慢性的な電力難の北朝鮮で繰り広げられる意味不明の「省エネ活動」

2021年10月29日(金)6時1分 デイリーNKジャパン

北朝鮮では、1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」の頃、全国的な電力供給システムが崩壊してしまった。それ以降、慢性的な電力難が続いているが、あまり意味がないと思われる省エネの訴えは続いている。


その代表例が、毎年5月と10月の電気節約月間だ。これは電力法55条に定められたもので、本来の目的は、電力消費が特に多い月に、生産現場に少しでも円滑に電力を送るためのものだろう。



期間に合わせて電気検閲(監査)なるものが行われる。咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋は、5月に続いて今月も電気検閲に関する指示が下され、電気節約事業が執行されているかの監査が行われていると伝えた。これには道、市、郡の機関のみならず、一般住民まで動員される。


各機関や企業所が決められた時間に電気の供給を受け、交代で生産(交差生産)ができているかを抜き打ち検査を行い、農場の脱穀場や一般家庭への送電状況も全面的に監査する。


今回の検閲だが、咸鏡北道と咸鏡南道(ハムギョンナムド)がお互いの地域を監査する、交差検閲の形で行われている。


重工業の発達した咸鏡南道は、他の道と比べて電気供給量が多く、民家への電気供給も相対的に円滑に行われている。これが他の道にとっては面白くないようで、咸鏡北道の幹部は露骨に「プライドが傷つく」と言っているとのことだ。


そのため、相手の地域をより厳しくチェックし、何とかして欠点を見つけ出して点数稼ぎを行うと同時に、自分の地域の欠点を小さく見せようとしているという。中央は、地方間でそのような心理が働くことを利用して、今回のような形の検閲にしたのだろう。


また、咸鏡北道は自分たちの地域の電力事情をよりよく評価させるために、まともに供給されていなかった電気が、今月10日からは1日2時間ほど供給されるようになった。これは、2回の検閲で改善が見られなかった道に対しては問題として取り上げるという中央の姿勢も影響している。住民は、これだったら交差検閲がずっと続けばいいと喜んでいる。


元々は電気の無駄遣いがないかを点検する期間のはずだが、電力難が長期間に渡って続く現状で、本来の意味が忘却されてしまっているようだ。

デイリーNKジャパン

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