“医療の前に安全な水を”...銃弾に倒れた中村哲医師が描いたアフガン復興への道筋

12月5日(木)12時0分 AbemaTIMES

 アフガニスタン東部で4日、日本人医師の中村哲さんを乗せた車が何者かに銃撃され、中村さんのほか、運転手や警備員ら5人が死亡した。移動にはガードが付き、毎回経路を変えるなどのセキュリティ対策が取られていたにも関わらず起きてしまった襲撃。

 一報を受け、安倍総理は「医師として医療分野において、また灌漑事業等において、アフガンで大変な貢献をしてこられた。なかなか危険で厳しい地域にあって、本当に、本当に命がけで様々な業績を上げられ、アフガンの人々からも大変な感謝を受けていたというふうに我々も知っているが、しかし今回このような形でお亡くなりになられたことはショックだし、心からご冥福をお祈りしたいと思う」とコメントした。

 中村さんは1946年に福岡県に生まれ、九州大学医学部を卒業、国内の病院に勤務。1984年からはパキスタン・ペシャワールのハンセン病棟に赴任。1989年からはアフガニスタンへ活動を拡大、山岳部医療過疎地で診療活動を行った。そして2000年、飲料水・灌漑用井戸事業を開始。飲料用井戸約1600本、灌漑用井戸13本を掘削し、地下水路38カ所を再生するなど、内戦や飢餓などの不安定な社会環境の中、長年にわたってアフガニスタンの復興に携わってきた。

 こうした功績から、10月にはアフガニスタン政府から名誉市民権も授与されており、反政府勢力のタリバンも「この組織は我が国の建設に携わっており、タリバンと良好な関係を築いている。我々の戦闘員の標的ではない」との声明を出している。

 中村さんが代表を務めていた、医療支援や地域復興を支援する「ペシャワール会」の広報担当・福元満治氏は同日夕方、会見を開き「農業用水路を建設して安定的に水を供給する。それがアフガン復興の鍵であるとおっしゃっていた。やはり普通のお医者さんではなくて、診療所だけではなく井戸を掘り、用水路の建設については自分でアマチュアながら設計図を描いて、そして現場で自分で重機を運転するというお医者さんはなかなかいないのではないか」と悔しさを滲ませた。

 その上で同会は「農業用水路工事によって失業対策:のべ200万人以上の雇用が発生」「農業用水路ができることで農地が復活:傭兵だった人が武器を捨て、農民に戻ってくる」と強調、「この事業が中止になることはないと考えている。あくまでも事業を継続すると。それが中村医師の意思でもあるだろうと思う」と訴えた。

 国内外の水事情に詳しいグローバルウォータ・ジャパン代表の吉村和就氏は「ニューヨーク国連本部にいた時に彼の話を聞いて感銘を受けた。医療から水に入り、さらに農業に入って、サツマイモ、トウモロコシの作り方を女性たちに教えた。国連のSDGs17項目があるが、中村さんが手がけた貧困、飢餓、健康、ジェンダー、水問題は、これらを全て含んでいる。こんな日本人はいない。本当にすばらしい方だと思う」と話す。

 アフガニスタンは40年にわたる紛争で、電気・水・通信などのインフラが破壊され、首都カブールでは市民の80%が安全な飲料水を得られておらず、地下水の60%が汚染されているという。(国連調査)。上水道が普及していないことから、住民は井戸水や川の水を汲んでおり、定期的に起きる干ばつから、去年4月には100万人が食料・水不足に陥った(ユニセフより)。
 
 「アフガニスタンは国民の8割が農民だ。100年前には水資源も森林もある、良い国だった。しかし紛争によって用水路などのインフラが破壊されてしまった。私も発展途上国で水問題を指導していたが、重機もない、電気もない、お金もないという所なので、いかにして地元の人に協力していただけるかだ。治水事業は50年、100年かけてやらないといけないものなので、中村さんは若い人のための職業訓練校まで作ったという。この辺りの考え方がすごいと思う。中村さんの灌漑用水路の基本は、福岡県にある、筑後川の洪水を防いで農地を作るために江戸時代に造られた山田堰だ。その技術をもってパキスタンとアフガンに行き、150haの農地を作った」。

 その上で吉村氏は「現在タリバンが活動しているのが、干ばつが酷く、用水路を必要としている地域だ。国際社会がしっかりと支援しなければならないし、中村さんが先鞭をつけた、持続可能な日本とアフガンとの関係に対して、我々も後方支援していかないといけない」と指摘した。
 

 ジャーナリストの堀潤氏は「国際ニュースは国内にいると手薄になるが、それではいけないということを知っておくべきだ。かつて武装勢力にいて、今は平和構築をしているアフガニスタンの方が来日時にこんなことを言っていた。“アフガニスタンに関する報道がすっかり下火になってしまった。報道が空白になるということは、様々な武装勢力の活動に対して世界の目が届かなくなるということだ。報道があることによって、そうした活動を抑止することができる。ISが様々な所で活動を強めている。心配だ”と。今回の悲しいニュースによって、私たちは改めてアフガニスタンの人道支援に目を向けることになってしまったが、日本の資金や人材が入り、人道支援が行われてきたということを恒常的に心がけておかないといけない」と警鐘を鳴らす。

 そして「ローカルなNGOに対し、日本のNGOをバックアップしているケースもあるが、紛争地域への渡航には制限がかけられ、政府の支援を得ることも難しい。だからこそ、民間からの支援、そして私たちの寄付が必要だ。行かなくてもできることはたくさんあるので、ぜひ情報を調べてみてほしい」と呼びかけた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)
 

▶映像:中村哲医師死亡 地元・福岡からも悲痛の声が

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