。

 前瞻産業研究院の分析によると、中国市場に流通する中核自動車部品の生産割合は、外資企業が約9割に対し、中国企業はわずか約1割に留まっているとのことです。


エンジンの濰柴動力、内装部品の延鋒汽車

 以上のように、中国の自動車部品メーカーはその市場規模に比して実力や規模が伴っていないのが現状です。

 とはいえ、実力のある自動車部品メーカーが中国に皆無だというわけではありません。今後の動向が気になる企業もいくつか存在します。

 現在、中国の株式市場に上場している自動車部品メーカーは134社あります。これらの2018年上半期の累計売上高は前年同期比15.7%増の4252憶元、累計純利益は同18.5%の328億元でした。このうち5%に当たる8社が赤字で、増益企業は76社、減益企業は58社という構成になっています。

 この上場自動車部品メーカー134社のうち、売上高が最大だったのは、山東省を本拠地とするエンジン製品およびエンジン関連パーツメーカーの「濰柴動力股份有限公司」(濰柴動力)です。2018年上半期の売上高は同13.8%増の822.6億元、純利益は同65.8%増の43.9億元という好業績でした。中国の環境規制により、環境対応型の大型トラック市場が活況を呈したことが好調の要因と見られています。

 濰柴動力に次ぐ売上をあげたのは、中国最大の自動車メーカーである上海汽車集団の子会社「華域汽車系統股份有限公司」(華域汽車、 HASCO))です。同期の売上高は同19.3%増の816.3億元。純利益は35.3%増の47.7億元で、濰柴動力を上回っています。

 上場自動車部品メーカー134社の累計純利益に対し、濰柴動力と華域汽車の2社の合計純利益は約3割を占めています。これらの2社は、規模、実力ともに中国自動車部品メーカーの中で突出した存在と言うことができるでしょう。

 なお、華域汽車には「延鋒汽車飾件係統有限公司」(延鋒汽車)という完全子会社があり、この会社も中国の自動車部品市場で大きな存在感を放っています。同社は先ほど紹介したAutomotive Newsによる世界自動車部品メーカートップ100(2017年7月〜2018年6月)において、中国企業としては最高位の16位にランクしています。主な製品は内装部品で、米国及び欧州市場での売上高比率が約3割を占めるなど、高い国際競争力も兼ね備えています。

(注:濰柴動力、華域汽車ともに、上記の売上高は自動車部品関連以外の事業を含む会社全体の売上高です。そのため、自動車部品関連事業の売上高だけを比較するAutomotive Newsのランキングでは延鋒汽車の方が上位につけています。)


パナソニックを追い抜いたCATL

 上記2社のほか、名前を覚えておくべき中国の自動車部品メーカーとしては、車載電池メーカーの「寧徳時代新能源科技有限公司」(CATL)を挙げられるでしょう。

 同社の2018年上半期における売上高は48.7%増の93.6憶元。純利益は上場企業134社中6位となる同36.6%増の9.1憶元でした。

 中国のEV市場急拡大とともに、車載電池を取り扱う同社の業績は急成長を続けており、その躍進ぶりは内外から注目を集めています。特に2017年には車載電池出荷量でパナソニックから世界首位の座を奪い、業界を騒然とさせました。

 なお、CATLの香港親会社は日本のTDKから出資を受けるなど、日系企業とも密接な関係にあります。EV市場は今後、急激な拡大が見込まれるだけに、台風の目となる可能性のある企業と言えそうです。


「EVシフト」でどう変わるか

 CATLの例のように、今後、世界各国でEVシフトが進むことによって、車載電池をはじめとする新しい自動車部品の需要がさらに高まる可能性があります。逆に、内燃機関をはじめ、EVに搭載されない自動車部品の需要が減る可能性も大いにあり、自動車部品業界は現在大きな転換期にあると言っても過言ではありません。

 中国は国を挙げてEVシフトを鮮明に打ち出しており、今後、EV関連部品を作る国内メーカーを保護、強化してくる可能性は高いとみられます。こうした市場状況を踏まえてどう投資を進めるかという視点が、業界には求められてくるでしょう。

筆者:花園 祐

JBpress

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