敵よりロシア軍を「火の海」にする北朝鮮のトンデモ兵器
2024年12月4日(水)5時2分 デイリーNKジャパン
ウクライナ侵略の片棒をかついでいる北朝鮮はロシアに対し、自国で最大級の自走砲システムを供給していると見られている。
シベリア中部の都市クラスノヤルスクで撮影され、SNSで拡散された写真には、平台型貨車に載せられた北朝鮮製170mm自走砲「M1989」2両が収められている。ちなみに、一部報道で同自走砲の名称が「コクサン(谷山)」と伝えられているのは誤りで、正しくは「チュチェ(主体)」という。コクサンとは、これより旧式の「M1978」の名前だ。
北朝鮮は、170mm自走砲と240mm多連装ロケットを、合わせて70門以上、ロシアに送ったもようだ。
M1978もM1989も、有事に軍事境界線の北側から、韓国の首都・ソウルを直接攻撃する目的で開発された。射程は自走砲としては長大な54キロに達する。イラン・イラク戦争では双方がM1979を導入し、敵側の油田に対する攻撃に使ったという。が、命中率が悪すぎて油田には1発も砲弾が落ちなかったと言われる。
1990年代、北朝鮮は「ソウルを火の海」にすると公言して威嚇したが、そのための主力兵器がこれらの自走砲だった。
しかし、韓国軍は早くから、これらの兵器がとうてい使い物にならないと見抜いていたようだ。
これら自走砲の弱点は、命中率以外にも山ほどある。まず、砲撃準備を整えるまでの時間と、砲撃を終えて移動を始めるまでの時間が30分とやたらと長い。また、発射間隔も5分に1発とこれまた長い。巨大な砲と重い砲弾を、人力で扱わなくてはならないからだ。
その割に、威力は弱い。砲弾を遠くへ飛ばすために炸薬の量を絞っているからで、ずっと口径の小さい米軍の105mm砲弾と同等レベルだという。
こんなことでは、1発目を撃ってすぐ敵に探知され、ろくに攻撃もできないまま反撃により破壊されてしまう。ロシアやウクライナの戦場では、ドローンの格好の餌食だろう。
そして、北朝鮮製自走砲で最も不安な点は耐久性だ。すでにロシア軍では北朝鮮製兵器の暴発により多数の死傷者が出ているとされる。これほど大きな砲が暴発したら、1度にいったい何人の死傷者が出るのだろうか。
それにしても、ロシア軍がこれらの欠点を知らないはずはない。兵器が不足しているのはわかるが、少なくないコストをかけて、わざわざ北朝鮮から運んでくる意図が理解できない。あるいはこの厄介な兵器を有効に使うための、何か妙案でも持っているのだろうか。