「税金外の負担」に苦しむ金正恩の拷問部隊

2022年10月24日(月)6時2分 デイリーNKジャパン

北朝鮮の金正恩総書記は昨年1月の朝鮮労働党第8回大会の結語で、反社会主義的・非社会主義的傾向(風紀の乱れや違法行為)や権力乱用、不正・腐敗などと同様に、「税金外の負担」を強いる行為は犯罪に当たるとの認識を示した。


税金外の負担とは、権力機関が法的裏付けのない金品を住民から徴収することを指すが、あまりの負担の大きさに国民の不満も強い。ただ、「鶴の一声」の効果はなかったようで、その後も何かに付けて税金外の負担の徴収が各地で行われている。


それに苦しめられるのは、一般庶民だけではない。咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。


朝鮮労働党の会寧(フェリョン)市委員会、会寧市人民委員会(市役所)、安全部(警察署)、保衛部(秘密警察)は、国家主要建設対象支援事業など様々な名目で、市民に税金外の負担を強いている。その中で、最もプレッシャーを感じているのは、徴収する側の安全員と保衛員だ。


会寧市安全部は、先月9日の共和国創建日(建国記念日)の記念行事の参加者のための後方(支援)事業の名目で、安全員から1人あたり1万北朝鮮ウォン(約170円)を徴収した。


その後も庁舎の工事、三大革命赤旗獲得運動など様々な理由で、1人あたり3万北朝鮮ウォン(約510円)を徴収した。


平均的な月給の10倍に当たる金額だが、住民から細々とワイロを搾り取り、それなりの収入があった時代ならさほど大きな金額ではなかったかもしれない。しかし、今はコロナ不況の最中だ。商人の数は減り、以前ほどの「水揚げ」は期待できない。そんな中での相次ぐ税金外の負担に対し、安全員から不満の声が絶えないという。



窮状は保衛員とて同じだ。会寧市保衛部の政治部と宣伝部は、コピー用紙とノートの購入に必要だとして、税金外の負担を保衛員に強いているのだ。


例えば宣伝部は、オフィスの改装費。


壁にかけられている金日成主席、金正日総書記の肖像画を入れる額縁と表面のガラスを交換するとの名目で、保衛員1人あたり5000北朝鮮ウォン(約85円)、オフィスの改装費として2万北朝鮮ウォン(約340円)、朝鮮労働党創建日の今月10日に金正恩総書記への贈り物をするとして5万北朝鮮ウォンなど、様々な名目で現金を徴収している。


さらに、4月15日の太陽節(金日成氏の生誕記念日)など大きな政治行事に際しては、国境沿いの地域の人民班(町内会)や外貨稼ぎ事業所を担当する保衛員に、1人あたり平均5000元(約10万3000円)もの上納を強いている。


コロナ鎖国が解除され、以前のように密輸が再開されれば、見逃したり見張りをしたり、或いは直接関与したりして、それなりの収入が得られる。だが、今はそれもできず、今後もどうなるかわからない。


上層部もそんな事情を知らないわけがないが、タンス預金を吐き出させるために、過度な税金外の負担を課しているのだ。


かつての大飢饉「苦難の行軍」のころにも途絶えなかったという彼らに対する配給だが、今では欠配、遅配が相次ぎ、量も減らされている。かつては確実に食べていける「儲かる職業」だった保衛員と安全員も、今は日々の糧を得るので精一杯なのだ。

デイリーNKジャパン

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