国民からの批判が不快?トランプ政権がホワイトハウス周辺のデモ規制を提案

10月17日(水)19時0分 ニューズウィーク日本版

<反対されたり抗議されることに耐えられないトランプ政権が、ホワイトハウスなどワシントンでの抗議活動の規制を提案。キング牧師の「私には夢がある」演説など、アメリカの民主主義を作ってきた偉大な集会の場がなくなりかねない>

トランプ政権は、ワシントンの中心部を東西に広がるナショナルモールや近隣の公園、広場での抗議活動を、新たな規制で制限しようとしている。ホワイトハウスとその周辺の土地建物を管理する米国立公園局は、政府の官報でこの新規制案を公表した。

公園局によれば、新規制は所定の改訂にすぎない。だがこの案に反対する人々の多くは、この新規制を、自由で民主的なアメリカという国の独自性を示す記念碑が点在する場所で、国民の集会と言論の自由を抑制する試みとみている。

ホワイトハウス前の広場には、国民が国家の問題に関して声を上げ、大統領に訴えた歴史がある。新規制では、ホワイトハウスの周辺はほぼ封鎖され、立ち入りが許されるのは幅約1.5メートルの歩道だけになる。

1917年、婦人参政権を求める活動家たちはホワイトハウスの前でピケを張って権利を獲得したが、今度の新規制の下であれば、活動家たちは一般開放された狭苦しい空間にぎゅうぎゅう詰めで、とても入りきらなかっただろう。

ホワイトハウスの前に集結したウィメンズ・マーチ(女性たちの行進)の参加者たち(2017年1月) Jonathan Ernst-REUTERS


カナダからテキサス州を結ぶ長距離石油パイプライン、キーストーンXL石油パイプラインの設置に抗議する環境保護派の2014年のデモでは、デモ隊はプラスチック製のジップタイでホワイトハウスのフェンスに自分の体を括り付けた。数千人が逮捕されたが、こうしたやり方も不可能になる。

すでに立ち入り禁止状態

「ホワイトハウス前の歩道で逮捕されることは、活動家にとって強力な象徴としての価値があった」と、米自由人権協会(ACLU)ワシントンDC支部で法務を担当するアーサー・スピッツァーは、言う。

ホワイトハウス周辺の一部地域は、不審者が柵を飛び越えて敷地内への侵入を図った事件をきっかけに、すでに暫定的に歩行者立ち入り禁止となっている。こうした事件を防止するための新たな防護柵は設置されたが、新しい規制が実施されれば、一帯は正式に立ち入り禁止となるだろう。

トランプ政権のイスラム教国からの旅行禁止令や、不法移民の子供を親から引き離す方針に反発して、自然発生的な抗議活動も行われてきたが、新規制のもとではこうしたイベントでは演台や音響システムを使うことができなくなるだろう。装置の使用に、許可が必要になるからだ。

国立公園局のブレント・エベリット広報官はメールで取材に答え、新規制は最後の規制改訂以降に建設された新しいモニュメント(朝鮮戦争退役軍人記念館やベトナム退役軍人記念館、マーティン・ルーサー・キング・ジュニア記念館)のための規定だと説明。そしてホワイトハウスに関する規制の変更は、シークレットサービスの要請によることを認めた。



また、ワシントンの一部の公園で構造物の設置を許可制にするという変更点については、「最後の規制改訂後に起こった事件」、すなわちオキュパイ(「ウォール街を占拠せよ」)運動のデモで同市内のマックファーソン広場が「参加者と市全体の安全を脅かす」テント小屋であふれかえった事例を受けての要件だという。

ACLUは規制案に対して正式なコメントを発表し、新規制の多くが憲法に違反している可能性があると、抗議している。

ACLUは、「今回の規制改正案は、国民が政府に異議を唱える権利を守るために裁判に訴えなければならなかった時代を思い起こさせる」としたうえで、一部の新規制は以前、ACLUが勝ち取った有効な裁判所命令に抵触する可能性があると指摘した。

新規制に抗議の声を上げているのはACLUだけではない。10月15日に終了した60日間の意見公募期間中、規制に関する論争に加わった団体や個人は3万8000人を超えた。

市民グループは、ホワイトハウスに面した歩道での抗議活動の制限は「ステルス条項」だと指摘する。それは規制に関する26ページの文書の最後に埋もれているからだ。規制が必要な理由については、連邦官報で公表されていない。

デモの費用を参加者に請求

スピッツァーによると、この条項は、抗議活動に対するホワイトハウスの不快感を表しているようにみえる。

「これは個人的に疑っていることだが」と、彼は言う。「トランプ政権が発足するまで、国立公園局には、新規制を作ろうとする動きなどなかったことを、私は知っている」

政府はまた、大規模な抗議イベントに関して政府が負担した費用を参加者から取り立てることについて、意見を公募している。まだ正式な案ではないとはいえ、それは「憲法上の権利を行使するための手数料を国民に課すことになる」と、ACLUは指摘した。

デモのために政府が負担した費用を回収する仕組みがあったとしたらら、マーティン・ルーサー・キング牧師による1963年の名演説「私には夢がある」は、生まれなかっただろう、とACLUは主張する。

政府は規制を施行する前に、寄せられた意見をすべて読み、検討する法的義務がある。だが「新規制案がこのままの内容で正式に決定するようなことになったら」スピッツァーは言う。「それは抗議活動の自由を求める人々のために法廷で戦えというゴーサインになるだろう」

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>



ロビン・ウレビッチ(キャピタル&メイン)

ニューズウィーク日本版

「トランプ」をもっと詳しく

「トランプ」のニュース

トピックス

BIGLOBE
トップへ