起業家精神抜群のロシア人が日本に照準

11月29日(木)6時10分 JBpress

「Open Innovation Forum 2018」で開催された「Eastbound Japan」ピッチコンテスト。10社以上の日本企業が審査員として参加した。

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 今年もあと1か月余を残すのみとなった。9月の東方経済フォーラムにおけるウラジーミル・プーチン大統領の「前提条件なしで年末までに平和条約を」との発言以来、平和条約、領土問題を巡る環境変化は一気に加速度合いを増している。

 他方、経済分野を振り返ると、両国経済関係が順調に拡大している姿が見て取れる。例えば在ロシア日本大使館の関連サイトを見てみよう。

https://www.ru.emb-japan.go.jp/economy/ja/index.html


ロシアのタバコ市場で3割以上を占める日本企業

 8項目の協力プランを軸にロシアの生活環境、産業・経済構造改革のためのプログラムが目白押しである。

 そして8項目で真っ先に掲げられているのは「ロシア国民の健康寿命の伸長に役立つ協力」である。

 しかし、その一方で我が国の財務大臣が3分の1の株式を保有する事業会社がロシアのタバコ市場の30%以上を占めているのは何とも違和感がある。

 同社の収益の3分の1を同分野の協力案件に還元するくらいでないとプーチン大統領は納得しないのではないか。

 さて、筆者のような零細ファンドにとっては、他の企業がロシアで何をやっているかは知る由もなく報道記事で知る程度である。

 しかし、ほぼ毎月のように東京とモスクワを往復していると明らかに実感できるのは「今年に入ってモスクワ便のチケットが取りにくくなった」、つまり日露間の人の往来が増えていることである。

 もちろん、今夏のサッカーW杯の要因は差し引いての話である。また、モスクワ経由で来日する欧米、イスラエルの観光客の増加分も差し引かなくてはならない。

 ほんの数年前まではモスクワの空港に降り立つと、預り荷物のターンテーブルは閑散としていたものだが、最近は日本人、ロシア人のビジネス・観光客で結構な混み具合である。

 これも考えてみれば理解できないことではない。今年は日露両国政府の合意に基づく「ロシアにおける日本年」「日本におけるロシア年」ということで毎週のように文化、スポーツ、経済、政治など幅広い分野にわたってイベントが開催されている。

 どうりで人の往来が増えるわけである。ロシアにおける開催地はモスクワ、サンクトペテルブルグといった大都市にとどまらず、ロシアの地方都市、特に極東地域での開催に努力が払われているようだ。


イベントの格が一段と向上

 これも在ロシア日本大使館のサイトに詳しく解説されている。

https://www.ru.emb-japan.go.jp/japan2018/jp/index.html

 この「ロシアにおける日本年」だが、筆者が関係する分野では、5月末に「JAPAN-RUSSIA TECH MATCH 2018」という日本企業によるロシアのテックスタートアップに対するリバースピッチイベントを開催した。

 「ロシア版シリコンバレー」といわれるスコルコボ・イノベーションセンターで毎年開催される一大イベント、「スタートアップ・ビレッジ」の会場内に日本パビリオンを設置、2日間にわたって30社近くの日本企業がロシア企業向けにプレゼンテーションした。

 当初計画は主催者側が設置するステージで半日程度の開催を検討していたのだが、日本大使館から「ロシアにおける日本年」のイベントとしてサポートしてほしいとの申し出があり専用パビリオンでの開催となった。

 筆者は過去3年間、スタートアップ・ビレッジでジャパン・ラウンドテーブルを開催してきたが、今回は開会式では上月大使にご挨拶をいただくなど、一気にイベントの格式がアップした感がある。

 日本側の熱の入った姿勢を示すことは今後の日露ベンチャー交流にプラスとなることは間違いあるまい。

 また10月に同じくスコルコボで開催されたロシア政府主催のテクノロジー会議「オープン・イノベーション・フォーラム」では「Eastbound Japan」と題する、ロシアのテック企業による日本企業向けのピッチ・コンテストが開催された。

 コンテストを主催したのはロシア政府系ベンチャーファンドVEB InnovationとSkolkovo Fundである。筆者は在モスクワ日系企業の審査員10人の中にまぎれこんでスタートアップの審査を行った。

 このイベントは「ロシアにおける日本年」とは関係ないのだが、このコンテストで優勝したNeurochat社(脳波による文字入力を可能にするデバイス、ソフトウエア開発)は同じ時期に幕張で開催された「CEATEC JAPAN 2018」にも参加、来場者の注目を集めたと聞いている。


政府のサポートが終わったときが正念場

 同社は経産省・総務省が主導するIoT推進ラボ「Global Connection」ブースでの出展となったが、これも経済協力8項目の成果であることは想像に難くない。

 このように、日露両国政府によるビジネス交流のサポートは大いに有難く、我々ビジネスパーソンもこうした機会を積極的かつ有効に活用しなければならないと思う。

 だが、その一方で、ではこうした政府によるサポートがなくなったとき、日露ビジネスはどうなるのか不安がよぎるのである。

 ここ数年、各省庁は日露経済関係発展のために知恵の限りを尽くしてユニークな試みを行ってきた。

 それに応えて民間企業も、その多くがロシアに初めて進出する中堅・中小企業であるが、日本でのセミナーや講演会はもちろん、ロシアでの各種展示会、産業視察など、その参加企業数は着実に増加しているやに聞く。

 しかし、政府もこうしたサポートを未来永劫続けていくことはできない。やがてロシア視察は自分であるいはコンサルティング会社など使って有料でアレンジする、展示会は正規料金を払って自費で参加しブースを開設しなければならない時が来る。

 その時、どれだけの日本企業がロシアでのビジネスに取り組み続けるのか、筆者はその将来をあまり楽観視することはできない。

 ビジネスの世界では自明の理であるが、儲からないことは長続きしないのである。

 日本企業のロシア進出に一抹の不安を抱く一方で、ロシア企業の日本進出には面白い動きがみられる。より正確にはロシア企業というよりもロシア人起業家である。

 筆者は先日、東京のロシア人ビジネスパーソンのネットワーキングに参加する機会があった。

 このネットワーキング自体は10年以上昔から脈々続いているのだが、以前は在京の外資系金融機関やコンサルに勤務するロシア人が多かった記憶がある。


日本で大成功を収めたロシア人起業家

 最近興味深いのは日本のIT企業に数年勤務していたロシア人エンジニアが独立して日本で続々と起業しているのである。

 彼らの元の勤務先は日系/外資系、大企業/ベンチャー様々である。新会社の業務分野はセキュリティー、ビッグデータ、ブロックチェーンなど、各人の得意分野にフォーカスしている。

 実はロシア人による起業ブームは今回が初めてではない。同じような動きは1990年代にもあった。

 ソビエト連邦崩壊、その後の混乱期に日本にやって来たロシア人数学者やエンジニアが日本でソフトウエア開発会社を立ち上げ、今なお活躍している会社も多い。

 ロシア人起業家をさらに遡れば「スペースインベーダー」で一世を風靡したビデオゲーム会社タイトーを設立したミハイル・コーガン氏はロシア人であるし、戦前に神戸でチョコレート会社「モロゾフ」や「ゴンチャロフ」を設立したのもロシア革命直後に神戸に逃れてきたロシア人である。

 どうもロシア人というのは我々のイメージに反して起業家精神に富んだ国民のようである。

 ようやく芽生え始めた日露ビジネス拡大の機運を絶やさないためには、日本企業はこうしたロシア人の起業家精神をうまく取り込む仕組みが必要かもしれない。

筆者:大坪 祐介

JBpress

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