中国の蛮行を見よ!この世は弱者が泣き寝入りなのか

12月4日(水)6時0分 JBpress

北京の国務院情報局での記者会見の前に、ウイグル族の文化舞踊を見る新疆ウイグル自治区の議長たち(2019年7月30日、写真:AP/アフロ)

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 今年の春頃だったか、テレビで「新疆ウイグル自治区の現在」みたいなドキュメンタリー番組を見た。その番組で、ウイグル人約100万人が強制収容所にぶち込まれて、ウイグル語の使用も許されず、中国の思想教育を強制されている映像が流れた。

 10年ほど前、ウイグル独立派による中国へのテロが散発的に起きていた。その番組を見て、その後中国はいつの間にか世界に隠れてここまでウイグル族を徹底的に弾圧したのか、と思ったが、そのままわたしはこの問題を忘れた。それが先週、不意に思い出させられたのだ。BBC Newsの「中国政府、ウイグル人を収容所で『洗脳』 公文書が流出」というネット記事である(2019/11/25)。ついに出たか、と思った。今回流出した中国政府の公文書は、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が入手し、「中国電報(The China Cables)」と呼ばれている。

 それによると「新疆ウイグル自治区にある、高度の警備体制が敷かれた収容施設で、中国政府がイスラム教徒のウイグル人を何十万人も組織的に洗脳していること」が、初めて明らかになった。文書には、新疆ウイグル自治区の共産党副書記で治安当局の最高責任者が、2017年に、収容施設の責任者らに宛てた連絡文書も含まれている。そこには「収容施設を高度に警備された刑務所として運営するよう」指示があり、さらに次のようなことが厳命されているという。「絶対に脱走を許すな」「違反行動には厳しい規律と懲罰で対応せよ」「中国標準語への矯正学習を最優先せよ」など。


中国の民族弾圧には前科がある

 当然、中国はこれを認めない。中国の駐英大使は、「文書は偽物」と断言し、「中国の施策は新疆ウイグル自治区の人々を守るためであり、同自治区では過去3年間、テロ攻撃は1件も起きていない」と弁明した。そりゃそうだろ。徹底的に弾圧してるんだから。さらにこんな噴飯ものの弁明。「当該地域は現在、社会的に安定し、民族集団もまとまっている。人々は満足と安全を以前よりずっと強く感じ、生活を楽しんでいる」

 よくいうよ。中国には「死不認錯」(スープレンツォ)という言葉があり、これは、死んでも非を認めないという意味である。逆にいうと、自分たちが間違っていようがなにしようが、絶対正しいといい張る、ということだ。イギリス政府は中国にウイグル自治区への国連監視団を受け入れるよう要求した。米国もウイグル自治区の中国当局者への査証発給制限をし、人権侵害で中国企業28社をブラックリストに登録した。が、こんなことに動じる中国ではない。国連監視団も絶対に受け入れることはない。

 中国は民族弾圧の前科がある。チベットである。1949年「帝国主義者からチベットを解放する」と称して侵略。51年、民族自治の保証、文化教育の尊重、宗教風俗の尊重、ラマ寺廟の保護、「人民の針一本、糸一本とらない」などを保証する「17カ条協定」を強制的に押し付け、全土を制圧した。しかしその後、中国はこの協定をことごとく破った。59年、ダライ・ラマ法王は亡命。チベット仏教の象徴であるポタラ宮も貴重な芸術品、宝石、仏像、経典が略奪されつくされたという。毛沢東の時代である。

 ウイグル弾圧をやったのも、かつては人類の理想に燃えて結成された中国共産党である。2019年3月、中国は恥知らずにも「チベット民主改革60年」との白書を発表し、アメリカの人権非難を否定した。しかし世界はこれらの現状をどうすることもできない。だれも止めさせることはできない。知る権利、報道の自由という。それが行使されても世界は変わらない。チベットもウイグルもそのままである。世界を支配する力が依然として経済力と軍事力だからである。われわれはこんなろくでもない世界に生きている。


いろんなものが「うやむや」になり忘れ去られる

 このような蛮行はむろん中国だけではない。2017年、金正男暗殺。これがうやむや。2018年、サウジアラビアの記者カショギ氏がイスタンブールのサウジアラビア総領事館で強殺。サウジのムハンマド皇太子が首謀者とされるが、これもうやむや。北朝鮮は毎回楽しそうにミサイルを打ち上げている。

 国内もおなじである。森友学園・加計学園問題は「モリ・カケ」に矮小化されてうやむや。元TBS記者のレイプ疑惑もうやむや。「桜を見る会」疑惑もおそらくうやむやになるのだろう。

 世界はなにも解決できない。不正を止めることもできない。問題は解決されるのではない。うやむやのうちに忘れ去られるだけである。いまや21世紀。文明は進歩した。しかし、人類は退化したといいたくなる。

 加害者は猛々しく、被害者や弱者は泣き寝入りするか諦めるしかない。証拠がなければしらを切れ、が標準となった。証拠があっても偽物だ、捏造だと突っぱねよ。証拠がなければやっていない、知らぬ、合意だった、記憶にない、といい逃れろ。DVは被害者の方が、写真を撮る、日記をつける、音声を録るなど証拠を自分で確保しなければならない。でなければ裁判に勝てない。


さすがに香港は「こっそり」とはいかない

 チベットとウイグルは世界の辺境だからわからないだろうと、中国はやりたい放題をやったが(それでも英米は人権批判をした。日本は一言もいえない)、世界の表舞台の香港となると、さすがにそうはいかない。中国も学生たちのデモ行動を苦々しく思うだけで、容易に手が出せない。そんななか、香港の区議会選挙で民主派が親中派に圧勝した。これを受けてアメリカは11月30日、香港の人権・自治を支援する「香港人権・民主主義法」を上下院の圧倒的支持により成立させた。

 中国は即座に「内政干渉」だと抗議、「米国は独断専行してはならないと忠告する。さもなければ中国は必ず断固反撃を加え、それで生じる一切の結果は米国が負わなければならない」と応じた。人類の普遍原理である「人権」を踏みにじる政策を国内でやっておきながら、それを非難されると馬鹿の一つ覚えで「内政干渉」だといきり立つのは、思想的・精神的後進性の現れだが、そんなことをかれらはまったく気にしない。

 こんなことはわれわれにはまったく関係のないことである。わたしは多少の関心があるが、そんな関心を持つことに意味はない。かたや日本では、ハロウィンの空騒ぎや、わけのわからない「おっさんずラブ」の人気や、「アナと雪の女王2」ブームで沸いている。

 世界はなにが起きても気ままであるほかはない。わたしはそんな状況を好きではないが、そんなわたしの個人的な気分にも意味はない。報道はなされた。だがその報道にどんな意味があるのか、わたしはわからなくなっている。

 ローマ教皇が上智大学で講演した。学生に向かって「どんなに複雑な状況であっても自分たちの行動が公正かつ人間的であり、正直で責任を持つことを心がけ弱者を擁護するような人になってください。ことばと行動が偽りや欺瞞であることが少なくない今の時代において特に必要とされる誠実な人になってください」と語った。

 困難な道である。しかし個人が生きる道は、どんな時代にあってもこれしかないのだろう。21世紀の現在、自由を求めて闘う香港の学生や市民たちを尊敬せずにはいられない。

筆者:勢古 浩爾

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