「飢える人」をよそ目に電動自転車を爆買いする北朝鮮の富裕層

2023年12月2日(土)0時33分 デイリーNKジャパン

2020年1月から約3年半にわたって事実上の鎖国状態にあった北朝鮮だが、今では国境の行き来が再開された。コロナ前の水準には至っていないようだが、貿易も行われている。


しばらく北朝鮮で見ることのできなかった中国製の製品も徐々に輸入されるようになった。そのひとつが電動自転車だ。


咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋は、市場に電動自転車が多く入荷するようになったと伝えている。価格は1台3500元(約7万3300円)で、コメに換算すると約800キロ分に相当する。


以前よりはかなり好転したとはいえ、依然として食糧や経済の状況は苦しく、日々の糧に事欠く人も少なくない。コメにすらありつけない人にとって電動自転車は絵に描いた餅だが、供給が需要に追いつかないほどよく売れているとのことだ。


電動自転車が人気を博しているのは、北朝鮮の公共交通が劣悪だからだ。首都・平壌など一部の大都市を除けば、バスや地下鉄、路面電車などは存在しない。「ポリチャ(稼ぐ車)」と呼ばれる個人経営の乗り合いタクシーに乗るしかないが、運賃は決して安くなく、乗り込んでもいつ出発するかわからない。


その点、電動自転車ならばいつでもどこでも自由に動ける。重い荷物を積んでいても、坂道もスイスイと登れる。ほとんどの人が市場での商売で得られる現金収入で生計を立てている北朝鮮で、電動自転車は非常に便利な存在だ。


電力事情も極めて劣悪だが、特に問題はないという。貴重な電気は工場や軍部隊に優先的に供給されるが、配電担当者にワイロを掴ませさえすれば、使わせてもらえるようになる。


「カネさえあればできないことのない世の中だから、貧乏人は日々の食糧問題で苦労するが、金持ちは良い暮らしをしている」(情報筋)、



電動自転車の持ち主を悩ませているのは、電気ではなく頻発する盗難だ。ちょっと目を話した隙に、あっという間に盗まれてしまう。盗まれたものはすぐに分解され、本体は色を塗り直して売り、バッテリーやタイヤは別に売る。そのため、一度盗まれると取り返しようがない。普通の自転車も標的になっている。


金持ちは防犯のために生け垣を高くして番犬を飼うが、むしろ目立ってしまい、泥棒に狙われることになる。

デイリーNKジャパン

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